お爺さん
うちにはお爺さんが住んでいた。
但し、彼は僕の祖父ではなかった。父方の祖父も母方の祖父も遠く離れた場所で暮らしていた。
それは家族の誰とも血の繋がりがない赤の他人のお爺さんだった。
テレビが大好きで、一日中、居間のテレビの前に座っている人だった。
食事も毎回一緒にしたし家族が出掛ける時はいつも彼に一言断ってから出掛けた。
だから子供の頃は別におかしいとは思わなかった。
父の父でもない、母の父でもない、第三のお爺さん。
それが一緒に住んでいることは普通のことだと思っていた。
しかしある日うちに初めて友達が遊びに来た時、奇妙なことに気がついた。
自分以外の人間、つまり友達には彼の姿が見えていなかったのである。
僕はその夜そのことを父と母に聞いてみた。
それからである。両親の喧嘩が絶えなくなったのは。
僕はいつも寝た振りをして聞き耳を立てていた。
「だってアレはそういうものだ」
「あなたのせいよ! あの時、あなたが……」
そんな内容だった。
喧嘩は日に日に激しさを増していった。何かが壊れるような大きな物音がしたこともあった。
このままでは父と母が別れてしまうのではないか。
子供ながらに僕はそんな恐怖を覚えた。
だから、喰った。
(了)
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