ランナー




 私は走っている。


 ずっと。


 ずっと、ってどのくらい? そう聞かれるかもしれないが、実のところ、自分でもよくわからない。


 気が付いた時には、物心がついた頃には、もう当たり前のように走っていたのだ。


 休むことはない。食べることもない。寝ることもない。トイレに行く必要を感じたこともない。


 私はただずっと走り続けている。


 そこは舗装された道路だ。どこまでも続いている。


 きっと私の向かっている方がゴールなのだろう。そう信じている。


 道路以外の風景といえば、そこは何もない赤土がどこまでも三百六十度広がっているだけだ。


 ひとり? いや、違う。私には仲間というかライバルというか、一緒に走っている者たちがいる。


 私は彼らの名前を知らない。そもそも会話を交わしたことがない。聞こえてくるのは激しい息遣いだけだ。仲良く並んで走っているわけではない。抜きつ抜かれつ、私が彼らを追い越すこともあるし、私が彼らに抜かれてしまうこともある。


 中には転倒し、そのまま動けなくなる者もいる。それでも私と他の者たちは助けるわけでもなく、静かにその横を通り過ぎていく。


 この戦いがいつ終わるのか私は知らない。


 きっと彼らも知らないのだろう。そんな気がする。


 ゴールはどこなのか、自分たちはなぜ走り続けているのか、そこに何が待っているのか、私は知らない。


 たぶん誰も知らないのだろう。


 ひょっとしたら私もいつか疲れ果て、道の途中で倒れてしまうのかもしれない。


 その日が来るまで私は自分のペースを守りながら止まること無く走り続けていくのだろう。





                 (了)






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