後ろ




 いつからだろう? 私はひどく自分の後ろを気にするようになった。


 誰かに見られているような視線を感じて、つい確認してしまうのだ。


 外出中はもちろん、自宅でくつろいでいる最中、しかも壁を背にしている時でさえ何かを感じて、つい振り返ってしまうことがあった。


 もちろんそこには何も居るわけがなく私は毎回首を傾げた。


 精神的な問題なのかもしれない。そう思って医者にも行ってみた。


 すると医師は私に対して小難しい病名をつけて色々とアドバイスをくれた。


 しかし私はどうしてもそれが内なる要因のものとは思えなかった。


 居るのだ、私の後ろに。常に見えない何者かが。


 そしてつい今し方も私は後ろからの視線を感じた。諦め半分で振り返ってみた。


 いつものように何も居なかった。


 でも私は気付いてしまったのだ。自分の右頬に当たる、かすかな吐息に。


 慌てて前を見てみたが、そこには何も居なかった。


 そうか、そういうことなのか。


 おまえはいつもどんな時も必ず私の後ろにいるのか。


 私は永遠に姿を見ることの出来ない者と共に生きる定めのようだ。





                (了)





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