想いの外は思い切り外。

@xxxxpom

第1話 目覚める為のしきたり

 想像力過多そうぞうりょくかたな少女、夜裟菜よさなマイムは日々考えている。

 丸々高校1年生、マイムは毎朝起きるのに大変な思いをしていた。


「もう行くんだ。」

 ぷくっとした頬の可愛いうさぎが、耳を後に寝かせて不満顔で見上げている。

「ぼくのことなんか忘れるんだ。」

 小学生の頃からマイムはここが寝ている時に入る異世界だと気がついていた。

 でもいつも寝ているのか起きているのかわからないくらいリアルで、起きると忘れるのも、毎度のことだった。

 今日はうさぎのラービが彼女の傍を離れない。

 彼女の姿は今日はふわふわの真っ白いタオル地でできたワンピースだった。

 この恰好かっこうだからラービがくっついてくるんだ・・・

「ラービ、私ママじゃないから。」

「そんなの知ってる!まいむはここにいなきゃだめだ!」


 くう~~~~~~~!!

「泣くな、ラービ!!

 男の子はこんなことぐらいで泣いちゃダメなんだよ!」

 抱き上げて、その可愛いおでこにチュッ!



 ジリリリリリリリリリリリーーーーーーーー!!


「おはよ~~~~~~~!!

 起きた??ほら、すぐに着替えて!!

 お母さんも仕事にでかけるんだから!」


 ぼけ~~~~~~・・・


「はいはい、制服、ほら!」


 ぬぎぬぎ・・・


「コーヒー入ってるよ!」


 ずーーーーー・・・


「いってきやーす・・・」

「いってらっしゃーい!

 いってきまーす!」


 丸々高校は、電車に揺られて30分弱、丸々駅から徒歩12分。

 マイムは毎日通勤電車にぎゅーぎゅー詰めになって考えていた。


 これだけぎゅーぎゅーされたら、きっと私のおにくは柔らかくなっているに違いない。

 周りの男性は自分の手が痴漢ちかんと間違われないようにかばんをしっかり握っている。

 女子高生に騒がれたら人生が終わると思っているのだな。

 うんうん、良い傾向けいこうだぞ。


 それにしても夢、見ないなあ~~~!

 どうして最近、夢みないんだろうか?

 みんな、朝、夢の話するのに。

 私の頭は疲れてるのかな?


 駅がどばーーーーっと人々を吐き出すと、皆が一斉にバス乗り場に向かった。

 マイムはとことことロータリーを回ってゆく。


 あーあ、今日はテストじゃなかったっけ。

 だめだ考えたら負けだ。


「おーい、マイム!

 のんびり歩いてっと遅刻するぞ!!」

「ほっといてよ、今脱走計画作成ちゅうなんだから。」


 後から華麗かれいに追い抜いていくのは、陸上部エースのゆたか君だった。

 いいよねー足が速くて。


「そうも言ってられないかー!

 ゆたか君~~~!勝負だ~~~!」

「あほか~~~~~!!」


 そう、あほだよーだ!

 ゆたかはよゆーで校門をくぐった。

 教室に滑り込むと、ゆたかはもう席で友人と話をしていた。

 制服のえりに汗が流れた。


 テスト用紙が前から渡されてくる。

 眠気はもう無いけど、まるで時間の流れが速くなったみたい。


 あれ?

 ここ昨日書いたところだ・・・

 あ、ここもだ。


 ラッキー!!

 私こんなに覚えてたんだ!!


 ・・・凄い、私史上初めてじゃない??

 全部わかるなんて!!


 次々と回収されるテスト用紙。


 キンコンカンコン~~~~~~


「お疲れ~~~!

 それじゃあ今日はここまで。

 さようなら~~~!」

 テスト用紙をトントンとまとめて、担任の松江先生が言った。

「明日は私の英語があるからね~~!頑張ってね!」


 和良島わらじまゆたかはテスト中部活は休みだったが、リュック型の鞄をしょって、登下校も走っていた。

 下駄箱でまたゆたかにばったり遇った。

「マイム、おまえも走ればいいのに。」

「は?私なんか遅いからダメだよ。」

「いやあ、中学の時けっこういい走りしてただろ。

 考えてみてよ。

 じゃな!」


 駅まで走るのか~~!とその姿を目で追って、私はふいにゆたかを追いかけて走る女子を見つけた。

 へえ~~~?

 もてるんだ~~!

 中学が一緒だったけど、ゆたかがもてるなんて、考えもしなかった。


 あの子、隣のクラスだったっけ・・・

 中学の頃のゆたか君は、今より背も低くて声も高くて・・・

 高校が一緒になってなんだか、急に意識しちゃったりして。

 どうしてかな。


 家に帰ると、まだ誰も帰って着ていなかった。

 バッグと上着をばさっとベッドの上に投げると、さっき走って行った女子の後姿が目に浮かんだ。

 あの子もきっと陸上部の子なんだ。


 英語のノート見ないと。

 ああ、眠い~~~~~~~!




・・・す~~~~~・・・


「おわっ??


 あれあれ??


今日はこの辞書が大事な鍵だったんだ!!」


もう夢の中かあ、とマイムは自分の瞬間移動しゅんかんいどう並みの速さに呆れていた。


「辞書、それは究極きゅうきょくの呪いの本。」

マイムの持っている英和辞書えいわじしょの、10倍は重そうな本を小さな手に抱えて立っているのは、美人な人形の魔女カイワレだった。

「辞書を人間が持つようになるとわ、おどろきねっ!」

隣に座っているのは、丸い目のひつじのお嬢様魔女エシャレットだった。

「マイム、おもったより早かったじゃないの。

今日は魔術歴史1000ページ目よっ!」


マイムは魔女マイムとして、この世界に君臨くんりんしていた。

魔女カイワレはすぐにその思考を否定した。

「いいえ、君臨してはいない。

我々3魔女は想像上の生き物だけを支配する力を持つ。」

「じゅうぶんっ!!それでじゅうぶんだからっ!!」

魔女エシャレットは鼻息が荒い。

「美女人形に生命を与えしマイムに祝福を。」

「今日こそマイムに永遠の生命を。」



マイムはすぐに魔術書1000ページ目を開いた。


「1000ページ達成 おめでとう



・・・な~~~~~~~んて




言うと思った??」


マイムとカイワレ、エシャレットは身構えると、魔法を唱えた。

「 結界魔術! 」 

3人の魔女の立つ場所、魔法円の中に星が浮かび、その光が球状になった。


同時に魔術書から声が響いた。

「 魔術書1000番目の魔


マグマドラグーン 召喚!!」


魔術書の中にいる魔物達の声が、大きくなった。

「マグマドラグーンが召喚される!」

「とうとうこの日が来たか!」

「さすがの魔女マイムもマグマドラグーンには歯がたたないだろう!俺と違って!」


マイムはなぜかその声にむっとした。

「50ページ目の奴に言われたくない。」

カイワレがそれを否定した。

「今それ関係あります?」

マグマドラグーンは魔術書から飛び出してきた。




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