第13話;転生 (最終)

白い部屋

倭子は足を投げ出し、壁にもたれかかるように座っている。


「わこちゃん?」


声を掛けたのは世界を救ってくれと嘆願してきた、神だった。


「・・・ワン!」

「好きに呼んでって言ったけど何故ワン?」

「可愛くてわんこみたいだから」

「・・・・」


「ワン、私ね何回も転生したけど、唯一心残りで、やってないことがあるの・・・」

「?やってないこと?」

「うん、私って自分で子供を産んで育てたことが無いのよ」

「あ・・・・そうだね、女の子のときは不幸だったし早死にしたもんね」


「もう一度転生してお母さんになって幸せな体験したいなぁ・・・」


「・・・・転生する?」


「え?神も転生出来るの?」

「倭子はまだ自分の世界を持っていないから大丈夫だよ、管理者の承認があれば」


「僕の世界でよければ、今世界の調整をしていて、もう直ぐ構築できるんだけど、いい思い出ないよね?”なな”の時の世界だし」


「なな・・・か」

「本当なら勇者として活躍して幸せになる予定だったのに、邪神の影響で運命が変わってしまった」

「・・・・もう一度ななの世界で幸せになりたい・・・」


「うん・・・今度はきっとなれるよ」









そして私が生まれたのは

辺境伯爵の長女、ヴァイオレット・ナナリー・キャヴェンディッシュ伯爵令嬢


代々、子は騎士として王に使える家系、伝説の勇者の子孫と言われている由緒正しい貴族だ。


5つ離れた兄のウィリアム・ベンティンクが居て、

2つ下の腹違いの妹のフランシス・エミリアと

3つ下の弟のデニス・バーナードがいて、


伯爵の父と兄の正妻の母、側室になる私の母と妹と弟の母の8人家族、母たちも含め、皆仲はいい、母たちがつるむと父の威厳は何時も吹き飛んでいた。


1歳の時、母が実家の公爵家から私を連れて帰るとき襲撃にあった、が、それは闇ギルドの逆恨みによる襲撃で、予測されていたので返り討ちにされた、

闇ギルドは私が生まれる前にもう討伐されており、残党によるものだった。


再構築した世界には前は無かった魔法が使えるようになっていた。

幼少期から騎士としての訓練を男女問わずしている家系のため、私も3歳から訓練を始めた。


魔法と剣技との組み合わせで、兄と対等に戦えるくらいになった15歳の春、王宮から招待状が来た。


「12歳から18歳の婚約者の居ない貴族令嬢全員に招待状が送られて来たようだ」

父が常に情報収集している密偵か らの密書を見ながら言った。


「・・・王弟陛下の花嫁さがし?」

「察しが良いなヴァイオレット、王の子息達は母親の身分が低いため王位継承権が無い、王の歳の離れた弟のレオン・クレハドール王弟殿下が王太子に決まったからな、19歳になられるが、浮いた話は多々あるのだが、縁談には至って無いので、王が業を煮やしたらしい」



レオン・クレハドール

調整前は壮年のイケ親父だったが、この世界では若い、

先王が在位中に若い公爵令嬢に一目ぼれして側室に迎え、王が65、側室19歳の時の子供である。

レオンが産まれると、王は王太子に王位をゆずり離宮に隠居、若い側室といちゃいっちゃしてるらしい、隠居してからも、女の子と男の子が生まれている。

隠居後出来た子なので王位継承権は低い、早々に爵位を与えて家臣にすることが決まっていた。

事実上レオンしか跡継ぎが居ない




「レオン・クレハドール様か・・・会うの辛いな・・・あの人じゃないのに同じ名前、脳筋の私が選ばれることはないだろう、観光のつもりで王都へ行こうっと」

複雑な面持ちのヴァイオレットだった。






王都はとても繁栄していた

(前の時は王があまり良い政治をしてなかったから、暗かったよな)


「現王は国民を大事にし、他国とも有効を結び、交易も盛んで国民に不満の声は殆ど無いよね」

「とはいえ、貴族の腹の探りあいはあるからな、気をつけろよ」


エスコート役の兄と、王宮に向かう馬車の中、外を眺めながら話していた。


「ところで、お妃に選ばれたらどうする?一応断ってもいいとは言われて居るが、そう言うわけにも行かないぞ」

「こんな真っ黒で筋肉質の、可愛くない女なんて選ばれないわよ」

「いや、お前は十分綺麗で可憐だぞ、筋肉質なんて、ドレスで殆ど分らないし、それくらいの日焼けその辺にごろごろしてるじゃないか」


「いや、それ絶対身内の欲目だわよ」

「・・・・分ってないな、おじさんに達に囲まれて育ったせいか?・・・」


そう言っているうちに王宮に到着した。


馬車から兄のエスコートで降りると、

警備の兵士が何か落ちつかないしぐさをしていた。


「私、何か変?」

「美しい可憐な美少女みれば、誰だってそうなるが・・・警備としては失格だな・・・」

「また、にいさまってば・・・・」


そうなのだ、自分では普通の顔立ちだと思っていたが、普通に健康に育った私は美人らしい、”なな”は栄養状態も悪く、摂関で骨も曲がっていたので、引き取られてからはましになったが、綺麗で可憐ではなかった。元は一緒になっているはずなのだが、栄養と環境でこんなに違うんだと実感した。



王宮は煌びやかで、繁栄がうかがえる豪華な造りになっていた。

ヴァイオレットは

(金ぴか・・・好みじゃないな~目がチカチカするわね)


舞踏会に呼ばれた令嬢は12人、貴族令嬢は小さい時に婚約することが多いので、残っている方が異常なのである、問題ありの令嬢ばかりなのが伺えた


「お兄様、この方々が本当に王太子妃候補なの?」

「・・・そうだね、ヴァイオレットの聡明さが目立って、君しか務まらないと思ってしまうな」

「や・辞めてくださいお兄様・・・」


・おどおどして行動が可笑しい令嬢

・120キロはあると思われる令嬢、真っ先に軽食コーナーに駆け込んでむしゃぶりついている

・ゴテゴテニ着飾って厚化粧の令嬢・・・・「王妃になれば世界中の宝石は私の物」とささやいているのが聞こえた

・どう見ても、10代に見えない年齢詐称の令嬢

・どう見ても7歳くらいにしか見えない令嬢

あと、個性豊かな令嬢が会場に来ていた、


まともなのは、ヴァイオレットと隣国の第2王女の二人だけ


「隣国の王女は、候補じゃないよ、たまたま表敬訪問で来てらしてたから招待しただけらしいよ」

そうお兄様が言ってくる


王太子殿下と令嬢たちのダンスが始まった

12人全員と踊ることになっていた、ヴァイオレットは何故か最後の順番だった。


(くすっ・・・ちょっと嫌そうな顔されたわね、きつかっものあの令嬢の香水、すぐポーカーフェイスを保たれたのはさすがね)


(リードしにくそうね、あの巨漢はきついかな?令嬢も王太子より、食べ物が気になるみたいね)


観察している間に自分の番がやって来た。

前に出て王太子の手を取る、グイッと腰を引き寄せられた

「?王太子殿下?」

「レオンだよレオン・クレハドール、・・・ヴァイオレット・ナナリー、ナナリーって呼んでいいかい?」

「え?あれ?王太子・・・・」

「レオンだよ!」

「レオン殿下?」


(え?え?え?何か可笑しい・・・・さっきまでのポーカーフェイスの王太子と違う)


曲が始まり踊りだす二人


「「「「ほぉぅ・・・・」」」」

何処からかため息が漏れる

「「「絵になりますなぁ」」」」


動揺しながらも、好みの顔が目の前にあるのだ、見ないわけにはいかにと思い顔を上げると、

とろけるような笑顔の王太子が居た


どきどきどきどきどきどきどき!


(静まれ心臓!顔が赤くなる火照る~密着度はんぱないんだけど・・・なに?背中撫でられてる・・・)


「!レオン殿下?離してください、3曲目です、これ以上はダメです」


そうダンスを続けて2曲踊ると、

好意持ってる相手ですよ、でも恋人まで行ってません、

3曲踊ると二人は出来てますよちょっかいかけないでね

と言う意味になる


「放さないよ、私のナナリー(なな)」

「?ん?気のせい?」


腕の中から逃れられず、周りも止めないので結局5曲も踊ってしまった。


「婚約式は3日後、結婚式は半年後でいいかな?」

「はい?ええっと・・・はいぃ?」

「変な返事だけどハイだから了承ね」

「え?え?え?」


「貴方が好きです、結婚してください」

踊り終わったら膝をついて大勢の前で言われた

(しまったぁ・・・嵌められた)

兄の方をみたら、お手上げの仕草をされた


「はい」

それ以外の事はは許されない感じだった。


(疲れた・・・ああ・・・騎士になる夢が)

テラスに手を引かれて来ていた、火照った顔に夜風は心地よかった

長椅子に座ろうとしたら、王太子に持ち上げられ膝の上に座れされた


「あ・・・あの王太子」

「レオン!」

「レオン殿下?椅子に座りますので」

「外だから椅子が冷たいよ、冷えたら大変だ」

「いや、でも私そんなにか弱くないし、軽くも小さくも無いので」

「可愛いよ、私のナナリー」


(デジャブ?何の抵抗も無く膝に乗せるのは?無意識?もしかして魂違っても設定同じ?)


この世界に転生するとき、鑑定は封印しておいた、もともと魔法の無かった世界だし、解らない方が良いと思ったけど、今回だけは鑑定が欲しいと思った。


コトリ

テーブルにワインが置かれた

「君の為に取り寄せたんだ、飲んでみて、凄くのみやすいよ」

「え?お酒は・・・」

「飲まないの?」

「いえ、食事の時に3口くらいなら、あまり強くないみたいなので飲まないようにしてます」


「じゃあ、3口飲んでみて」

そう言われて、グラスえお渡される

「!美味しい!」

「そうだろう?・・・え?そんなに飲んだら」


美味しくて、ついグラス全部のワインを飲んでしまう、ヴァイオレットだった。





チュンチュんチュン

(・・・・・朝チュン・・・・どうしよう・・・・王太子にお持ち帰りされてしまった)

ヴァイオレットは裸のまま、レオン王太子の腕の中に居た。

レオン王太子の寝顔を見てるととても愛しくてたまらなくなった。

そっと、動く手で綺麗な金髪の髪を触る。


「ん?ナナリー?」

レオンの腕に力が入る、そして口付け

「んっ、レオン殿下」


そのまま、また絡み合う二人。




そのまま、王宮のとどまり、毎日愛され続けた。

一応、結婚式に大きいお腹は困るので、避妊はしてくれてた。


婚約式では、人前ではきりっと辺境伯爵していた父も大泣き、結婚式はどうなるのだろうか?

母たちには、自分の気持ちを再確認、兄から舞踏会の話を聞いていたので、流されたのでは?意に沿わないのに無理やりなのではと心配された、横にレオンが居るのにもかかわらず・・・


「大丈夫ですわ、レオン殿下のこと、愛おしく思っております、一目ぼれです」


そう言ったら皆、横のレオン殿下もほっとしたようだった。


婚約式は、身内と高位貴族のみで王宮で行われたが、

結婚式は盛大に、行われた、


「魔王陛下も来られるんですね」


招待客の説明を受けていてびっくりした、周辺国だけではなく、星の真裏の魔国の王までも来るというのだ


「魔国とは、貿易してるからねあの国でしか取れない魔物の素材があるから」


はい、なんとなく気がつきました、たぶん記憶は無いけどレオン殿下は転生者、すると魔王も?


「まさかね」

「何か言ったかい?」

「いえ・・・・」








ええ、多分魔王はあの魔王だと思う、記憶は無いようだけど、熱い視線感じた


「このまま、さらって行きたい」


なんて、披露宴の後の舞踏会で踊ったら言われたし・・・




結婚式の後しばらくして妊娠が発覚!国中お祭り騒ぎ

生まれたのは双子の、男の子と女の子、お願いして自分で育てている。


天気の良い、日差しの優しい日、お城の中庭で、双子がボールで遊んでいる横でソファに座りまったりと紅茶を飲んでいる、王妃になって6年、魔物討伐にも参加したり、他国との交渉にもついて言った、充実した日々久しぶりにのんびりと子供たちと触れ合っていた。


「お母様!見てみて!」

魔法でボールを浮かせて遊んでいた


「王妃様、私達もご一緒してもよろしいでしょうか?」


そう言って来たのは王宮で文官の仕事をしている侯爵、

「どうぞ、」

そう言ううと、メイドと従者が、机と椅子を運んで来る。


「?あれ?」


いつの間にか中庭が賑わっていた。


双子は膝の上で寝息を立てていた。


だれが、媚びるわけも無く、日常のたわいもない話をする中庭に集まった人達


(皆仕事は?)

と心で思いながら、自分もうとうとしてきていつの間にか眠ってしまっていた


『幸せそうだね・・・・』

『本当に、良かった』


皆がヴァイオレットを優しい目で見ている。



ヴァイオレットはその後も3人子供を産み、孫にも恵まれ、幸せな人生を送った。












「お帰りわこ!」

白い部屋、人生を終えたわこがぼーとしている


「なんか、騙された気分」

「皆がわこを幸せにしたいって言うから、記憶は皆無いよ、本能でわこを幸せにしてたんだ、皆幸せにしたいって言うから・・・・」

「はぁ~・・・・ま、幸せだったけど・・・・」


「で、これからどうする?暫く神域でぼーとしてる?新しい世界作る?また、転生する?」


「選択肢いっぱいあるね・・・・転生しようかな?原点に戻って、わこやろうかな?」

「そう言うのも良いかもね、あの世界のあの時代のあの場所に戻れるよ」

「記憶今度は無でお願い、さらで人生送りたい、他の連中は連れてこないでね」

「皆は世界の輪廻の輪に入って行ったよ、もうわこの事を思い出すことは無いと思う」


「戻っても事故は起きないよじゃ、いってらっしゃい」









パッパー

クラクションが鳴る交差点、信号が青に変わり皆が何事も無く横断歩道を歩いて行く


「あのやろう・・・・記憶は無しって言ったのに・・・」

そう言いながら横断歩道を渡る


「今度神域に行ったら!〆る!・・・」


神域では、ワンがあたふたと間違えたことに気が付き慌てていた。


原点にせっかく戻ったのに、力も記憶もそのままで大変困った人生を送ることになる、わこだった。



おわり



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生者学園~転生6回目のチート持ちですが、ある理由で目立ちたくないんです~ 朋 美緒(とも みお) @mio2778

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ