第9話:舞踏会

「アーサーの時の魔王は、浅水の事だけど、今までの魔王たちと違ったな、何か好敵手な感じがしてた、戦うのが楽しみだった」

「私はお主を見て一目ぼれした、どうにかして自分の物に出来ないか考えてたな」

「え?・・・男だったけど?」

「ああ、そう言うのは関係無い、あの世界の人間には居なかったのか?」

「・・・いや、道中男にも女にも迫られて、別の意味で警戒してて毎日疲れてたなぁ」

遠い目をした私、とちょっとヤバくなってきた


「まだ、手離れないね・・・」

「どうした?倭子」

もじもじしてしまう

「もしや」

「こんなにかかるとは思わなかったのよ、・・・・トイレ行きたい・・・」


「すぐ外(はず)すには、魔力交換をさっさと済ます必要があるね、にこっ」

二人が怪しく笑った・・・

「ごくん・・・いや、それはそうなんだけどほら、二人同時は無理だし」

見ると二人でジャンケンしてた


「じゃ私から」

浅水の顔が近づいている、考えたら二人に手を繋がれているので両手は使えない、抵抗も出来なかった

「んっん・・・・」

浅水は最初軽くついばむようにしていたが、次第に深く口づけして来た


(やばい、きもちい~魔王のくせに・・)

何秒だったのか、口の中を 浅水の舌が・・・


「おい!もう手外れてるぞ」


うっとりと、呆けてる私と浅水を引き離す宮本

そしてそのまま私の口をふさぐ


「うんっ・・ん・ん」

こいつも・・・変に上手い

気持ちいいじゃないか!


「倭子?」

「トイレ大丈夫か?」


気が付くと口と手は離れた居た!

ハッと急いでトイレに行く・・・・


終わったから帰れ、と言ったがもう少し居たいと言い出す二人

「命令、帰れ」

と言ったら、何も言えなくなった様で、寂しそうな顔をしながら帰って行った (私が移転で送ったんだけど)


「困ったな・・・一番係わりたくない連中の中のベスト10に入る二人だったのに・・・」



かばんを出して明日の準備を始めた、見にはいったプリントを見て

「うわ!絶対出たくないわこれ」



<ハロウィン クラス対抗闘技大会>


期間10月23日~10月31日まで(土日除く)

Sクラス全員

A~Dクラスは代表者男女2名ずつ4名

1~22クラスは代表者男女1名ずつ2名


一学年70人35ペア

二学年70人35ペア

三学年70人35ペア

210人105ペア


前夜祭;舞踏会10月23日

午後4時より

評価18位までシード権が付きます

第6位まで、第一シード権付与

第18位まで、第二シード権付与


トーナメント戦

選抜はペアで対戦

1ブロック15ペア第二シード2第一シード1

2ブロック15ペア第二シード2第一シード1

3ブロック15ペア第二シード2第一シード1

5ブロック15ペア第二シード2第一シード1

6ブロック15ペア第二シード2第一シード1

7ブロック15ペア第二シード2第一シード1


決勝;個人戦

14人


優勝賞品

創立30年記念アイテム贈与

1位 勇者の剣(戦闘力+1.2倍) 賞金100万円

2位 賢者の杖(戦闘力+1.2倍) 賞金50万円

3位 聖女の冠(戦闘力+1.2倍) 賞金30万円

4位 20万円

5位 10万円

6位~10位 5万円

11位~20位 3万円

21位~50位 1万円




入場料

家族は無料(招待状申込み必要)

一般入場者; 一人3000円(前売りのみ、数が決まっておりますので、早めにお申し込み下さい)


転売禁止-最大禁錮1年





「観覧にお金取るんだ・・・生徒はお金もらえるんだ」

じっとプリントを見ている倭子

「お金か・・・・4位狙い行ってみようか・・・アイテム要らないし、でもこれ本物なのかな?」

1.2倍か・・・私の下僕になると1.5倍だけど・・・私のスキルの一部使える様になるしね


学校に行くと、クラス代表を決めるホームルームが行われた


(眠い・・・昨日の魔力交換、すごい魔力持っていかれた、交換なのに持っていかれる量がこっちの方が多いって・・・Zzzz)


眠ってしまった倭子

気が付くと代表にされてしまっていた

拒否したが、懇願されてしまった・・・弱いよな私、お願いって言われると

だからなおさら人を避けてるのに・・・

もう一人は西田だった、クラスで一番なんだそうだ


「舞踏会のダンスの練習だけどいつする?」

「・・・?ダンス?」

「前夜祭で踊る、衣装なんかも貸出室行って早めに選ばないと良いの残らないよ、自分で準備出来るのなら良いけど、渡辺無理だろう?」

「おお、そう言えばそんなの書いてあったな、ドレスなんて・・・いいや自分で作るわ」

「え?作れるの?」

「まあね、裁縫は得意・・・なによその驚いた顔は」

「意外だなって思って、何もせずにごろごろタイプかと」

「家事一般一折りできるよ」


「金曜の夕方でもどお?、私部活行って無いから」

「行けよ、そう言えば何部?」

「漫画部」


前世につちかった~と思ってたら

BLばっかで嫌になって行ってない

BLが面白くないとか言ってるのではないけど

あの 、勢いについて行けなかった・・・

怖い腐女子


<ハロウィン クラス対抗闘技大会>は、

体育祭と文化祭が合併した行事で、武闘大会に出ない生徒は、模擬店や作品展示をしている。

広い学園の庭には大型ビジョンが持ち込まれ、会場に入れなかった人はそこで見ることが出来る、フェスのような会場になっている。

試合が始まると生徒もコロシアムに行くので、模擬店の時間は決まっている。


ただで見れるのに、チケットは即売り切れ、実際に見るのとモニター越しとでは迫力が違うらしい。

ルールは降参、もしくは二人が戦闘不能になったら終わり、武器は使用禁止、魔法と体術のみ。

コロシアムは大きいのが1つと小さいのが4つ学園の周りに点在、小さい方で予選が行われ、大きいところで決勝が行われる。

要塞都市の年に一度の島上げての一大イベントだ。


この時期、外国の護衛艦の軍人達は、この島への派遣希望が増えるらしい。


「で、西田・・・・踊れないって?」

「女性パートは踊れるんだけど、前世女性だったから」

ダンスの練習会場の講堂で、きっぱりと言う西田だった


「じゃ立場逆でうけ狙う?」

「・・・・」

「冗談だよ、赤い顔すんな」

「渡辺は?」

「どちらも踊れる、教えてやるよ・・・その前に実力見せて もらおうか?」

「だから、踊れないって」

「女性パートで」

「・・・」

「冗談だろ?」

「実力しだいでは直ぐに男性バージョン踊れるよ」

「身長が足りないだろ?」

「西田は・・・168くらいか?私が165だから、7センチヒールで私のほうが大きくなる」


袋から出す振りをして、無限収納からマーガレット秘蔵のダンスシューズを出す

マーガレット小さかったんだよね~


ヒールを履いて西田に手を差し伸べる

「ちゃんと教えろよ」

「オッケー!」


二人は男女逆で踊りだす

「渡辺・・・なんでそんなに男性パート上手いんだ?」

「ダンスは好きよ・・・さぁつぎのステップ」


周りが気が付き始めた、優雅に踊る男女逆ペア


『すげっあの女子、かっけぇ!』

『男の子も上手い、あんな難しいステップを軽々と・・・』


「お疲れ~」

一通り踊り終わると

「上手いね、直ぐ踊れるよ」

そう言った通り、少し教えるとすぐ踊れるようになった


「さすが、クラス1位の運動神経~」

「教えるの上手いな、・・・踊っていただけますか?」

西田が紳士のお辞儀をして言う

「くすっ、喜んで」


今度はちゃんと男女正規パートで踊った

皆が、倭子達を見ている


この講堂は11~22クラス用の練習場

踊り終わった二人の下に来て


「私達にも教えて、50以内に入りたい の、シード権欲しいの」

「え?・・・シード権・・・」

「11~22クラス用で1回戦突破出来たのは過去数人しか居ないよ50位なんて夢だよ」


「魔力量か・・・戦闘回数が多いほど魔力がもたなくて不利か」


私は、練習に来ているクラス代表のダンスの練習に付き合った、

あと、魔力温存の方法とか、何処まで効くかは不明だが、やる気のあるやつは好きだ。

皆上達したと思う。








結局その日帰ったのは10時を回ってしまった、食堂もしまっていたので、部屋でパスタをゆでてると、念話が来た。

(倭子、今良いか?)

(どうした?浅水(あそうず))

(クラスが変わってSクラスになった)

(Sクラスの人数が増えたの?)

(いや、先の戦闘で恐怖で動けなくなった者がいて、代わりだ)

(そっか、精神治療はしなかったからね、この間のは無能の司令官のせいで!・・・何処にいるのかわかれば治療しにいくけど)

(いや、もう転校していった、九州にある実家近くの特殊能力専門の学校に)

(怖いのか?元魔王のおまえが?)

(初めてだ、この感覚)

(それは、私のせいだと思う、相手の力が見えるスキル、私でも毎回足がすくむ(魂なので足は無いけど))

(大丈夫、私がフォローする今度こそ誰も死なせない)

(そっちいったら駄目か?)

(え?もう遅いし)

(宮本も誘う)

(きのう来たばっかじゃない)

(会いたい)

(・・・・顔見たら帰りなさいよ)

しばらくしてから、二人を移転する。

見ると二人とも部屋着ではなく、外出用らしい私服で来た。

私は制服に、エプロン姿

「いい匂い」

宮本がそう言った

「夕飯食べ損ねてさぁ、あなた達も食べるかな?と思って作っといた」

小さいテーブルに3つのパスタ皿とカレー皿と丸いグラタン皿を並べる、中身は和風パスタ

「悪いけど、フォーク無いから割り箸で食べてね」

「あ、ありがとう」

こっちをじっと見て、顔を赤くしてる?

「なに?嫌いだった?お腹いっぱい?気分悪い?」

ぶんぶんぶんと首を振る二人

食べ始める私。

二人も美味しそうに食べてくれた。


片付けは、やってくれると言うので、宮本に任せてコーヒーを入れる。

カリカリと豆をひく音、好きなのよね。


「グアテマラ 産の豆のコーヒーですどうぞ、甘い香りとこの力強いコクが好きなのよ」

幸せをかみ締めて。コーヒーをすする


「倭子・・・」

「ん?」

「「好きだ」」

「・・・ありがと」

眠い・・・改めて言われると照れる

「俺のことまだ憎いか?」

「う~ん、宮本としてはもう・・そんなでもないかな?」

「酷い仕打ちで、お前を支配しようとした、嫌悪するか?」

眠い・・・痛かったなあれ・・・

「浅水? ・・・もう、治ってるしその後改心したし、そうでもないよ・・・」

机に臥せって、生返事の私・・・


「倭子?」

「・・・・寝てる・・・無防備だな」


練習の疲れもあって寝てしまった倭子


「無防備だけど、俺らは縛りで倭子に触れられないから解ってて無防備なのかな・・・」

「多分解ってないと思うぞ、前世は男が多かったみたいだしな」

「ベットに運んでやりたいけど”魔力交換以外触るの禁止”はこういうとき困るな~」


たたんだタオルが見えたので、バスタオルを倭子に掛けて二人は倭子の部屋を出た

鍵は掛けれないので、チェーンを魔力で操作して掛けて、寮を後にする


誰かに見られていたことに気が付くのは次の週だった。


二人は帰りの道で、

「浅水はずいぶん変わったよな、俺様発言が全く無くなった」

「倭子の行動は、衝撃だった自分の体を平気で傷つけて、そして”お前は人間だ”と言われた時、どんなに前世に振り回されていたのかが解った、私は人間なんだと、そしてますます倭子が愛しくなった・・・この気持ちどうすればいいのか解らない、触れたい、声を聞きたい、笑顔が見たいどうすれば良いと思っていたときに下僕の魔法・・・少しでもつながれる事に歓喜した」


「倭子はいずれ自分で自分を殺さなければいけないと言っていた、そんなことさせたくない、守りたい、身代わりも厭わないそう思ってる。」

そう宮本が言うと

「私もだ、それでも倭子が居なくなったら、私も死ぬ」

「その覚悟は俺にもある」


「触れたいなぁ・・・抱きしめたい」

そうつぶやき家路に着いた



夜中、

「うっ・・・体痛い」

筋肉痛と、変な体制で寝ていたのとで体が痛い

「ヒール」

回復魔法を掛けたら楽になった


「二人、帰ったんだ・・・玄関」

玄関の鍵を閉めて

「本当に顔を見に来ただけか・・・」


二人の気持ちが痛いほどわかって、でも受け入れてあげられないことに、下僕にしてしまったことに、申し訳な さを感じていた。


「さて、バイトまでもう少し寝よう」


パジャマに着替えてベットに入った。






月曜日、放課後第5家庭科室に向かって大荷物を抱えながら歩いていると

『1年22クラス 渡辺 倭子さん、至急生徒会室までお越しください』

とアナウンスが鳴った


「うわぁ、なんだろう行きたくないでも通り道なんだよね・・・」

22クラスから見ると同じ階の生徒会室の向こうに、第5家庭科室がある


あれは・・・宮本?

生徒会室の前に宮本と、気配に気づいて後ろを見ると浅水が居た


「悪い、見られた」

宮本が言った

「金曜の?」

「ああ・・・」

二人が居ることで察した、

私の部屋から出るのを誰かに見られたんだと。


そっと部屋に入ると、長机の向こうに勢ぞろいしていた、見慣れないけど見たことある男子も居たネクタイの色から3年生だろう


「3人そこに座りなさい」

そう生徒会長が言う


「宮本と浅水を金曜の晩に女子寮から出てくるのを生徒会の者が見てね・・・これを・・・」

目の前に寮の廊下の防犯カメラの映像写真を出してきた

「これは渡辺さんの部屋の前だよね、夜中に女子の部屋から男子が出てくるのは、校則違反だよ」

生徒会長の頼朝(よりとも)智紀(とものり)がそう言ってこちららを睨む

「確か、宮本と浅水は渡辺さんに振られて、浅水に至っては懲罰房にまで入っているよな、それがどうして」

副会長の真田(さなだ)幸夫(ゆきお)が続ける


「渡辺さんに真意に謝罪して、友達になって貰いました、彼女を煩わせることはもう二度としないと約束しております」

そう浅水は聞かれたらこう言おうと打ち合わせしていた事を言った

「謝罪を受け入れて、友達ならと・・・苦手な二人ですが、嫌悪するほど嫌いじゃないですし、真摯(しんし)な態度で接してくれてますので」

そう私は言った


「振った相手でも友達になれるんだ」

ぼそっと副会長の真田(さなだ)幸夫(ゆきお)が言った


「その日は、勉強を見てもらう約束していたのですが、思ったよりダンスの練習が長引いて遅くなり、お詫びに軽くご馳走をして、お茶をして別れたのですが、思ったより 遅くなってしましました。すみません、もうしませんので。」

そう3人で頭を下げた

(やばいな・・・停学?自宅謹慎?)


「これは先生にはまだ言ってない、

不味いよね、停学?下手すれば懲罰房に逆戻り?バイトも出来なくなるかもよ」


「・・・何がいいたいんですか?」


「僕らとも友達になってよ」

「嫌です!」

生徒会の面々と宮本と浅水もその即答ぶりにビックリしていた


「・・・即答?」

「ああ、お前が降られたってこの子か?」

そう言って来たのは3年生の男子生徒

「兄貴・・・」



(真田(さなだ)和宣(かずのり)元生徒会長、真田幸夫の兄か・・・げっ

アーサーの時の将軍ブリュッセル・バーンの生まれ変わり?

一番しつこかった奴じゃん!それに何よその称号・・・

<アーサーを寵愛・何が何でもものにする>

絶対関わりたくない・・・

それに、指令室に居た人だ・・・

『勇者アーサーの聖剣エクスカリバー』を見た奴・・・)


「いいのかい?先生にばれても」

そう真田兄は言ってきた

「脅しですか?」


「浅水は今度懲罰房だと、退学だな、宮本も生徒会には居られないだろうし、バイトできなくなると困るんじゃ?」

「・・・・おどして、友達になるのもどうかと、それに友達って学年も違うのに」


「まずは、お昼一緒に食べようよ、親睦を深めなきゃね、Sクラス専用のサロンの許可証あげるよ」

そう言って生徒会長が認識プレートを出す、しっかり私の名前が刻んである・・・


「・・・いや・・・目立ちたくないのでいきま・・・ 」

「バイト楽しそうだよね・・・」


「手段選ばないんですね、そんなに倭子と友達になりたいんですか?」

と宮本が言ううと

「わこ~?呼び捨て?お前~」

「・・・と・友達ですから」

びびる宮本


「じゃ俺たちも」

「・・・好きにして・・・」


(こいつら記憶無くなるまで、どついたろか!)




そこに、サイレンの音が鳴り響く

「!」

「2箇所か」

スマホを見ながら戦闘準備を始める生徒会面々


浅水と生徒会Sクラスの生徒は移転魔石で移動して行った

残された、残りの生徒会の役員と宮本は生徒会の仕事を始めたので

倭子はそっと部屋を出て家庭科室に向かう


家庭科室に入ると真っ先に結界を張り魂を分散さす、

3つの魂が倭子の周りを舞うそして移転していった、

ゆっくりと椅子に座る倭子、


「・・・ドレス作らなきゃ・・・」


疲労感のある体を動かして作業を始めた


しかし30分もすると体が魔力不足で立って居られなくなり

背もたれのあるベンチが窓際にあるのでそこに座り

目を閉じた


どれくらい絶っただろうか?身体が楽になり目を覚ました倭子


(あれ?魔力回復してる)


誰かに抱きしめられ唇が重なっている

「うっんっ・・・んっ」

下僕の二人じゃない・・・誰?


《ピッコーン!》

[勇者従者契約が発動されました、相手の承諾は済んでおります、契約しますか?]

[はい][いいえ]

(なぬ!今度は勇者のほう?どういう分け方?)


薄らと目を開けると金色の髪が見える

(お兄様!)

風見(かざみ)翔汰(しょうた)だった、その姿は前世(テオドール・シュレー ア)のような髪の色だった


[勇者従者契約]

魔王との下僕契約と違い、[いいえ]を選んでもお互いにぺナルティは無い

契約すると、

従者は勇者が生きているかがり死なない

お互いののスキルの一部が使えるようになり、念話が出来る

魔力交換はしなくても死なないが、交換したほうがスキルの使用範囲が増える


(下僕と随分違うな・・・これ選ばないとキス離れないのか・・・)

ぎゅっと風見が腕に力を込めてきた

(後で解約もペナルティないみたいだから[はい]でいいか)


ゆっくりと唇が離れて行く唾液の糸が見えるが

お互い見合う、

「何か変だ、結構濃厚なキスしてたのに」

倭子をじっと見つめて風見が言う

「解る・・・今は他人なのに、身内にしたキスみたい・・・」


「お兄様・・・」

「マーガレット」


なんか本当に兄弟に会えた感じがして抱き合った


「これから”お兄様”て呼んでいいですか?」

「じゃあ、ペギィ(マーガレットの愛称)で呼ぼうか?」


お互い、見つめ合い笑い合った


風見は特別な力<結界無効化>を持っており、それで倭子の強固な結界を越えて来た

ぐったりとしている倭子を見て、魔力が極端に減って居る事を感じて、魔力を分けようと手を握ったら、倭子から唇を奪って来たら しい。

風見はHPをMPに変換するスキルも持っていたため、宮本の様に取り返そうとする必要は無かった。

それでもしばらくは歩けないほど衰弱しており、再度キスをして魔力を返す倭子だった。


なぜ、風見は勇者の方だったのか・・・

憎んでいたり、嫌っていたりしていた負側の人間と、そうでない者その違いだろうと倭子は何となく思った。


<倭子を妹として溺愛><勇者(倭子)の従者>

の称号が風見に現れた


先日の天変地異を排除して、

学園は落ち着いていた

庭で、風見と倭子がイチャついているのを除けば


「お兄様、クッキーを焼いたの」

「ありがとうペギィ、美味しいよ」


その様子を遠巻きに見ている2人は複雑な顔をしていた。

勇者の従者の紹介をされ、仲睦まじい様子を見せつけられていた。


学園では基本近づくのを禁止されているので、邪魔も出来ない。


「風見と付き合ってるのか?」

西田がダンスの練習中に聞いてきた

「付き合ってはいないよ、しいていえば兄弟ごっこ?、お互い兄弟居ないから」

「訳分からん」

「まあね、可笑しいのはお互い分かってるっから、・・・

明日からだね、やっと終わる~」


明日から始まる<ハロウィン クラス対抗闘技大会>

倭子の部屋に下僕の宮本、浅水、

従者の風見、そして雅(みやび)麗華(れいか)が居た

「狭い・・・・集まるの他の人の部屋にしない?」

「「「「此処が良い」」」」

「・・・・」


風見と雅は手をつないでいる、魔力交換とは関係なしに



「ペギィ、会ってもらい人が居るんだけど」

そう風見に先日言われた

「誰?」

「彼女・・・」

「おっいいねぇ、是非会いたいね」

にやにやする倭子


連れてきたのは2年Aクラスの雅(みやび)麗華(れいか)

「年上とは、やるねぇ・・・・・!リリィ・・・」


「関係疑われてさ、会ったほうがわかりやす・・・!」


倭子は雅を抱きしめて泣き出していた


「・・・」

「ペギィ?」

「・・・この魔力・・・・お父様?」

「リリィ!わが娘~」

「え?娘?~」


風見が絶句している



リリアナ・ガイフィールド公爵令嬢

転生4>の時のロベルト・ガイフィールド公爵の長女で、病弱で13歳で死亡している

公爵はその時、治癒魔法を極めていなかったことを後悔している、結局極められず、リリアナは死亡した。それから死ぬまでに治療魔法を極めた、現在は病気は99%治せる。


「え?複数前世持ち?そんなのあるの?え?勇者?え?魔王?え?え?」

「鑑定持ちなのね、隠ぺい忘れてた・・・」

「風見君、勇者の従者・・・奴隷契約みたいだけど、ちょっと違うのね」

「そうだね、勇者の従者は、勇者の命令は聞かなきゃいけないけど、強く出れば拒否できるし、ペギィのスキル使えるからメリットの方が多い気がする」

「私もなる!お父様の従者!」

「・・・最後は邪神との戦いに巻き込むことになるよ」

「邪神が来たらやっつけないと皆死んじゃうんでしょう?それなら戦った方が良い」

「リリィ・・・」

「どうすればいいの?え?キス?」

「いや、でもリリィ・・・うぐっ」

顔を両手で掴まれ、唇に吸いつかれた


《ピッコーン!》

[勇者従 者契約が発動されました、相手の承諾は済んでおります、契約しますか?]

[はい][いいえ]


「・・・・はい」





<再度倭子の部屋>

「下僕って不便よね、魔力交換しないと死んじゃうなんて、倭子お父様に迷惑かけないでよね」

「雅さん、お父様はやめて・・・」

手を繋いでいる私らをみて、雅麗華が言う、

今度はちゃんとトイレは済ましてあるし、鼻が痒くなっても、他に人が居るので大丈夫!


「今日はキスは・・」

「必要ない!」

残念そうな二人


「そうだ、皆選手だよね、闘技大会は手加減を忘れずに、1.5倍になってるからね、殺しちゃうよ」

「「「「ごっくんっ!・・・分かった」」」」


「呼び方変えようよ、お兄様は、風見君って呼ぶし

リリィは雅さん、私の事は倭子って呼んで、

さすがに周りの目が痛くなってきたから」


「倭子」

「倭子ちゃん」


「おーけー」


皆を移転で送って、明日の舞踏会に思いを寄せた、


「おっとその前に、講堂で開会式があるんだった、この時しか来ない学園トップの総代が来るんだっけ?若いって聞いてるけど」

学園のHPをスマホで探る

「国城(くにしろ)九曜(くよう)27歳、前世持ちじゃ無いんだ、思い出せないだけかもしれないけど、どんな人だろう世界一の能力者って」


次の日、講堂に生徒、先生、講師など学校関係者が集まる

大勢集まる中、開会式が始まった。

1年生は1階、2年生は2階の右3年生は2階の左になる


倭子は1階の後ろの方でじっと息をひそめていた

(苦しい・・・何よこの圧迫感・・・皆感じないの?)

皆楽しそうである、苦しがってるのは倭子だけの様に思われた


『それでは、学園総代、<国城様>より開会宣言をしていただきます』


シーンと静まり返る

(・・・さすがに姿が見えるとはっきりとした威圧が・・・)

舞台に国城が現れ、会場をゆっくると見まわした


「え?うそっ本当に?」

倭子は立ち上がって檀上を凝視する

国城と目が会った気がした


「渡辺さん!どうしたの?」

隣の席の子が言った

「何でもない・・・・」

訳がない・・・涙が流れる苦しい

「渡辺さん?本当に大丈夫?」

「ごめん、トイレ」

そう言って会場を出た

シーンとした中に会場を後にする私はかなり目立っていたかもしれない

「「「「わー!」」」」

開会の宣言したんだろう会場から歓声が聞こえてくる

私はトイレに行かず、殆ど誰も居ないエントランスの隅のソファで顔をハンカチで覆って泣いていた


「ディートリッヒ・クライス公爵様」


前 世持ちでないとプロフィールには書いてあったが、鑑定をすれば

愛しいディートリッヒ・クライス公爵の生まれ変わり


「手が届かないじゃん・・・総代なんて」

嬉しいのと悲しのとで涙が止まらない


会場からは、軽音部のコンサートが始まって居る様で盛り上がっていた

出入り口からは倭子の居る所は死角になっていて見えない

もちろん倭子からも見えない


「何故泣いているの?」

後ろから青年の声がした、そして倭子の隣に座る

「!くっ・・国城様?」

「凄い魔力だね、隠ぺいも上手だし、僕以上の能力者がこんな隅で何してるの?」


「どうしてその凄い魔力を僕に優しく纏わせるの?」

「?纏わせてる気は無いのですが・・・えっと・・・どうして国城様がここに?」

「さっき僕に言ったじゃない、愛してるって・・・何処かであったかな?」

「え?言ってませ・・んっ」

国城の顔が近づいたと思ったら唇が重なる


(何で、口ずけされてるの~!)

周りでざわざわと人が行き交う音がする

誰も二人に気が付かない

(認識阻害の魔法・・・完璧!って、どうしよううわっ舌が入ってくる・・・)

「んっんうっ」

(頭がしびれてくる・・・あっこれ鑑定されてる、だめ・・・まずい・・・あっ力が抜けていく)


唇が離れたが、倭子は力が入らない

「ふうん、勇者か・・・従者断ったけど君の事もっと知ったら、また考えさせてもらうよ、しかし驚いたなこんなに沢山の前世持ち初めて会ったよ、それに僕には記憶は無いけど、僕にも別世界の前世があったなんて・・・どうりで君に惹かれるわけだ」

くったりと国城にもたれかかる倭子、涙が流れている


「これをあげる」

「あっ」

倭子の耳にイヤーカフが付けられる

「僕の魔力で作った魔法具、いつでも念話してきて、何でもできること協力するよ、君のことは上層部にはまだ黙っ ててあげる何かあるんでしょう?じゃね」


そう言って国城は倭子の元を離れて行った


「ふっ・・・」

まだ涙が止まらない倭子





国城とのことは、皆には黙って居た


「会場に気配感じなかったけどどうしたの?」

宮本に言われた

「かったるいからエントランスで、認識遮断してくつろいでた・・・」

「おーい、渡辺~着替えないと舞踏会始まるよ」

遠くから西田が呼ぶ

「じゃ行ってくる」

「ああ・・・また後で・・・」


(勘付かれたかな?ま、国城なんて会う事滅多にないからバレ無いでしょう)


女子控室に向かい着替えて髪をセットして化粧をする

周りを見ると友達に手伝ってもらっている子が多い

(誰か頼めばよかったかな?・・・友達いないんだった・・・)


前世の経験値が無ければ無理だったな、と思いながら準備を終えた

我ながら、完璧・・・久しぶりに力入れたな~と満足している倭子だった。


舞踏会はブロックごとに最初踊り、後はフリータイムとなる

倭子と西田は完璧に踊った周りからため息が出るほどだった


「シードもらえるかな?」

「西田も欲しいの?大丈夫だと思うけど・・・」

「いつも目立ちたくないって言ってて結構本気だったじゃん」

「まあね、楽しかったから」

「ドレスも凄いな自作だろ?」

「まあね、浮かないデザインにはしといたから目立ちはしてないと思うけど」

「綺麗 だよ、渡辺」

「・・・あ、ありがと」

「フリータイムどうするの?」

「女子と踊りたいな・・・」

「・・・どうしてそこに行く?」


にやっと笑う倭子を見て顔を赤める西田


「本当に踊ってるし・・・」

西田が呆れている

一緒に練習していた別のクラスの女の子が、何人か壁の花になっていたのをすかさず誘って、踊っている

ドレス同士の踊りは妙に思われたが、倭子のテクニックが凄いため、いつの間にか5~6人の女子の順番待ちの行列が出来ていた。

皆踊り終った後、頬を赤らめていた


女子と踊っていて、さて次は?と思って見たら

「おに・・・風見くんなぜそこに並ぶ?」

「誘いたいのに、女子とばかり踊るから」

「まぁいいけど、雅さんは?」

「麗華も君と踊りたいみたいだよ」

「たぶん時間無いかも・・」

「そうだね、」

そう言って踊りだす二人


「曲が変わったんですが!」

「リクエストしといた」

「また、むずがしい曲を」

「と言いながら余裕だろ?」

二人は優雅に踊った、周りであたふたになっているカップルが居た

「口説いてくれないの?」

「・・・聞こえてた?女の子だけよ!皆可愛いよね~」

「君も女の子なんだけど」

「可愛いから、可愛いと言っただけよ」

にこっと笑う倭子

「目立ちたいんだか目立ちたくないんだか・・・」

「うん・・・そろそろ時間が無くなってきた気がするから、楽しいことは楽しもうと思って」

「どうい う事?」

「ま、その内分かると思う、そうそ!手加減忘れずにね」

「ああ、解っているよ」


そして、舞踏会は終わった、

浅水と宮本は学園内では近づくな!と言われているからダンスを誘うことが出来ないし、雅は時間切れで悔しがっていた。


倭子の指導を受けたクラスはシードを貰えていた、倭子達も貰えて作戦会議を教室でしていた

「疲れた・・・」

「時間中ずっと踊ってたのたぶん、渡辺だけだと思うよ」

西田が言ううと

「張り切り過ぎた、・・・さて、得意な魔法と体術の摺合せしようか?」


そう言って話し始める二人だった




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