第3話;魔王との最悪のキス

私の行動に、度肝を抜かれたらしい、クラスメイト達は遠巻きに、ちらちらこちらを見ている

まずったかなぁと思いながら、外を眺める


「あのぉ・・・倭子ちゃん」

「・・・・倭子ちゃん?貴方とはチャン付けで呼び会う中ではないと思うけど?」

おずおず近づいて来たのは、雨宮麗子だった。


「あ、ごめんなさい、先日は助けてくれてありがとう」

「別に、運んだだけよ私は・・・あまり近づかないでくれる?ちゃん付けもやめてね」


もじもじしている麗子

「それでも、あれで下手に動いてたら肺に肋骨刺さってたかもって、風魔法で包んで運んでくれたんだよね、ありがとう、それで、お礼にこれ」

小さな紙包みを渡す麗子

「何?」

「バレッタ、

いつも黒いゴムだから、似合うかなって」

包みを開けると、綺麗な青と緑のガラスがはめ込まれたバレッタだった


「・・・・綺麗、かわいい・・・・」

「もらって、そんな対したものではないけど」


おしゃれなんていつ振りだろう

「あ、ありがとだいじにするわ」


蔓延の笑みを浮かべる麗子

「私こそうれしい、是非つけてね」


目を見張ってしまった・・・・

(なぜ・・・)

麗子の称号に

<倭子を命がけで愛す>

何でや!?掛けるな命!


「渡辺さんは週末お暇?私とお茶しませんか?」


「・・・・暇じゃない、バイトしてるから、それに馴れ合うつもりは無い、これ(バレッタ)は今回のお礼として戴くけど、もうしないでくれるかな」


そう冷たくあしらった・・・・が

何か、つぼに入ったのか、なぜか嬉しそうな表情の麗子だった


なぜ、”勇者アーサー系”じゃない転生者の麗子が・・・・






休日の早朝、海際にやってきた私はそこで釣りをしているおじさんたちと、和気藹々と話をしている。

「今日は何が釣れます?」

「鯛が連れたよ、それと魔物」

「魔物も増えましたよね」

「美味しいやつもあるけどな、はずれの方が多い」

「おーい倭子ちゃん!」

ちょっと離れたところから呼ぶ別のおじさん

駆け寄ると

「美味しいやつ釣れた、食べるか?」

赤い魚、魔物だ、

「食べる!」

その場で裁いてくれて、集まってきた釣り人たちとお刺身にして食べる

「魔物がこいつほど美味しければ幾らでも出てきて良いんだがな~」

そう嘆く釣り人


わいわいと、おじさんたちと交流を深めている所を見ている奴が居た、魔王だった

蔓延の笑みで楽しそうにしている所を見られていた


バイト先は港、釣り人のおじさんたちと別れて港に向かう

そこに、いきなり魔王こと、浅水(あそうず)輝義(てるよし)が行く手を阻んだ

Aクラスではあるが、浅水は上級生からも先生からも、問題児扱いされている

なにせ、俺様なのである、自分が正しいと、自分がこうだと思ったことは曲げないのである、言うことを聞かない者など、戦闘に置いては致命傷だ、魔王の記憶に放浪されているのだから、しょうがないのだが、周りには、王様だったとしか言ってないようである。


その俺様魔王が何故か目の前に居る、

「おい!お前クラスと名前教えろ」

無視して横を通り過ぎようとすると、腕を掴まれた

「おい!何か言え」

腕を風で魔法で振り切ると無視

「おい!何でそんな仏頂面なんだ!さっきみたいに笑え!」

すたすたと歩く私!

「おい!」

あまりしつこいので、暗殺者スキルで睨みつける


ばっと、5メートルほど後ろに自ら飛ぶ魔王

「なんて殺気、放つんだ、おまえ!」

冷や汗を流している魔王

「とにかく、一緒に来い!」

掴み掛ろうとしたので、風魔法でくるんで学園の方にすっ飛ばしておいた


海岸沿いを走っていると、大きな船が見えてくる、

護衛艦、イージス艦、駆逐艦

少し海岸から離れた所に、最新鋭空母アカギや飛鷹(ひよう)が見える、

艦に掲げられている旗は、朝日旗ばかりでは無い、アメリカ、イギリス、オーストラリアの旗が確認出来る。


第二次世界大戦、日本は降伏して居ない、天変地異で全世界がくちゃくちゃになってしまい、戦争どころではなくなり、和解していた。


その後、特殊能力者の90%が日本で産まれる為、無下に出来なくなった、能力者は一人で空母一隻分の力があるとされ、それが人口の1割も居るのだ


特殊能力者を、寄越せと言って戦争を吹っかける事も出来ない、なら同盟を結んで共有しようと作られたのが、学園のあるこの島、動く要塞都市である。


軍隊はこの島の防衛の為に要る

さっきのおじさんも、これから向かう港の人達も、軍族だ。


アメリカ国旗を掲げられているイージス艦の横を通る、艦の上から

『へい!わこ!今から仕事か?』

アメリカ兵が声をかけて来た

『美味しいやついっぱい採ってくるよ、ジョンもお仕事ご苦労様~』

大きく手を振って、笑顔で挨拶する


私のバイト言ってなかったね

"海女さん"

だよー


空母から爆音を立てて飛び立つ戦闘機が見えた、偵察だろうか?


そして、軍艦の群れを、通り過ぎると漁港が見えてきた。

「倭子ちゃんおはよう」

「おはようございます」

そういうやりとりを繰り返して、詰所に向かう、詰所に入ると

「あっ倭子ちゃんおはよう」

「おはようございます」

「今日で最後かねぇ、明日から動き出すからね」

「本当に、しばらく潜れ無いから、頑張んなきゃ!」

「次の場所にも良い岩場あればいいですね」


3か月事に要塞都市は移動する、他の国を巻く為と、天変地異を避ける為に


ウエットスーツに着替えて船に乗り込む

都市から10キロメートル程にいい岩場があり、みんなで潜った、私は別行動、1時間以上ボンベ無しで潜れるので、好きにさせて貰っている。


実は、おばさん達も軍族、海女さんしながら海洋調査をしている、もちろん私も海女さんしながら海洋調査中。


しばらく行くと

(あった、魔素溜まり)

魔物が発生する元だ、

何時もは隠している、浄化の魔法を放って消す


この3か月で100箇所は消していた

魔素溜まりの気配が無いことを確認して、持ってたあみに、高級貝や、魔石、海藻、など詰めて1時間程で船に戻った。


給金2万5千円(採った貝の値段と時給分)を貰って、ほくほくと家路(寮)に帰った。


月曜日、麗子にもらったバレッタを付けて学校に行く、少しウキウキしていた、麗子が幸せな気分になる呪(まじない)を、かけてくれているのに気がついていたが、それだけでは無い、高揚感があった。


「どんだけ、おしゃれに鈍感だったんだろう」


久しぶりの女性転生、忘れていた自分に驚いていた。


放課後ワイワイと帰り支度をしている教室に、嫌な気配を放つ男が入って来た


机に伏せて、まどろんでいた私、結界を貼っていたので、油断した。


「おい!渡辺倭子、お前を俺の物(所有物に)してやる」

頭湧いてんのか?この俺様男!、と思ったら

パリンッ

結界が割れた

瞬時に机から飛び退いて、魔王と距離を取って身構えた。


まずい、後ろは壁、すぐ横の窓はハメ殺しで開かない、詰んだ。


魔王が迫る

「何これ」

体が動かない

魔王が私を抱き寄せ、唇を合わせた、咥内にうごめく魔王の舌。


甘いものでは決してない行為だが、

教室は色めき立っていた


魔王とのキスは、激痛を伴った。

唾液が糸を引く、唇が離れた


体が動かない、声も出せない

呪いを掛けられた、絶対服従の呪い、禁忌の呪術だ!

こいつ解ってんのか?犯罪だぞ・・・動けない


「喜べ!舌に術の石を埋め込んだ、この呪術は私にしか解けない、私の魔力でないとな、お前は私のものだ!」

目はどうにか動く、上目使いにねだるような目をしてやった、

娼婦のおねだりテクニック!

「そんな目で見るな、我慢できなくなる」

そう言って再び唇を重ねてきた

してやったり!私の勝ちだ!


今度は魔王が苦しみだした


「倭子ちゃん!・・・倭子ちゃんの周りが黒くかすんでいく」

麗子が悲鳴のような声を出した


ゆっくと唇が離れると、私の周りの黒い霞が、私の舌の周りに集まって魔法陣に変わった

パキン!何かが割れるような音がして、体が動くようになっり魔方陣と霧は消え去った


「・・・・・」

何もいえない魔王

「えぐい事してくれるなぁ・・・くそ野郎!」

「どうして、解除出来たんだ!?」


「てめえの魔力を使って解除しただけだ」

口を手で拭っていった

「てめぇ、ふっざけんなよ!だれがお前のものだ!?いい加減にしろ!ろくに話もしたことの無いやつに言い寄られて、1回しか会ったことがないのに、てめえが誰かも知らないのに、何が喜べだ!頭おかしいだろお前!自分がいる此処が何処か解ってんのか?人間の世界!てめえも人間なんだよ!

思い通りにならないからといって、力づくでやっいいものなんか無いんだよ!それにおてめえはもう王じゃないんだ!」


殺気MAXでいい放った、


まずった、ピンポイントの殺気じゃなく教室全体に広がってしまった、

顔面蒼白な者、ズボンが濡れているもの、完全に失神している者が居た。


「お前は私の物だ!」

「まだ言うか!私は私の物だ誰の物でもないわ!糞!ま・・・野郎!」

魔王と言いかけて言い直すところが、あくまで冷静だな、と自分で思う


「呪術が解けても、その埋め込まれた呪石がある限り、何処に居てもお前の居場所がわかる、お前は私の物だ!」


「あんた馬鹿!?石?取ってしまえばいい・・・・」

「癒着している、切り取らないと取れないぞ」

私は舌を出して、風魔法でかまいたちを起こすすると呪石の部分が切れて、魔王の元に血しぶきとともに石付きの舌の欠片が飛んでいった」


「キャー!」「うわぁー」

クラスメイトの悲鳴が響いた


ハンカチで口を押さえたが、血が止まらない、ハンカチが真っ赤に染まっていく


さすがの魔王も顔面蒼白だ


私は西田(保険委員)に目配せをした、西田は呆然としていたが、気を取り直して付いてきてくれた


だらだらと血が落ちる、

「渡辺、なんて無茶を、先生に言えば無茶しなくても取ってもらえたんじゃないか?」

私は、西田を見た・・・忘れてた・・・

私の落ち込み具合に、失念していたことを察してくれたようで、壁にもたれかかっている私の背中をぽんぽんと叩いてくれた。


「急ごう、止血しなくちゃ」

そう言って少しふらついてきた私を支えて保健室まで連れてきてくれた。


先生に部分麻酔を掛けられ、舌を縫い合わせる手術をしてもらった。


実はヒール(治癒魔法)は使えるのだが、私以外使えるものが居ないのだ、確かにまだ転移者の中に魔導師は見ていない、で表立ってヒールが使えないのである、縫合が終わったら、少しずつかけていこうと思う、でも


・・・・いってぇ・・・・



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