創造cycle
夜表 計
創造
何時から、何処から、何故少女がそこに居るのか誰も知らない、誰も知り得ない。
窓も扉も無い白い部屋。そこは誰も観測も干渉も出来ない領域。
そんな場所に少女は1人存在している。少女と少女が腰掛けている白い箱しか存在を許されないその空間に、少女はずっと居る。
少女が眠りから覚めると白い箱の近くに拳大の球が転がっていた。
その球を手に取り、近くの壁に当てる。球はゴムボールのように反発し床を転がり、少女の足下で止まる。
もう一度投げて遊ぼうと球を拾うが、球は手に取った瞬間中心から2つに割れ、片方が床に落ちた。
石膏が割れたかのように床に落ちた片割れは、また2つに割れ、小さな破片を床に散らした。
少女はただそれを見つめていた。
割れた破片を拾い、白い箱の中に投げ落とし底を見る。だが、底には球の残骸はなかった。けれども、少女には球だった物が落ち、底に当たり砕ける情景が視えていた。
少女は箱を抱え歩く。歩いていると、木で造られた馬の人形が見え箱を置き、その馬の人形で遊ぶ。幼稚な遊びではあるが、少女は楽しんでいた。だが、遊んでいると急に馬の首が取れ、次に足が取れてしまった。少女は持っていた馬の人形を床に叩きつけ、馬の人形は形を失ってしまった。
少女は飛び散った部品を全て拾い集め白い箱の中に投げ入れる。まだ部品だった物は底にぶつかった衝撃でただの物になった。
また歩こうと白い箱を抱えようとしたとき、黒いピアノが目に入り、少女はその小さなピアノに駆け寄る。
人差し指で鍵盤を押す。ピアノから小さな音が漏れ、その音に続くように両指で音を奏でていく。お世辞にも音楽と呼べるようなものではないが、少女の今の気持ちを表現しているかのように高揚感のある音を奏でている。だが、少女が弾いている最中、1つの鍵盤が取れ、床に落ちる音が少女の音を消した。
少女の心は冷め、ピアノを両手で持ち、白い箱の中に投げ棄てる。ピアノは自らの重みに耐えられず、潰れ中身を吐き出し二度と音を出すことは出来なくなった。
少女は白い箱に腰掛け、足をぶらぶらと揺らす。そして、また夢を視ようと眠りにつく。
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