劇場版 蒼眼の魔道士(ワーロック) -Lost Dreams-

神島大和

Prologue

 カツ……カツ……カツ……。






 赤光を放つ非常灯が照らすのは、喪服と思しき黒服に身を包んだ少年。

 そして、その足元に倒れる警備員の男たちの姿だった。


「待ってて……ください……もうすぐ、あなたに……」


 その瞳は死人のように暗くて底が見えず、しかし同時にその根源で蠢く『喪失』が、野心よりも遥かに強すぎる光を生み出していた。



 それは悪意なき、純粋なまでの信念の証明。

 それはあまりに最低で、あまりに最悪で、あまりに身勝手な願い。



 ——理解している。



「もう一度……あなたと同じ夢を……」



 ——それでも勝ち取ってみせる。



 自分の行いが悪だと知っていてなお、それでも諦めることのできなかった『理想』は少年の心を削り、守る為の拳をいつしか凶悪な刃へと変貌させた。



「……



 痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて――


 それでも少年は前に進む。進まなければならない。

 退路はもう、ないのだから。


 夢でもいい。嘘でも構わない。

 ただもう一度、最愛の女性にこの手で触れる。

 もう一度、汚れきったこの両腕で抱きしめ、全身で彼女を感じたい。


 そのためだけになら、式美春哉しきみはるやは自らの拳を血に染める事を厭わない。

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