第八章、聖剣

メモリー6

 分かってる。聖剣は二人で行使してこそ、完全に機能する。完全な消去は俺一人じゃ無理だ。

 だけど、あいつをここに連れてきたくなかった。二人でここまでやって来れたとして、戻れる保障なんてないからな。

 あいつが怖がったのは贄神そのものじゃない。それも分かってたさ。勇敢な女なんだ。あいつが恐れたのは、俺を失うことだった。あの涙を見たとき、俺は……うれしかった。本当に。俺自身、あいつに抱いている気持ちがはっきりしたんだ。俺も怖かった。何が起きても不思議じゃないギリギリの戦いの中で、あいつを道連れにすることが、怖かった。

 あいつの気持ちを知ったとき、思ったんだ。絶対に、死なせないって。

 

 俺が出来ることは、こいつを押さえつけておくことだけだ。

 この後、あいつは辛い目に遭うだろう。だけど。

 太陽の下で、微笑んでいてほしいんだ。俺がその隣に並んでて……もう、それが欲張りな夢だって、分かってるけどさ。

 ごめんな。ユージニア。でも、ずっと想ってる。お前のためだけに、世界を支えるよ。だから、生きてくれ――

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