白銀の氷姫

斎藤さくら

プロローグ

お父さん、、、


あ母さん、、、


どこ?どこにいるの?


私はここにいるよ、、、


お父さん、、、


あ母さん、、、


助けて、、、、怖いよ、、、、


廃墟となった雨の街を涙で顔を濡らした少女が歩く。

綺麗な腰まである黒髪も裸足の足も手も腕も汚れている。

はあはあ

汚れた空気に容赦なく降る雨

「お父さん、、、お母さん、、」

少女は道に蹲り、涙を流す。


するとそこに3人の人影ー

「おいおい、こんな所にちっせい女の子がいるぜ」


少女は声に顔を上げる。

そこにはボロボロの服を来た、心も体も荒んだ少年がいた。

「へえ、結構可愛いじゃねえか」

「金目のもんは持ってなさそうだな」

(怖い、、)

「おい、お前こっちに来いよ」

ぐい

少年の1人が少女の腕を強く引っ張る。

「いや、やめて」

(怖い)

「やめてだってよ」

ハハハハハ

少年達の高笑いが聞こえる。

少年達の腕の力はさらに強まり抵抗するものの叶うはずもなくグイグイと引っ張られる。

「いや、やめて、話して」

少女の目に涙がたまる。

「いや、いや、いやあああああ」

ブワッ

「うわああああ」

少女の悲鳴と同時に黒い波が少年達を吹き飛ばす。

「ふぇ、うぇ、わああああん」

少女は目の前の光景に涙を浮かべ泣き出す。

放たれた黒い波は目の前の少年達だけではなく、町や全てのものを無へと変えてしまったのだ。

「怖い、怖いよぉ、、誰か、誰か助けて」

少女はその光景から目をそらすそらすように蹲って泣く。

しかし無へと帰られたそこには人はおろか虫など生き物すらもはやいない。

ひたすら無になった土地が広がっているだけである。


その時だったーー

スッ

少女の頭の上に黒い傘が光る。

「!」

うっすらと少女が顔を上げたと同時に空から光が指し、雨雲が流れ太陽が顔を出す。

「可哀想に。私とおいで。わたしがその力の正しい使い方を教えてあげよう」

目の前にいる男性は後ろからの太陽の光で顔は見えないが優しい面持ちで手を差し伸べる。

少女は少し不思議に思いながらもその手をとる。

ぎゅっとその手を男性が握り問いかけた。

「名前は?」

「、、、、玲奈」



ーーーーーーーーー

ーーーーー


ホーホーと深い夜を告げるようにフクロウが鳴く。

今日は満月。しかし上空にはいくつかの大きな雲がおり、光は遮られていた。


カツカツ

懐中電灯を持った警備員と思われる男性が廃墟となった研究所を見回りしている。

コツコツコツ

「ん?」

足音に気づき前を見ると、頭まですっぽりと黒いマントをかぶった人影が歩いてくる。

「君!?こんな夜中にここで何をしている!?」

スッ

「!」

言葉を他所にマントをかぶった人物は横を通り抜けていく。

「待ちなさい!」

そう人物の方に振り返るとその人物は足を止める。

「君、一体、、、」

手を伸ばし近づこうとした瞬間、

パキーーーン!!

男性の体は大きな氷に包まれてしまった。

そして次の瞬間、バラバラバラと勢いよく氷は砕けちった。

そのままシューーーと音を立て一気に状態変化をするよう男性を氷漬けにした氷は空気となって消えた。

少女は再び歩きだす。コツコツと足音を立てながら。

そして氷と同じように頬についた返り血もスウと空気となって消えていった。


研究所の外には黒い怪しい車と黒服の男性が立ち、その人物を待っていた。

「おかえりなさい。任務ご苦労様です」

ブワッと強い風が吹き、少女の被っていたマントを払いあげ、隠れていた満月が少女を照らすよう顔を出す。

「白銀の氷姫」

そこにいたのは白銀の髪に翡翠色の瞳をもつ感情のもたない少女がいたーーー。




スタッ

「ただ今、戻りました。マスター」

暗い暗闇の一室で少女はマスターと呼ばれたその人影に膝まづいて報告をする。

白銀の髪は暗闇でも輝くほど白く美しい。

「任務ご苦労だった。例のものは回収できたか」

暗闇の中何かに座る人影はその言葉に反応するよう言葉を返す。

「、、、はい」

愛想もクソもないその返答に苦笑とため息を漏らすと声色を少し変え白銀の少女に言い放つ。

「、、相変わらずだな。まあいい。お前には重大な任務をこなしてもらう」

少女は何も返答することなくただその続きの言葉を待っている。

「明日から魔法学園に通え。あそこは私の支配下の一つだ。地上で生活し、生きてみろ」

「今日任務用で渡した服、それがお前の行く中等部の制服だ。」

マントの隙間からは緑色の制服が見えている。

「、、、、かしこまりました」

特に疑問や反発も口にせずただそれだけを言い放つと立ち上がり、去っていった。

その姿を別れた通路の影でマントをかぶった人影が見ていた。


「急にどうしたんですか?魔法学園に通えだなんて」

そこに長身の髪の長い男性がマスターと呼ばれた人物に問いかける。

服装はいたって紺のブレザーとズボン、おそらくそれも制服なのだろう。

「特に深い意味は無いさ。ただあの子は知らないことが多すぎる。」

2人の会話の様子を見ていたそのマントをかぶった人影はすっと闇に消えた。

「さあどんな姿を見せてくれるのか楽しみだ」

「魔法学園に来る以上歓迎してあげなくては」

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