2月18日 自転車に「乗る」

 自転車に「乗る」と聞いて、みなさんはどんな様子を思い浮かべますか?

 サドルにまたがった姿を思い浮かべるのが当然でしょう。

 でも、サドルにはすでに私が座っていたのに、一年生のちひろちゃんが自転車に乗ってきたのです。ちなみに後ろの荷台には大きなかごがあるママチャリなので、二人乗りするように座ることは出来ません。(そのかごに「乗る!」と言ったのも彼女ですが)


 さて、どこに乗ったのか分かりましたか?

 正解はサドルの前のフレームに立って乗る、でした。

 そう言われてもすぐに想像がつかないと思うので解説しましょう。


 私はサドルに座って両手でハンドルを握っています。

 その脇の下をくぐって両手の間の空間、ちょうどお腹の前あたりに顔を出すと、そのまま自転車のフレームに足を掛けて立ち上がるんです。

 急に体重をかけるからハンドルを両手でしっかり握って支えていないと倒れてしまいます。「危ないから止めなよ」と言ったくらいじゃ止めません。こちらも手を離せないから、止められないし。

 これはこの日に限ったことではなく、ちひろちゃんの最近のお気に入り。

 待ち合わせ場所で自転車にまたがったまま待っていると、すーっとよじ登ってきます。

 ところが今日は自転車置き場で登ってきたのです。


 実は彼女とは同じマンションの同じ階に住んでいて、玄関を開けると「おはよう」なんてこともあります。

 今日も玄関で靴を履いていると、ちひろちゃんの咳(独特な咳の仕方なので)が聞こえてきました。今日はこちらの方が遅かったかぁと降りていくと、自転車置き場で待ち伏せ。

「もう来ると思ったんだよねぇ」そう言いながらラックから出した自転車に――と言う訳です。

 マンションの前が集合場所なので、少しだけなら仕方かないかとちひろちゃんを乗せたまま出発。倒れたら怪我してしまうので、ハンドルをしっかり押さえながらゆっくりと進みました。


 外へ出ると、既に集合場所に来ていた一、二年生たちが「何やってんのー!?」「どこに乗ってるんだよ」と近づいてきます。

「乗りたかったんだもん」とはしゃいでいたちひろちゃんですが、しっかり者の二年生、ゆうかちゃんに「あぶないから降りなよ」と言われてすぐに降り始めました。

 どうやら、子だもたちに甘いことをすっかり見透かされているおじさんでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る