11月28日 一つの傘に

 天気予報では雨になっていたものの、家を出る時にはまだ降っていませんでした。

 登校班を見送って会社へ行くまでは何とか持つかな……と自転車で出掛けましたが。

 見通しが甘く、途中の大通りを越えたあたりで急に降りだしました。

 傘を持っていない子もちらほらいて、友達に入れてもらったりしています。こちらは自転車だし、しょうがないと思っていたら「はい」とまつりちゃんが傘を差しだしてくれました。

 三年生の持つ傘だから、やや小さめ。

「おじさんは大丈夫だから。濡れちゃうよ」

「平気だよ」

 ご厚意に甘えてまつりちゃんの傘に入れてもらいました。

 とはいうものの彼女の背の高さに合わせて自転車に乗ったまま体をかがめ、頭だけ入れてもらうような恰好です。

 ちょっと苦しい体勢だったけれど、おかげで頭を濡らさずに学校へ着きました。


「ありがとう」とお礼を言うと、

「いつも荷物を持ってもらってるからね」と笑顔で校門へと入っていきました。

 こういうことがあるから、見守り付き添いをやめられないんですよね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る