10月7日 運動会

 朝から暑い。

 天気予報通りに台風一過となったものの、やはり予報通りに気温が上昇。これが十月なのか? 七日だけに。こんな駄洒落で涼しくならない程、暑い一日だった。


 そんな中、毎年恒例の地域による町会対抗の運動会が行われた。区長の挨拶でも言っていたけれど、子供たちのためにこういった催しを実施する地区は区内でもここだけらしい。

 そして、いつの間にか、この運動会へ我が町会の子供たちを引率する責任者が私の役目になっている。登校班の見守りをやっていて子供たちの顔が分かるから、というのがその理由。

 こちらは覚えていなくても、子供たちの方は「知ってるおじさん」だから話は早い。

「いつも、学校の前で旗を持ってるよね?」

 一年生の男の子から聞かれて、それが話のきっかけとなって会場へと歩き始めた。


 運動会の会場は、町会会館から歩いて三十分ほどの野球場だ。

 行くまでにバテないように、出来るだけ日陰のコースを選んで八時半には到着。

 ことしは常連メンバーのメイちゃんが不参加だった。先月、足を捻挫してまだ完治していないそうだ。

 参加者名簿に名前がなかったので、

「あれ、今年は運動会に参加しないの?」と聞いたら、黙って足を指さしながら睨まれてしまった。

 ごめんね、メイちゃん。君が、この運動会のリレーで走ることを楽しみにしていること、何度も聞いて知っていました。

 不参加には当然理由があるよね。歩く姿は普段と変わらないから、すっかり忘れていたよ。



 熱中症にならないように水分補給を促し、グランド脇の木陰で休憩させながら、運動会は無事に終了。

 帰り道の途中にあるスポーツセンターでトイレ休憩をしている間、手摺に腰かけて待っていると隣にノンちゃん(ラジオ体操の話に登場)が座ってきた。

「今日は暑かったね。疲れた?」

「うん。でも、ママから傘借りたから」

 ノンちゃんはお母さんから借りた日傘の下でうずくまるように観戦していた。後ろから見ていると、開いたまま床に置いた日傘が時折もぞもぞと動いているようで、まるで亀を連想させるような不思議な生き物のようだった。

「今日はメイちゃん、休みだったね。まだ足の怪我が良くないの?」

 ノンちゃんとメイちゃんは同じクラスなので聞いてみると、

「あっ、そうか。それで来なかったんだ。忘れてた」


 よかった、怪我のことを忘れていたのが俺だけじゃなくって。

 

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