夢と約束の果てにあったもの

@akk

第1話 俺を縛った約束と心の崩壊

「畜生なんて厄日だ!!」

俺はこんなことを叫びながら自分のこれまでの人生を走馬灯のように巡らせていた。


 俺は三兄弟の末っ子で、世間でいう一般の家庭に生まれた。兄弟も仲が良く、両親も優しかった。学園の勉強も中の上くらいの成績で学園生活では優等生で通っていた。自分でいうのもなんだが理想的な家庭だった。

ここからはよくあるお涙ちょうだいのお話さ。学園生活も中ごろ親父とお袋、はては可愛いがっていたペットのスミシーまで死んじまった。

みんな同じ病気だった。 『灰転死病』  いわゆる不治の病。現代では治し方はおろか原因さえ特定されてない天災指定難病。肺が灰に変わっていきやがて死に至る病。

その病気の厄介なところはすぐに死ねるわけじゃなく長い闘病の末、最終的に酸素が頭に回らなくなり意識をなくして死ぬところ。

親父もお袋も、スミシーさえも眠るように死んじまった。意識は戻らず何か月もかかってゆっくりと。まるで天使が迎えに来たかのように死ぬから『拝天使病』の別名がつけられるほどだ。

 それから俺たち兄弟は三人で生活を成り立たせなきゃならなかった。兄貴たちは働き俺は学院への受験があった。お袋との約束を果たすため俺は死に物狂いで勉強した。寝る間も惜しんで足りない頭を回して勉強に打ち込み何とか学院への入学を果たした。学院は狭き門だった。学園で上の中の成績のやつでも普通に落ちちまうそんな世界。約束を果たすためだけを目的にして頑張った。

 俺は小さな頃憧れたものが二つあった。学園の教師と渡り鳥。前者はすぐにわかるが後者はいわゆる旅人さ。小型の飛行機に乗り街から街へ、国から国へ自由気ままに空をかける旅人。

 真面目だったお袋は俺の生活を考えて安定した前者の夢を応援してくれたってわけ。だから俺はお袋が意識をなくす前に「絶対学院に入って学園の教師になる!」って約束したって話。

学園の教師になるためには学院に入り卒業してはじめてその資格を得ることができた。だから何としてでも学院に入る必要があった。金だって必要になる。学園は国からの補助が出るが学院はそうじゃない。親父とお袋が死んでただでさえ日々の生活をやりくりする必要があった。だから兄貴たちは働いてくれたのに。

しかし皮肉なことに親父とお袋が死んだことで災害指定見舞金が出て何とか学院に入るための金のめどが立った。いうなれば親父とお袋が金に変わった。

そんな事これっぽっちも望んじゃいなかったのに。

 それから俺の中では金が親父とお袋の代わり。その金で行く学院は親父とお袋の命を使いながら学ぶためだけに心の火を蝋燭にともした学びの場所。

しかし、蝋燭もいつかは尽きるもの。学院で学んだのは学園をどのように回すかのシステム。俺の考えていたこととは真逆の世界。

学園の教師たちはなんで優しく俺たちのことを守ってくれていたのか。学んだのはその舞台裏。俺はそのギャップに自分をすり減らし、とうとうつぶれちまった。精神を病み、夜が寝られなくなった。体が震え、言葉も出ない。それを見かねて兄貴たちは俺を病院に入院させた。

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