それゆけ!牛乳雑巾ちゃん

偽モスコ先生

プロローグ

プロローグ

(……後のことは頼んだぜ、相棒)

(辛い役を押し付けちゃって、ごめんね)

 

 心地良い暖かな風が、草木を撫でる。梢は鳥たちの憩いの場となり、陽光に照らされて和やかなシルエットをその足元に落としていた。

 どこかの街を一望できる、とある見晴らしの良い丘の上に、一本の剣が刺さっている。

 その剣は、柄の中心に閉じられた目の様なものがデザインされていた。

 

 次の瞬間、それがゆっくりと開く。どうやらデザインではなく、本物の目だったようだ。

 続いてその剣から言葉が漏れる。

 

「……む、眠っていたか……。何だか夢を見ていたような気もするが……」


 剣は、先刻まで見ていた夢を反芻しながら、どこか遠くに視点を合わせようとしていた。

 

「……あのバカは今頃どうしているのだろうか……」

 

 しかし、剣が生きていて喋ることも、この世界においてはあり得ないというほどのことでもなかった。

 

 ここは、アミューズ。地球とは似て非なる惑星。

 この惑星でかつて最大の生存圏を築いた人類が消えて数千年後、動物の中に突然変異によって人間並みの知能を持つことになった個体が現れる。

 更にその中でも二足歩行をする者が出てくると、それらは神々によって、かつての「人間」のような「形」をしていることから「ヒトガタ」と名付けられた。

 「ヒトガタ」は文明を築き、町や村、そして国を作った。

 しかしまだその歴史は浅く、数も多くはない。彼らの生活圏は非常に狭い上にまばらであった。 

 彼らにとってこの世界はまだまだわからないことばかりであり、成功と失敗を繰り返して進歩しながら、明日に向かって少しずつ歩んでいく。

 時にはすれ違い、争い、お互いに傷つけあうという愚かな過ちを犯しながら。

 そう、まるでかつての人類のように。

 それは、この世界に存在する神々のいたずらか。それとも、それすら超越した「何か」の仕業か。

 再び動物たちは、戦乱の歴史を繰り返そうとしていた。

 

「さて、次のマスターはどんなやつなのだろうな」

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