第9話
徐々に広くなってくる探索可能エリア、徐々に明るくなってくる光量。
それでも尚仄暗い印象の第一階層第一層四階に到達する海命。
「やっぱり、少しずつだけど明るくなっているね。」
そう言葉を漏らしつつ移動を始め探索を開始する。
今の海命はLPを使用せずに溜めている状態だ。これは前階の階主を余裕をもって倒せるようになった事で、少し様子見をしてみようという思惑と、レベルを上げるとレベル差により取得経験値が徐々に減っていってしまう事が、もったいないと感じるようになった為である。
海命はこの広くなったこの階を一時間半程で踏破する。途中に遭遇したLV.16の素の魂を屠りつつ。そんな海命の現在の保持LPは1,191にもなった。
「門到着っと、前回よりも少しだけ時間掛かったかな?」
周囲を警戒しつつこの階の主を探す。
「居た居た。今までの経験上その階に出没する通常の敵のレベルの四倍が、門番のレベルだから~。」
―――
LV.64
レース
素の魂LV.64
スキル
魂断刀LV.16
雲之衣LV.16
魔素探知LV.16
鑑定LV.16
ソウルステータス
HP64/64
オド64/64
攻撃力16
防御力16
―――
「予想通りなら向こうの攻撃はこっちにダメージを与えることは無いね。それに、たった二回の攻撃で倒せるから問題は無いかね?よし、じゃ、LPはまだ温存しつつ行こう!」
そして、徐に動き出しあっという間に勝利を収め次の階層へと向かうのであった。
次の階層も問題なく進み2時間後に門に到達。
レベルが上がった第五階階主に遭遇するも、海命は有り余るLPを使用しステータスを更新。余裕をもって撃破できる程度まで上げ、問題なく相手の魂を消滅させる。
第六階到達後も特に問題なく攻略を進め門へと到達するが、ここで海命は先手を取られることになる。
今の海命の魔素探知LV.20に対して、相手の階主の魔素探知LV.24になっていた。前階ですでに探知領域が同等になっていたのだが、余りにも余裕をもって撃破していた為この事を失念していたのだ。
だが、この程度のことで揺らぐ海命ではなかった。とは、いかなかった。
今海命の心はダメージを負うという事に異常な恐怖心を持っている。この為海命は狂気に飲まれ戦闘を開始する羽目になる。
戦闘中の記憶を失いながらも、戦闘自体はお互いに三度スキルを打ち込み合うも、海命は一切ダメージを負うことなく勝利するが、意識を手放している海命はこの事を知ることは無い。
何故ダメージを追わなかったかと言うと、今現在海命はマテリアルボディを得ている為である。
これにより魂は保護されダメージを負うことが無かったのである。
水の身体を得た後に攻撃を受けること自体はあった。しかし、海命はこの時ダメージを負わなかったのは、ソウルステータスの防御力のお陰だと思っていた。
そして、戦闘終了後意識を取り戻す。
「はー、油断しちゃってましたね。」
意識を取り戻し、状況を掴んだ海命はそう呟きながら、今後は階を跨ぐ時に魔素探知LV.を上げるようにしていこうと思うのだった。
それから怖怒の狂喜が発動したことによって枯渇したオドが回復するのを待ちつつ魔素探知のLV.を上げ、オドが回復しきると門を潜り次の階層へと移動する。
門を潜る毎に明るさは増して、今はもう暗いと思うこともないほどの光量のなか、探索を始めていく海命。
探索を進めていく中で熟練度を稼ぐために自らにスキルを振るい、魂断刀と雲之衣の熟練度を稼いでいる。
「それにしても、自分で自分にダメージを与えるのは平気なんだけどな~。」
そう、海命はダメージを負っても大丈夫な場合があった。それは今海命自身が言ったように、自分自身でダメージが発生した時だ。
海命は何故このとき自分が怖がらないかが解らないでいた。
「自分以外だから怖いのかな?」
そう思うも「何か違う感じだよね。」と、回る水を捻りながらも淡々と移動し魂を消滅させていく。
そして7階に入ってから3時間後門を発見、程無く階主も見つける。前階とは違いちゃんと魔素探知LV.を上げていた海命は余裕をもって対処する。
その後手加減をし、オド消費をなるべく抑えて放った4重起動の魂断刀を叩き込み、何事もなく勝利を収める。
その後第八・第九と攻略を進めこれを攻略し、第一層第十階に到達する。
「明るい・・・、そしてあれは・・・水面?」
十階に到達した海命を出迎えたのは、初めて彼女が見る水面だった。
水面に近づくとそのまま水上へと身を出す。
水面から隆起する回る水、つまり海命のマテリアルボディはそのまま姿勢を維持しつつ周囲へと意識をける。
「これが海の外。」
そこに広がるのは青い空と青い海、その境界線となる水平線のみ。
一見すると何もない場所だが、初めてこの光景を見る海命は感動の吐息を漏らしていた。
今まで海中に居たため全く意識していなかった自らの身体をまじまじと観察する。
「なんか不思議な感じ。」
その体を得た時、自分の身体が水で構成され回っていたことは理解していたが、それをまざまざと見せつけられ、得も言われぬ感情を「不思議」と表現する海命は、その身を水上に出したまま移動を開始する。
その様はまるで、竜巻に巻き上げられた水が渦を巻いているようであった。
そして程無くして、いつも通りに魂を発見し、経験値を稼いでいく。
4時間半後磯に辿り着いた海命。
岩石で構成された海岸線に波がぶつかり飛沫を上げている。
小さな小さな磯だが、その形はまるで誰かが座るべく用意されたような造形である。
「やあ、良くここまで無事に辿り着けたね。」
気軽に声を掛けつつ、海命の目の前にある磯に現れる存在。
「私の名前は
海命は神威を纏った言葉を掛けられるとともに強烈な存在感を感じ、神魂命の放つ神意に従い神坐の下にその身を運ぶ。
そのすさまじい存在感は、過去
「いやー、しかし自力でマテリアルボディを獲得する存在が、最初から生まれることになるとはね。」
「いっいえ、偶々です。」
「そうかい?偶々でも君の実力さ。さて、早速だけど私のお役目を果たそう。」
神魂命がそう言葉を紡ぐと、神坐たる磯から一つの命が浮かび上がり、海命へと違づいていき結び付いた。
「では、私が君に施す物は以上になる。次の層へ向かうための門はあっちだ。」
海命は「ありがとうございます。」と一言言い、言われた通りに次の層へと向かっていった。
いや~、がっちがちだったね~。母様とあってるはずだけどな。
神魂命はそう思いを抱きつつ、海命が門を潜るのを見届けた後その身姿を隠す。
一方海命の方はと言うと、自身に起きた変化がシステム音声で知らせられるも、神威に当てられ一切意識に残らずに、言われるがままに今いる磯・・・生誕の磯に存在している、第一階層第十層第十階と繋がっている門へと向かって行った。
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