第一節~魂は~

第1話

 今現在儘は一人でシステムを構築していた。

 儘の想像によって次々と言葉がシステムへと送り込まれている。

 儘の周囲に言葉が浮かび、その言葉に言葉を嵩ね意味を与え、先に送った言葉も使用して単語だけで膨大な厚みとなった言葉をシステムは許容していく。

 時に文字で表現し、時に音で表現し、時には絵ですら表現し、さらに映像も利用して。

 儘はシステムで世界を創世する為に容を整えていく。

 この世界での言葉は事物そのものだ。

 それを定義する為に、儘は記憶にある物を次々とシステムに送り続ける。

 ここで一つの言葉を取り出してみよう。


 言葉

・ことのは

・ことば

・言った事を葉にしたためたもの

・言葉の意味は一定ではない

・常に変遷している

・時代によって意味が変わる

・個体によって意味が変わる

・家族によって意味が変わる

・地域によって意味が変わる

・国によって意味が変わる

・階によって意味が変わる

・意味が変わらないこともある

・ストラトゥムカルパーテルミヌス内で意味が理解できないことは無いが、行った側の意味と聞いた側の意味が同じとは限らない

・ストラトゥムカルパーテルミヌスで力に容を与える

・容れ物である

・方向である

・頼りないもの

・頼りになるもの

・絶対服従

・絶対不服従

・従える

・従えられ得ない

・強大

・虚弱

などなどなど、儘は記憶にある限り思いつく儘に言葉を嵩ねて言っている。

 そして、言葉は嵩ねるほどにその効力を高める、内包する意味により様々な解釋が出来るようになり、一つの言葉だけで様々な用途として使用できるようになる。が、それを十全に扱うのはそれと比例するように難しいものになっていった。

 だけれども、儘はそんなことはお構いなしに続けていく、ひたすらに続けていく。

 こうして、様々な葉が用意されていった。

 そして、この事物という葉はシステムを介して世界を構成する最小の情報となっていき、これを集め、束ね、綴り織りなしふみとすることによって、さらに精緻に世界を彩る。

 


儘言理之物事第二之一書ままのげんことわりのぶつじだいにのにしょ言葉成三業ことばなすさんごう


 げんは誓い、言は刃、言は罪。

 言葉を成すのは三業さんごう身業しんごう口業くごう意業いごう、動き、結果を招き、これらを意志の下に。

 三業を以って誓いを立て、刃をかざし、罪を負う。

 言葉によって善悪は定められ、世はそれに縛られる。

 縛りとは誓い。

 言葉によって容を切り取られ、世はそれに削られる。

 削られることにより容を成す。

 言葉によって罰せられ、世はそれに服される。


 うんうん、いいねいいね~、こう厨二心を刺激される感じの文章だ。


 儘は自分がシステムに刻んだ言葉をみて自画自賛、満足といった心持で何度か頷きを入れながらも、その想像を止めることなくシステム構築に勤しんでいる。

 この世界に於ける三業とは、身振り手振り等の行動から、音から、言葉を為し意志をもって力のある言葉へとすることを記したものである。



儘言理之物事第二之二書ままのげんことわりのぶつじにのにしょ言葉成四力ことばなすしりょく


 言葉は力、言葉は縛り、言葉は誓い。されど言葉を発したのみでは力は持たず、ただ容があるのみ。

 三業をもって容を成し、そこに力を込めよ。

 生じる光子、確たる聖子、虚ろう魔子、想う念粒。

 光子、聖子、魔子、念粒。これら四つの力を注ぎこめ、力ある言葉へと至らせろ。



儘言理之物事第二之三書ままのげんことわりのぶつじにのさんしょ言葉変物ことばがわるもの


 移ろうものを確たるもので包むことで物が生じるこれを魔素という。

 魔素は力ある言葉を受けて変容する。

 世界を彩るものとなる。

 この彩りこそが私の望むもの。 


 システムは儘の言葉により、世界へとどのように影響を与えるのかを理解していく、システムにとって儘から生じる言葉とは福音だった。伽藍洞だった自分に意味を与えてくれる絶対的な存在。

 まさしく、崇拝し崇高し畏敬の念を持った存在だ。

 そんなシステムはその思いを受けて、この思いを伝えるべく行動をしていく。


 ストラトゥムカルパーテルミヌス、四神が管理する四つの階層からなるこの世界は、全体へと影響を与えるシステムを儘が構築し、それを受けて四神はそれぞれの階層を管理している。

 それぞれは裁量権を持たされ、階層の在り様を決めていく。

 四神はその名に因んだ方向性で階層を造り込んでいった。

 たかねは無慈悲なる宇宙を。

 たかすは自由なる空を。

 ただくには豊穣なる大地を。

 みなみは慈愛なる海を。

 海は生命を生み慈しみ、大地は恵みをもたらし育む、空は寛容し更なる高みえと至らせ、宇宙は試練を与える事だろう。


 現在生命誕生の場となる第一階層第一層第一階では、念粒が適度に注ぎ込まれており、神々は今か今かと生命誕生の時を見守っている。

 他の階層は今のところ出番はまだ先なので、他の階層の管理神も一緒になって観測を行っている。

 そんな、神々が見つめる先で注ぎ込まれた念粒は、攪拌され水中を流れていたり、場所によっては滞留したりしていた。

 さらに、この階には魂が発生するための因子も含まれている。

 そうした環境の中、ミトロジア紀1,045年・世界節271,832,303年、新しい魂が生れた。

 これを皮切りにしてか、続々と魂は生まれてくることになる。

 生まれた魂は海を漂いながら、注ぎ込まれる念粒によって力を蓄えていく。

 では、これから先はここで最初に生まれた魂にスポットを当てて、物語を進めていく事にしよう。


 素の魂

素と魂の言葉からなる物。

まずは素の言葉から説明していこう。


 素

・もと

・す

・そ

・しろ

・初め

・根本

・原料

・元のままの

・本来備わっている特徴

・昔

・以前

・もとより

・前から

・初めから

・前もってする

・白い

・常

・いつまでも変わることなく同じ

・日頃

・平素

・本当

・いやしい

・身分が低い

・考え方がしっかり出来ていない

・行動がしっかりと出来ない

・内容が伴っていない

・頼りとする

・根拠とする

・何も加わっていない

・程度が普通の状態をはるかに超えている

・積み重ねた肉片

・太陽

・より糸

・太陽にほした肉

・繭から紡ぎ出した白い糸


 魂

・こん

・たましい

・たま

・みたま

・もと

・生物の体の中に宿る

・心の働きをつかさどる

・心の活動を生み出す

・気力

・大事なもの

・気構え

・思慮

・素質

・才能

・刀

・心

・思い

・気持ち

・雲が立ち上る

・異形の頭部を持つ人

・めぐる

・死者

・休まず


 これが素と魂という力ある言葉を構成している意味だ。

 さらに、ここに最初にとつくと。


 最

・さい

・もっとも

・も

・いえ

・いろ

・かなめ

・たか

・たかし

・まさる

・ゆたか

・よし

・一番

・第一

・一番優れている

・大切な部分

・要所

・締めくくり

・すべて

・合計

・おおかた

・大部分

・集まる

・集める

・も

・さらに

・また

・頭巾

・左耳

・右手

・戦争

・殺す

・敵

・首代わり

・とる

・つまむ


 初

・しょ

・そ

・はじめ

・はじめて

・はつ

・うい

・そめる

・うぶ

・のぶ

・もと

・はじまり

・起こり

・昔

・もと

・根本

・幼い

・慣れていない

・若々しい

・新鮮

・期間や時間の最初の部分

・衣服

・刀

・襟元

・裁断

・作業


 最初の素の魂、三業のどれ一つも為し得なかったこれに、儘によって解釈が行われる。


 最初の素の魂

一番初めに起こり若々しい心の動きを司る大事なもの。

敵を見つけ刃を持ち休まず殺し集め、才能を立ち上らせていく。


 これが儘によって最初の魂に与えられた解釋。

 すなわち力、すなわち業、すなわち誓い、すなわち罪である。

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