ドォウムム紀ー世界節2,280,000年から

第1話

 儘によってこの小さな世界ストラトゥムカルパーテルミヌスに生まれた、四柱の子供の姿をした管理神達。

 彼らにはそれぞれたかねたかすみなみただくにと名を付けられ、各階層のシステム管理が任せられることになっている。


「「「「あー!ずる~い!」」」」

 大きな声でそう言いつつキャッキャと走り寄り、寄り添っている儘と蒼にダイナミックに突っ込んでいく四神ちゃん達。

「お!っとと。」

 それを危なげなく受け止め幸せを満喫する儘。

 左腕に蒼、脚、背中、胸、背中にそれぞれ引っ付いた四神達は「えへへー」とニコニコしている。

 蒼もそんな様子を、微笑ましく眺めより密着度を高めていく。

 こうして、家族としての感情を得るに至った、神たちはこの幸せを感じながら世界の管理の仕事をこれから熟していく事になる。

 儘はこの時間を堪能しながらも、それと並行してこの世界の根幹となるシステムを構築していった。


 世界のシステム、この場合の意味合いは世界の理と言ったとこだろう。

 数多ある世界で採用されているのは自然の理と言うもので、これは儘がかつて居た世界でも採用されていた、というかその世界が発祥の世界だ。

 この物理法則によって成り立っている世界は、非常に複雑な理となっているが、この理は非常に優秀で、一度稼働させればほぼほぼ管理神の手を煩わせることなく、世界は廻ることになる。

 ただ、余りにも複雑すぎるために、何か有ったときにいざ手を入れようとするとなかなかに難儀な事態になってしまうのが、欠点と言えば欠点と言えるだろう。

 さて、創世神の間では、この自然の理を使用して世界の役割を満たすのが、この理が神々の間に浸透して一般的となったわけだが、儘はそれを使わずに一からシステムを構築していく事にしている。

 その第一歩として、今回は根幹となる基幹システムを構築した。

 とは言えだ、一から世界の理を創造するのは、儘の想像力でも非常に難産と言えるので、少しずつ具合を確かめながら、今後も創っていく事になる。


「さて、こんなものかな?」

 依然として、幼子まみれとなっている儘が徐に声を出す。

「出来ましたか?」

「ああ~、とりあえずと言った感じだけどね。システム周りは様子を見ながら構築していこうと思ってるから、気長に気長に。」

「「「「お仕事ですか?」」」」

 抱きついた格好で首を上向きにして、ぐりぐりと儘に押し付けていた頭を儘の顔の方へと向ける四神達。

「そうだよ、本格的な稼働はまだまだ先になるだろうけど、とりあえずこのシステムの管理よろしく。」

「「「「解りました!」」」」

 口調こそ丁寧なものの元気いっぱいに応える。


 今回生み出したシステムはエネルギー回収と、それを円滑に行う為の循環を担うものだ。

 これは、創世神達が派遣される理由にもなるシステムだ。

 世界とは大規模なエネルギー増殖炉と思っていいだろう。神力を得るためにアダムとエヴァが推し進めている。

 因みになぜ神力を直接増やしていないかという点だが、答えは簡単で増やせないのだ。

 神力は非常に安定している、いや安定してしまっている物だ。故にそれを基にして何かを生み出すことは出来ても、絶対量を増やすことが出来なかった。

 アダムとエヴァは、これの対策として神力を別の物に変換してから、増やす手段をとることにした。

 さらに、増やす効率を上げるために様々な方法を模索した結果、世界と言うエネルギー増殖炉を移用するに至っている。

 ただ、そこは悠久の時の流れの中で生きている神と言う存在。暇を持て余す神が現れ始める、そうして単なる増殖炉としての役割だけでなく、色々な世界が生れていく事になる。

 それが、かつて儘が居た世界で在り、これから儘が創造する世界だ。


 世界は暇を持て余した神々の遊技場になってしまっていた。


 そんな訳で、儘もまた自らの趣味を前面に押し出して世界を創造することにしている訳だ。

 とは言え、元々のエネルギーを増やす為の役割を蔑ろにしていい訳ではないので、回収システムを最初に構築した訳である。

 そして、取り合えず出来上がったシステムを四神達預かりにし、管理を任せた儘は四神達が預けられたシステムを携え、それぞれの担当階層に向かうのを眺めつつ、次の行動に移る。

 因みにこのシステムはこの段階で神力1で生み出されたものだが、今後世界の拡大と共にその影響範囲は拡大してく為に、都度神力を投入することになっている。


 さて、これで世界として最低限必要な条件は整ったわけだ。ここからは少々趣味に走らせてもらう事にしよう。


 儘は、心の中で独り言ちつつ、思いを走らせていく。

 蒼はそんな彼の傍で寄り添い続けている。


 では、儘の趣味全開の構想を纏めたものをここに記して行こう。


・この世界は力ある言葉によってその有り様を決める。

・この世界にある物は、レベルとスキル等によって強さや特性を持つ。

・この世界の空間は階層とマスによって管理される。

・この世界の時間はターンによって管理される。


 そしてこの構想により生み出すシステム・・・世界の理の名を儘はこの様にした。

 仮想リアルタイムターン制ロールプレイングゲーム風システム。

 「VRTTRPGヴルツツルプグ


「・・・っと、言った感じの世界にしようと思うんだけどどうかな?」

「この世界は貴方のものです。好きなようにすればいいと思います。もちろん私も。」

 そんな事をしれっと言いつつ、儘への依存度を上げていく蒼。

「そうかい?まー、今まで私が造ってきたのは、基本的には既に私が知識として得ていたものを、参考にして生み出した物ばかり。だけど、これから創っていくのは、元となる物こそあれど、一から創っていくものだ。だから、これから一緒にやっていこう。」

「はい、貴方。」

 そう声を掛けられ熱い眼差しを向けつつ応えながら、儘の隣に立ち続けるべく決意を新たに胸に秘める。

「さて、世界の構築にあたって、その土台となる時空間は既にある程度用意しているわけだが、これらにももちろんシステムは適用してく、というか、ここを実験場としていく事になる。まずは、他の世界で言うところの物理法則に当たる部分、力ある言葉の構築をしていきたいんだが、その前に新しいエネルギーを創ろうと思う。」

「新しいエネルギーですか?」

「そう、ロールプレイング風というからには、魔法という現象を再現したいからね、その為の物だ。」


 儘は自らの考えを、蒼に聴かせていく。


 まずこの世界で新しいモデル位階第三位と四位に相当する、エネルギーを生み出す。

 この生み出すエネルギーはそれぞれ発生の特性を持つ第三位階光子、第四位階では確定の特性を持つ聖子と変化の特性を持つ魔子だ。

 この三つのモデルエネルギーで、この時点では時空間を除くあらゆる物を構築する。

 変化の特性を持つ魔子の状態を変化させ、その状態を聖子によって確定させる。これによりこの世界での物質を生み出し、魔子を変化させる為に力ある言葉を用いる。

 そして、より上位の存在として光子を使用する形だ。

 また、変化していない魔子と聖子を結び付けたものを魔素と呼称し、世界に遍在するエネルギーとする事。


「そして、スキル等は変化した魔子を確定させ、個体毎に定着させる事によって、発動できるようにして、レベルは内在する魔子や聖子、光子の総量ってところかな?」

「なるほど、そうなると時間や空間を操作をするには相当レベルを上げていかないと出来ない事になりますね。」

「あ~、それね。今は魂力で時空間を創っているけど、これは安定した場を確保する為にだからね。これから先、時空間は光子で構築する予定だよ。」

「それでも、相当レベルを上げなければ時空間に影響を与えられないですね。」

「だね、そこは今後バランス見ながらどうするか決めていこう。で、だ、これから構築する時空間なんだけど、今まで創ってきた魂力の時空間の内側に作るよ。それで、その辺りまでこちらで作業するのも煩雑だから、この仕事はこれから生み出す存在に任せよう。

「それは、独自の裁量権を持たせた存在ですか?」

「いや、これは光子で構成する予定で且つ、数をそれなりに用意するから、君の指揮下に置こうと思ってる。」

「解りました。では、その管理等は全てこちらの判断でしてもいいのですか?」

「それでお願い。よほどのことが無い限りは事後報告でいいからね。」


 儘と蒼はこれからの行動を決め行動を開始した。

 まず、蒼の方は新たに光子による時空間を創造する役を担う、存在を生み出し始める。これらは後に蒼の天使と呼ばれることになる存在だが、今の段階では単に天使と呼ばれている。

 そして、儘の方はと言うと。


「悪魔なのにその体は光子とか、笑えるよな~。」


 悪魔を生み出していた。

 この悪魔だが、主な役割はエネルギーの回収と調整役だ。

 これらは四神達のサポートをさせるべく生み出している。

 生命体にとっては、自らがため込みレベルとして認識されている物を、回収するような存在になる。よって彼らは死神として認識されることになるのだが、この話は先の天使と同様にまだまだ先のお話である。


「こっちは出来たよ~?そっちは?」

「こちらも出来ました。」

 そこには4体の悪魔と天使が居た。

「じゃ、8体は与えられた役を熟すように。」

 悪魔と天使は、造物主の言葉、当人たちにとっては福音とも呼べる音を貰い受け、その身を幸福に包まれながら行動を開始する。

 悪魔4体は四神達の元へ行き、天使4体は新しい時空間を創り出すべく行動を開始した。

「さてさて、これで時空間の構築は光子へと移行するから、かなり魂力に余裕が出来るな。」

「そうですね、その分の魂力はどのような用途に?」

「当面は備蓄しつつ私たちの強化と、さらなる増殖炉創造ってところだね。」


 今回この8体を生み出す時に使用した魂力はたったの2だ。

 光子に換算すると200,000になる。一体辺り25,000になる訳だ、さらに時空間は1マス辺り光子1,000で作られている。今までの湯水のごとく使用していた魂力の消費が、ここにきて格段に抑えられることになった。

 これにより、世界の大きさはものすごい速さで膨れていく事になる。

 そして、悪魔と天使も儘と蒼によって次々に生み出されていく。


「それと、今後構築するシステムへも回すことになっていくから。最初の方は増殖炉の数を増やすことを優先していこうか。」

 儘により直近の行動を示唆された蒼は自らが与えられた役割と、裁量権でどのように行動をしていくかを瞬時に構築した。

「それで、蒼には任せてある仕事と並行して、私と一緒にシステムの構築をしてもらうよ。」

「はい解りました。」

「でだ、現状有るシステムはエネルギー回収と循環用のシステムがある。そして回収すべき各種エネルギーは、これから創るシステムでもってこの世界に色々な物をもたらす。」

 そう言いつつ儘は自身が考えている構想を話していく。


 まずレベルについて。

 このレベルと言うのは保有しているエネルギーの総量を表すもので、さらに言えばここで言うエネルギーとは、力ある言葉によって変質させられた魔素になる。魔素に関して細かく言えば聖子と魔子というエネルギーになるのだが。

 そして、この変質した魔素とはつまるところスキル等の技能になる。

 つまり、この世界は保有しているスキル等からレベルが算出される仕組みとなる予定で、レベルが上がって強くなるのではなく、能力があってレベルが評価される世界と言うわけだ。


「こんな感じで、普通のRPGのゲームではレベルありきで能力が上昇してく訳だけど、ここでは能力・・・エネルギー量でその強さが判断されるもの。そして、レベルによって強さを評価するという形になるね。」

「それですと、レベルという表記は能力の評価としての側面が大きいという事ですか?」

「まー、システムの影響下にあるもの達にとってはそういうことになるね。でだ、レベルは私たちサイドの判断材料になる。」


 レベルが上昇する。これイコール神へとより近づいてく行為になる訳だが。

 これを今後時間が経過によって、レベルが上昇していった存在が増えて行った際を考えた場合、どうなるのかは想像するに容易いだろう。

 そう、神が量産されるという事になる。

 ただ、そう簡単に神と言う存在を増やすのは、彼らとしては少々問題があったりもする。

 不用意にそのような存在を増やしてしまえば、今後問題行動を起こす神が現れる可能性がある。というか、そのようなケースが実際に起き、大問題となったことがあった。

 そのときには、最上神であるアダムとエヴァが出張ってくる事態にまで発展してしまった。

 このようなこがあり、神格化と言うものは創世神がコントロールしている案件である。


「このレベルは不用意に神と言う存在を生み出さないために、こちらでコントールするための目安とする。」

「なるほど、情報にある増長した一部創世神による、戦争発生を回避するためにですね。」

「そういう事。」


 過去に起きたこの武力闘争は、創世神同士の直接戦闘だけでなく、巻き込まれた創世神が管理する世界の者たちに迄巻き込まれて、戦闘という段階ではなく、世界をまたにかけた、次元戦争と呼べる状態へと発展しまったのだ。

 ただ、これに関しては先にも述べた通り、アダムとエヴァの介入により戦争は終結し、戦争を仕掛けた側の粛清も終わっている。

 ここで次元戦争の話をすると、かなり長い話になってしまうので割愛をする。


「で、篩にかける方法は説明した通り、実際にどのような手段でコントロールするかについてだけど、これは単純、能力上昇するための難易度を上げていく。」


 これは簡単に言えばレベル、この世界の場合だと、正確にはスキル等の向上に際して必要なエネルギー量を増やしていくという事だ。


「それはつまりスキル向上の為に必要となる、エネルギー量を増やすという事ですか?」

「そう、それと並行して取得する為に条件を設けたりもしようと思っている。」


 取得条件に関しては、前提のスキルを獲得し、○○以上のレベルであるや、称号などの有無によって、スキル等の解放をこの時の儘は想定している。


「そして、最終的に神格化してシステムから解放させるか否かは、私たちが判断をする。」


 実際、儘自身もかつての世界での理に則って、篩にかけられ者たちの中で、最後まで残りここで創世神として活動している身である

 与えられた情報もあるし、実際にそれに対して対処が必要なことも理解している。

 ただ、彼は結構なゲーマーなのであった。コツコツとレベルを上げて能力を上げていく快感を知っている。故のこの世界の理、故のこの世界での神格化する条件、というわけだ。

 それで、少し話を戻してスキル向上に必要になるエネルギーの増大をどのように行うのかだが、これは単純だ。

 スキル等は上昇時にシステムを介して、より多くエネルギーを回収するだけである。

 レベルの数値により、レベルアップに必要なエネルギー量の調整を行われた状態で経験値を溜め、さらに特定の条件をクリアする。これらを満たすことによって初めてスキル等は獲得出来たり上昇する。


「とまあ、こんな感じなんだけど、意見は何かあるかな?」

「そうですね。神格化の条件設定自体は、他の世界でも行われていますし、神格化を施すかどうか、これも他の世界同様に創世神の管轄とする。今まで実際にやっていることなので特に問題は無いかと思います。後は実際やってみて何かあれば都度対応していくしかないでしょう?」

 所謂、柔軟かつ臨機応変に対応するというやつだ。

 創世神や管理神など、割合こういった考えのものが多い。これは持てる力が絶大故にだろう。


 こうして、この世界の骨子たるシステムが一応の形ではあるが、出来上がったのであった。


ヴルツツルプグの理


・リカバリーアンドサーキュレイションシステム

・マイティワードシステム

・レベルシステム

・レースシステム

・ジョブシステム

・スキルシステム

・タイトルシステム


 ストラトゥムカルパーテルミヌスに適用されるべく、この理は速やかに四つ子の管理神にも伝達された。

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