物語の始まりはいつも


ピコン、ピコン、ピコン、テレッテレッテレ

「you WIN」

いつもの画面。この画面を何回見ただろうか。今や簡単すぎてヌルゲーとなってしまったこのゲームも見納めとなりそうだ。最近は徹夜でもゲームをしていてほんとダメなやつでこのただのゲーマーそれが郁昌。年齢17歳、趣味ゲーム、職業は学生それでステータスは「……ZZZ」と2度寝を始める。そんな廃人と呼ばれてもおかしくないような人であった。すると

「お兄ちゃん! もう朝ごはんの時間だよ!ほら降りてきなさい!」

と声がする。妹の瑠奈(るな)である。彼女は俺より1つ年下で最近アート部に入ったそうだ。 とぼとぼと降りてきてもなんやかんや妹は待っていてくれた。そしてゆっくりとドアを開ける。

「お兄ちゃんまたクマあるじゃない! またゲーム?」

「当然だ。 ゲーマーたるもの当たり前だ。」 「ふーんそっか。なんでもいいけど体調は壊さないでよね。」

「お おう」

少し照れる。こんなダメ兄の体を心配するとは。瑠璃はなんやかんや世話焼きな女の子だった。俺が例えゲームに没頭していてもご飯を廊下に置いててくれる。

「おっ今日も美味しそうだな」

朝ごはんが始まった。

「料理は女の子ならできて普通なんだから!」

と自慢気に言った。正直ほんとに美味しいのだ。

「お母さんっぽくなってきたな瑠璃。」

「そう よかった…」

彼らには身寄りがない。お母さんとお父さんは同じ職場で知り合っているため、いつも一緒に帰ってきたが、ある日を境に帰ってこなくなった。その知らせを聞いた時、瑠璃は泣かなかった。悲しくなかったのか。郁昌はそうじゃないことを知っている。震えていたのだ。にもかかわらず泣きじゃくっていた俺を抱きしめていたのをはっきりと覚えている。妹がいなかったら本当にどうなっていただろう。

しかしこの頃だろうか。郁昌がこんなにもゲームにやつれてしまったのは。そのため2人で過ごし2人で暮らし始めた。ずっと一緒なのだ。

「瑠璃、黙ってないで暖かいうちに食べよう?」

「そうだね。 えへちょっと思い出してたや。気にしないで」

そして彼ら兄弟は仕度を始めた。妹の制服はセーラー服でありかなりレベルが高い制服だ。まあギャルゲーをやっている郁昌個人の意見だが。そしていつものように家には1人の来客者が来た。

「おはようございます〜」

「おはよう! 花鈴(かりん)ちゃん!いつもごめんね〜遅くなって」

「全然だよ〜 あ お兄さんおはようございます」

「おう」

俺は気の無い返事をしてしまった。 瑠奈がこっちを睨んでいる気がして怖い。妹からあまり話そのものを聞いてないので彼女はどのような間柄かわからないが仲がいいのはなんとなくわかった。

道中はいつも1人だ。主にゲームのことしか考えてはいない。次になにを買おうだどかそんなことしか考えないまま学校に着く。 勉強は中の上くらいは出来るつもりだ。 瑠奈には負けてしまうがそこそこ出来るはずだ。俺は基本1人で学校を過ごす。 友達と呼べるような人はおらず、特に変わらない平凡な日々。でも彼は遅刻やさぼりが一切なかった。まあそこそこ優秀な人である。いじめられることはなかったものの彼に声をかけるものはいなかった。 つまらない学校も終わり今日もゲームの日々だ。 帰ったらなにをしようか悩ましいところだ。 帰ったらうるさい妹が仁王立ちをしていた。

「お兄ちゃんったらまたゲーム買ったでしょ! 届いてたよ。」

と少し怒り気味に言っていた。

「ああ ありがとう。」

とお礼を一言言って自室に上がった。

「ああ これ面白いんだよな。 魔法を使って誤った人達を倒して行く本格派RPGか」

そこから彼はご飯にも気づかないほどに熱中した。その一階したの瑠璃は今日も寂しくご飯を食べるのだった。そしていつも通りの日常が過ぎていった。

ーー午前4時ーー

「ふわぁ。」

と眠たい目をこする。どうやら眠っていたようだ。ゲーム画面は途中で寝てしまったからか主人公が倒れている。ラスボスで選択を誤ってしまったようだ。

「やれやれ。トイレにでも行くか。」

廊下をとぼとぼ歩いているとなにやら話し声が聞こえて来る。

「これで こうしよう。」

「いいね」

ーー「誰だ!」ーー

俺は怖かったが少し勇気を出して言ってみた。瑠璃が起きる気配はない。話し声は収まったようだが声のする方へゆっくり近ずいて行く。その時郁昌の中では恐怖が渦巻いていた。しかし唯一の瑠璃のことがあってか体は勝手に動いていた。ちょうど廊下の角を曲がったその時 背中に水のようなものが垂れ振り返って見ると俺はこめかみに銃を向けられていた。

「悪いな。少し我慢しててくれ。」

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