第16話 ロリコンの非日常な一日

 小学生は最高だぜ。

 ある時、とあるロリコンはそんな迷言を生み出した。

 そしてその迷言は本来の意味やそれとは違った意味など様々な形で広まっていった。

 元々は小学生の吸収速度や成長速度などを見てロリコンコーチやロリ王様が言ったのだが、現在では尊いシーンや小学生ならではの魅力を感じた時に使われることが多い。実に素晴らしいことだ。

 僕としてはどちらの意味でも使っていきたいところだが……それを社会で言ってしまった場合社会的な死はま逃れない……。

 だがあえて言おう! 小学生は最高であると!

 さあ高らかにロリコンコーチやロリ王を見習って、それではみなさんご唱和ください!!

 『まったく、小学生は最高だぜっ!!(みんなの声)』




 ここは築二十年くらいだろうか、新しさと共にある少し懐かしいような雰囲気がある……わけでもない、どこにでもある二階建てアパートのとある一室……まあ僕、湊拓海みなとたくみが前に住んでいたところなんだけど。

 早めの梅雨明けも終わり暑さがどんどん増していく七月の頭、アパートの一室には三人のロリコンがいた。


 「やっっと終わった〜……」


 最後の一枚のイラストを描き終え机に突っ伏す僕の親友でありサークル仲間のほしみつ先生こと星川充ほしかわみつる


 「はい、お疲れ様」

 「ありがとう拓海……」


 コップ一杯に入った冷えた麦茶を一気に飲み干す。


 「あははっ、これで今年の夏も無事なんとかなりそうだね」


 そう言って愉快そうに笑う充と同じく親友であり、同じサークルメンバーのあかねん先生こと柿本明音かきもとあかね

 流石に充のイラスト集に対し危機感を感じた僕達は絵は描けないものの、いつもの如くイラストのアイディアを出したりご飯を作ったりしていた。

 充は一度こうなってしまうと、休みの日は一食も食べない時がある。前にそれで倒れられて以来、こうなった時は僕達が色々と面倒を見るのがお約束になっていた、


 「それにしても今回はやけに時間がかかったねぇ〜」


 柿本は完成したイラスト集を眺めながら呆れたような顔をしていた。


 「ああ……今回は本当にやらかした……」

 「充が追い込まれるのはいつもの事だが、ここまでなのは初めてだよな」

 「何度も言った通りお前の完成度が高すぎたせいだぞ拓海……」

 「そんな目で見られても困る」

 「私も見たよ湊君の作品。たくみな先生の作品の中で史上最高の出来じゃないの?」

 「そうだな。今の僕にあれ以上のものを書け……なんて言われても書ける気が全くしないよ」


 僕は肩をすくめる。


 「それにしてもあの作品はどうやって書いたのか物凄く気になるくらいの出来だったぞ、いや本当に」

 「うんうん、それ私も気になるよ〜。だって今までのたくみな先生とは全く違う感じだったもの」

 「どうやって書いたって言われても普通に書いてたらこうなったとしか言えない」


 そこに付け加えるとしたらロリに応援された……というだけだが、そこはいう必要はあるまい。

 だってこいつらは言わずもがな僕と同じ変態紳士ロリコン同盟のメンバー……万が一にでも僕が女子小学生ながら数億円を軽く動かせるお嬢様である朝武愛莉ともたけあいりと婚約をして同棲までしているなんて口が裂けても言えない。


 「もしかして本当は小学生と一緒に住んでるんじゃないの?」

 「ッ!?」


 そんな事を思った矢先、いきなり確信をつくような発言が柿本から飛び出し身体がビクッと震える。


 「あはは、そんなことあるわけないだろ柿本。第一僕には小学生の知り合いなんていないわけだし」

 「そうなんだけど〜。あの作品を見たらそう思わずにはいられないっていうか……あっ、こんなところに女子小学生の髪の毛が!」

 「えっ、あっ、マジで!? あ、いや、でも掃除したからないはずだぞ?」

 「「えっ?」」

 「あっ……」


 僕はその時、やってしまったと激しく後悔した。

 だって今さっきバレないように……って考えていたのにバレたような事言われたらこうなるだろ? わかるよね?

 だが事態は僕の予想より酷かった。

 どうしたことか僕の前には妙に殺気だった充と柿本。


 「おい、柿本……わかってるよな?」

 「もちろんだよ星川君……マル秘のブツを──してでも奪えばいいんだよね?」

 「今なんか不穏な言葉が聞こえた気がしたんですけど!!?」


 というかマル秘のブツって何!? そう聞きたかったのだが、二人の様子を見た感じ答えてくれそうもないしというか今にも襲いかかってきそ──


 「「成敗!!」」

 「うぎゃあああああああああああああ!!!!」


 こうして僕は二人の同志ロリコンの手によってあえなく御用となった。



 そして捕まった犯人のスマホは取り上げられ、中身をチェックされることになった。

 警察官(柿本)曰く、浮気チェックはスマホからということらしいがそもそも誰が誰と浮気したのか疑問である。

 しかし今の僕はロープで亀甲縛り状態なうえ、どこから持ってきたのか猿轡さるぐつわまでされているので発言する権利すらないようだ。

 でもまぁスマホに関しては恐らく大丈夫であろう。僕のスマホにはパスワードが仕掛けられているので簡単には解けないはず。

 万が一何回かミスって数十分開かなくなっても大丈夫だろう。

 ちなみに数字のパスワードで『5654』だ。どうしてその数字なのかはフリック式のキーボードを使ってる人はなんとなくわかるだろう……そう、『Loli』を打つ時の数字だ。

 これならば簡単には開けられまい──。


 「確かマル秘のブツのパスワードは『5654』ですよ星川さん」

 「ありがとうございます。では早速パスワードを解いてみましょうか柿本くん」

 「はい、星川さん!」


 と、まるでどこかの刑事コンビのように僕のスマホのパスワードをいとも簡単に開けてしまう。

 というかどうして柿本が僕のスマホのパスワードをしっているのか問いたいところだが僕の口には以下略。


 「星川さん、見つかりましたよマル秘と頻繁に連絡を取っている女性の名前」


 そう言って柿本はあえて僕にも見えるようにトークアプリ、ライネの画面を開く。


 「相手の名前は朝武愛莉、十一歳、小学生ですね。どうやらマル秘とは親しい仲らしく頻繁に連絡を取り合っているみたいです」

 「なるほど。少しお借りします」


 そう言って充は僕のスマホのトーク履歴を読み上げ始める。


 「一番新しいのは今日の朝ですねぇ……。内容は『愛莉、終わりそうになったら連絡いれるからその時はお願いします』。それに対し小学生は『わかりました。ではその連絡が来たらいつも通りに』という返信が来て終わっています」


 何かを推理しているような口調で読み上げながら僕の周りを歩く充。


 「そしてその前、つまり昨日の内容は『今日のお夕飯はカレーですが、他に何か食べたいものはありますか?』それに対しマル秘は『僕は大丈夫だよ』。なんだこの夫婦みたいな会話ぁ!!!!」


 そう言って充は僕に投げつけるような勢いでスマホの画面を見せつける。

 そこには少しばかり甘々な会話や、充の言う通り夫婦みたいな会話が映し出されていた。


 「ではここで『もう終わったから迎えに来ても大丈夫だよ♡』と打ってみましょう」

 「ッ!!? もがが、もがー!!」


 まずいまずい。それ打ったら本当に来ちゃうから!!

 必死に抵抗するが思いのほか縄の締め具合はきつく、運動部に所属していない僕には到底解けないものだった。


 「おっ、返信が来ました。『今兼元さんと天海さんも来ているので一緒にお邪魔しても宜しいですか?』『はい、よろしいです』これで完璧っと」


 完璧じゃねぇよこの野郎!!

 こともあろう事か、愛莉の親友であり同じくお嬢様である兼元紗々かねもとささ天海奈穂あまみなほの二人が一緒だったなんて、想定外すぎる。しかもよりにも寄ってこちらに来るらしい。

 逃げて、三人とも超逃げて!!


 「む、また返信だ」


 こ、今度は何なんだ。僕は若干怯えながら充が読み上げるのを待つ。


 「えーっと『先生お疲れですよね? それで疲れた時には甘いものが良いと聞いたのでこの前貰ったチョコを持っていきます』くぅー! なんていい子なんだ朝武愛莉ぃ!! あいわかった! 『ありがとう愛莉。お兄ちゃん楽しみに待ってるね♡』」


 なんてモン送信してるんだ!!

 これじゃあまるで僕が言ったようじゃないか。


 「柿本くん、三人のロリ──お客様をもてなす準備をお願いします」

 「わかりました星川さん!」


 そう言って柿本はうっきうきで冷蔵庫を開ける。


 「ほ、星川さん!」

 「どうしましたか柿本くん!?」

 「大変、変態です! 冷蔵庫の中、麦茶しかありません!!」

 「な、なんてことだ!? こうなったら仕方あるまい……麦茶でもいいからとにかくおもてなしをしなさーい!!」

 「あっらほらさっさー!」


 刑事コンビはどこにいったんだよとツッコミを入れたくなるほどの展開。

 いやそんな事より今は三人の我が天使ロリ達の事の方が大事だよな。

 とは言っても……。


 「もがががががーーーっ!!!(こんなのどうしろって言うんだーーー!!!)」


 僕の叫びは虚しく終わり、数十分後には予定通り三人のロリ達が僕の家にお邪魔することになった。

 …………え? その後どうなったか?

 お察しの通り興奮した充と柿本のせいで大変なことになりました。でもまぁ、意外とロリ達は楽しそうにしていたし、これはこれで良かったのかなと思う湊拓海でした。

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