第12話 ロリコンとロリコンと体験入学
よく「愛は地球を救う」……などと言われているが、本当にそうだろうか?
ふとそんな事を思ったことがあるアナタ! そんなアナタにその答えを教えましょう!
答えとは「愛は誰にでも等しく与える事は出来ないから万国共通かは微妙だけど、ロリに対する愛は万国共通だから結論的にロリは世界を救う!」
『ALL FOR LOLI LOLI FOR ALL』
〜みんなはロリのために、ロリはみんなのために〜
何年経っても変わらない愛情。
普通ならそれは難しい……だけど、それが出来る!
そう、ロリっ娘ならね♪
byロリコン同盟
しおり市の外れにある山の奥のまた奥…………無知識で入り込もうものなら確実にここにたどり着くまでに命果ててしまいそうなくらい奥の場所に、一ヶ所だけ森が開けた場所があった。
ここに来る途中どこを見ても木、木、木……本当にこんな先にあのしおり女子学園があるのか? と、何回思ったことか。
そんなところにひっそりと……でも大きく聳え立つしおり女子学園。
本来ならば男子禁制で、男なんかが入り込める場所ではないこの地に僕は降り立った。
「んーーっ!!」
車を降りて背を伸ばす。
外は太陽がギラギラと照らし、暑いはずなのだが森の中という事もあってかその暑さはほとんど感じられない。
「お疲れ様です、
「うん、
黒塗りの高級車……ではなく、外見は普通のワゴン車から降りる愛優さん。
お嬢様学校に行くというのに外見は普通の車を使う辺り、知られてはいけない場所なのだろう。
実際、ここは電波は通じるものの位置情報だけは一切取得できなかった。
「……完全に場所がわからないわけか」
僕はスマホを胸ポケットへしまう。
お客として行くとはいえ、一応学校に行くわけなので今日は学生服なのだ。
しおり高校は一応制服というものはあるが、私服登校も可能な学校なので僕はこの制服を着るのは入学式ぶりだ。
その上、休日なのに学生服を着るというのはなんだか違和感があるがこれから行くのはお嬢様学校…………これは最低限のマナーというものだ。
と、その時、校舎からここの制服だろうか、白色を基調としたセーラー服を身に包んだ少女がこちらに小走りで駆け寄ってきた。
「お待ちしてましたお兄様♪」
「
僕達を出迎えると太陽のような笑顔を浮かべる少女。
昨日の水着が大胆だったせいか、今日の比較的落ち着いているセーラー服という服装は少女の印象を変えてしまいそうになる。
「っと、忘れるところだった。これつまらない物だけど」
僕はバッグから箱を取り出す。
この中身は紅茶の茶葉で、ここに来る途中、僕が愛優さんに頼んで喫茶店「アミテ」に寄ってもらいそこで購入したものだ。
あそこの紅茶に関しては前に行った時、愛莉が小さい声で「これは……とても美味しいです」と言っていたので間違いないだろう。
「あら、ありがとうございます♪ これは……失礼します。くんくん……わぁ、紅茶の茶葉ですねっ!」
「うん、口に合うかわからないけど……きっと美味しいと思うから」
「お兄様の選んでくださった紅茶なら間違いないと思いますよ。では、立ち話もなんですしこちらへ」
僕は村井さんの横を歩きながら、普通ならば絶対に入ることの許されない
「こちらです」
整理整頓、そして清掃が隅々まで行き届いている昇降口を抜け、すぐそこにある事務室の横。
プレートには「応接室」の文字が書かれている部屋の前へと案内される。
ちょこっと歩いただけでわかるここと普通の学校の違い。
ここに来る前に学校案内図の内容を覚えてきたが、正直なところ一般の人が一回で覚えるのにはかなり大変なほど広く、部屋も多かった。
小中一貫だからか特別な部屋はそれぞれ二つずつある、しかし武道場や室内グラウンドなどは場所の関係もあり一つしかないようだ。
そして何よりも一つ一つの部屋の大きさがとても大きく、ここまで必要なのかと思わせるくらいで…………。
僕は応接室の前に立ち、そんなことを考えていた。
「ではお入りください」
「失礼します」
僕は開けられた扉に入る。そこには一つの大きなテーブルに、高そうなソファー、そしてそこに座るとても見覚えのある女性…………
「って、
「おはよう、
紛れもなく、我がしおり高校生徒会長の
驚きのあまり、説明を求めるように村井さんの方へと向く。
「ふふっ、驚かれているようですね」
「まぁね」
「まぁ特に隠す事でもないですし、むしろこのためにお兄様に来てもらったようなものなので手短に説明しますね」
すると村井さんはあるプリントをこちらへ手渡す。
そこには大きく『しおり女子学園体験入学』と書いてあり、体験入学者のところには渚さんの名前と何故か僕の名前が載っていたのだ。
「あの渚さんに村井さん、これって……」
「そこにある通りだよ拓海くん。この由緒正しきしおり女子学園の体験入学生の第一期生……それが私達なの♪」
「そういうことです。ですが、ここまで決めたのはいいですがやはり参加するに至って本人の了承は必要かと思い、今回このような形でお呼びさせていただきました」
「そ、そうなんだ……」
まさか僕の知らないところでこんなことになっていたなんて。
そりゃさ、しおり女子学園なんて僕なんかいくら努力したところで絶対に拝むことすら出来ないようなところに体験だとしても入学出来るのはいい経験になると思うよ。
でも本当に男の僕がここに来ていいのか。それで村井さん達の評価が下がらないか……それだけが心配だ。
「……本当にいいんですか? 僕としても嬉しい話だけど、それで村井さんの評価が下がったりするなら──」
お断りします。そう言いかけた時、村井さんは少し嬉しそうに笑う。
「ふふっ、やっぱりお兄様はお優しいですね。普通の人なら何も考えずに頷くのに……自分の心配ならともかく、私の心配をしてくれるなんて」
「でも大丈夫です。こんなことで私の評価は下がりませんし、それにこれはとても大切なことなのです」
「大切なこと?」
「はい。実はこのしおり女子学園は小中一貫校の女子校なのですが、高校のシステムまではないのです」
「それは……まぁそうだね」
「なので高校に行けば共学の高校に行かなければ行けない生徒が出てくるのですが……」
そこで言葉が止まる。
でもなんとなく言いたいことはわかった。
「つまり今回の体験で男への抵抗を無くしたいってことだね」
「はい。ですが流石にいっぺんに何人もの方を入れるのは学園も私自身も納得出来なかったので、男女一名ずつになったのです」
「それで僕と渚さんが選ばれた……と」
だけどまだ疑問は残る。何故僕が選ばれたか、だ。生徒会長である渚さんはわかるとしても僕が選ばれた理由がさっぱりなのだ。
渚さんの指名ならわかるけれど、どうにもそれだけではないような気がした。
それにはきっと僕と愛莉の事を知っていた事にも繋がる気がする。
「それで……僕が選ばれた理由って何かあるんですか?」
うじうじ悩んでいても仕方ない。僕は率直に疑問を投げかける。
「あそっか。拓海くんが選ばれた理由ってまだ話してなかったね」
「そちらの方は私の方から説明しますか?」
「うーん、多分私の方からのがいいかもだから私から説明するね」
「わかりました」
そう言って渚さんはポケットからスマホを取り出し、あるアプリを開く。
「これは……
このアプリは
そのリーダーも渚さんによって選ばれ、僕もその選ばれたリーダーのうちの一人で貧乳派のリーダーのうちの一人となっている。
ちなみにリーダーはそれぞれの組織に三人ずつ設定されていて、貧乳派のリーダーは僕こと『たくみな』、そして『村華』と『ほしみつ』の三人だ。
ちなみにここの『ほしみつ』は言わずもがな
そこで僕はあることに気がつく。
「む、村井さんまでどうしてそのアプリをっ!!?」
思わず大声をあげてしまう。
何故ならこのアプリは変態紳士同盟のリーダーにしかインストール出来ないアプリなわけで……つまるところ村井さんも僕と同じどこかのリーダーということの証明になるのだ。
「そういえば言うのを忘れてたよ」
渚さんは立ち上がり、村井さんの横へと移動する。
「彼女……村井華さんは変態紳士同盟貧乳組のリーダーの一人だよ」
「改めまして、しおり女子学園の総生徒会長……そして変態紳士同盟貧乳組のリーダー『村華』こと村井華です。
「…………」
少しの沈黙。
「うええぇぇぇぇぇえぇえぇっ?!?!?!」
驚きの余り学園中に響きそうなくらいの声を上げた。
「まさか村井さんが村華さんだったなんて……本当に驚きだよ」
「ふふっ、隠していたかいがありました♪」
無邪気にいらずらっぽく笑う村井さん。
ロリコンなのは愛優さんから聞いていたけど変態紳士同盟の同じ組のリーダーだということに本当に驚いた。
「あっ。もしかしてこれが理由ですか?」
「ご名答♪」
渚さんは指で輪っかを作り正解と言わんばかりに笑顔を浮かべる。
「そういうことだったら僕も納得しました」
「では、体験入学の件……お願いしても?」
「はいっ!」
僕はこれでもかというくらい元気よく返事をする。
女子校に男がお試しとはいえ入学というのはどうかと今でも思ってはいるが、こんな機会未来永劫ないだろうし、何より僕自身興味もあった。
それにここは愛莉達が通っている学園でもあるから、そういった意味でも楽しみだ。
「そういえば体験入学っていつからいつまでなんですか?」
「んー、明日から夏休みまでだよ?」
「えっ」
明日から夏休みって……今は六月の中旬だから、大体一ヶ月半くらい。
つまりこれから一ヶ月半もの間、僕はこのパラダイスを満喫出来るっ!!
……そう、思っていたのがつい先日の話。
そして今日は体験入学初日なのだが。
僕達は朝のHRが終わった直後からしおり女子学園のお嬢様たちに囲まれて質問攻めにされいきなりクタクタになっていた。
「大変だったね朝は」
「あぁ……本当だよ……」
とりあえず授業に入ったため、一旦教室から出て僕達専用の教室へと移動した僕と渚さん。
渚さんもそれなりに質問が押し寄せていたが、やはり男である僕の方が量が多く、とてもじゃないがHR終わってから授業までの間に答えられなかった。
「まぁでも少し安心したかも」
「あっ、それは私もわかるよ。最初はお嬢様学校〜って聞いた時挨拶は「ごきげんよう」とかで統一されていたり、常にキビキビしているかと思っていたから逆に拍子抜けしちゃった」
「僕も」
みんな挨拶とかは普通に「おはよう」だったし、思っていた以上にフレンドリーに話しかけてきてくれた。
それはとても嬉しいし、ありがたいんだけど。
「でもやっぱり慣れてないから疲れちゃうね」
「渚さんでもそうなんですか?」
「あはは、拓海くんは私のことをなんだと思っているの」
完璧で隙のないロリコンの生徒会長……それでいて僕の目標だと思っていています。
……なんて言えないしなぁ。
「ともかくあれが続くとなると少し気疲れしそうです」
「まぁみんないい子っぽいし、言えばわかってくれると思うよ……ま、その言う勇気が拓海くんにあれば、だけどね♪」
ニヤけた顔をこちらに向けて人差し指で僕の額をちょん、っとつつく。
「うっ……わかってて言ってますよねそれ」
「どうだろうね♪ あ、そういえばこの前一緒に店に来た愛莉ちゃん? だっけ、その子のところには行かなくていいの? 学年……と言うより初等部だから違う校舎になっちゃうけど」
そうなのだ、今僕達がいるこの校舎はあくまで中等部の校舎。
いくら小中一貫校とは言っても初等部と中等部の校舎は別々になっており、少し離れた位置にある。
「それなら心配いりませんよ」
「へぇ……てっきり休み時間とかになったら会いに行くと思ってたけど違うんだ」
「はい。休み時間には会いませんが、お昼は一緒に食べる約束をしていますからっ!」
「あはは、ちゃっかりしてるね」
これは昨日、家に戻った時真っ先に愛莉に相談した事だ。
最初、愛莉も愛優さんも僕がしおり女子学園に体験入学すると知った時は瞳をこれでもかというくらい開いて信じられないという目をしていたが、村井さんから貰った紙を見せるとなんとか受け入れてくれた。
まぁ愛莉に限っては僕と少し離れて、それでいて短い期間とはいえ同じ学園に通えるのが余程嬉しかったのか、今日一緒に学園に登校するまで年相応の女の子のようにずっとはしゃいでいた。
それで、その時に決めたことだが流石に休み時間の度に会うのはお互いの授業とかの関係で難しいとのことで時間の取れるお昼の時だけ会うことにした。
ちなみに通常の授業……数学や国語の時だけ僕達はここの特別教室で実習をして、体育や芸術科目に関しては一緒に参加することとなっている。
「そういえば渚さん今年受験だと思ったんですが、授業受けなくて大丈夫なんですか?」
ある程度やることをやっている僕の横で、何やら変態紳士同盟のイベントみたいなのを考える渚さんに疑問をぶつける。
「うーん、多分大丈夫じゃないかな?」
「多分大丈夫って……」
「私ね、家庭教師を雇っているんだけどその人に教えて貰って一応高校の範囲は全部やっちゃったんだ」
「……マジですか」
「うん、マジだよ。だからテストとかもちょこっと復習するくらいなの」
やっぱりこの人は凄い。
こんなお気楽な人なのに学力に関しては確か全国でも結構上の方だったはずだ。
一位である
「あっ、拓海くんわからないところとか教えて欲しいところがあったら遠慮なく言ってね。私が教えてあげるから♪」
「それは願ったり叶ったりです……その時が来たら是非頼らせてください」
「うん♪」
「あ、そうだ。ねぇ拓海くん」
「はい?」
「私達だけの秘密の合図を決めようか」
「秘密の合図……それはどうしてまた」
「ほら、私達の性格上、幼い女の子達しかいないここでは無茶なお願いとかされても断れないじゃない、私達ロリコンなんだし」
「それは……まぁ、そうですね」
「で、その時にお互いに『助けて〜』なんてことも言えない」
「そう、ですね」
「だからこそそういった時、密かにヘルプの合図を送れるように何か合図を決めておこうと思ってね♪」
「なるほど。それは確かにいいかもしれませんね、それでどんな合図にします? モールス信号とかにしますか?」
「いやいやいや、それ私が分からないから……うーーん、そうだねぇ。あ、これはどうかな」
そう言って渚さんは両手を使って僕に手を振る。
なるほど、確かにこれなら気付かれにくいし、わかりやすいな。
「それでいきましょう」
「うん、じゃあ困った時は絶対に……これを使おうね」
──キーンコーンカーンコーン。
と、丁度その時、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「さてと……次の授業は村井さんのクラスと初等部のクラスとの合同体育でしたよね?」
「そうだね。着替えてこなきゃだけど……私普通に更衣室使ってもいいのかな?」
「どうなんでしょう。なんなら今から村井さんのところに行って聞いてみますね」
「あはは……拓海くんって行動力凄いよね。でも今行ったらきっと──って、もういない!?」
教室の扉は開いており、私は急いでさっきまでそこにいたはずの彼の後を追う。
何故なら次は体育の授業で、ここは女子校だから男子の視線を気にする必要は無い。
一応更衣室というものはあるから気にする必要も無いかと思っていたけれど、朝の様子を見るともしかしたらもしかするかもしれない。
……このままだと、拓海くんが……着替え中の
──じゃなくて、そうなったら拓海くんが即座に帰される可能性があるからその前に止めなくては!
私は走らない程度に早歩きで歩みを進める。
ここから村井さんの教室は、廊下の先にある階段を降りたすぐそこだけど彼の姿は廊下には見えないから…………。
「えぇい、こうなったら仕方ないよねっ!」
私は周囲に誰もいないことを確認して音をなるべく立てないように走り出した。
その頃、拓海は。
「確か、ここが村井さんのクラス……だよな」
クラスの書かれている札を見る。
そこには村井さんのクラスである3-Bの文字が。
朝のHRでは3-Aだったので、ここに入るのは初めてだ。
でもまぁさっきと同じように堂々と入ればいい……。
僕は扉の取っ手に手を伸ばし、そのまま音を立てないように扉を開いた。
「……ふぇっ?」
「あ、れ?」
教室の中にいたのは、沢山の生徒でも村井さんでもなく……今まさに制服を脱いでこれから体操服に着替えようとしている、下着姿の長い銀髪が特徴のどこか幼さが残る美少女だった。
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