果てのない悲しみ
りき
第1話
もう何も知らないんだ もう何も覚えていないんだ
やめてくれ 僕に触らないでくれ 関わらないでくれ 痛い 苦しい 辛い
ただの悪夢だったらいいのに
早くこの人生を終えたい
生きたくても生きることのできない人がいるのに死にたいなんて言葉を使うなって言われたこともある 生きたい人の人権は尊重されるのになぜ死にたい人の願望は認められないんだ おかしな話さ やめてくれ もうやめてよ
あれから2年が過ぎた
中学生だった俺は高校生になった
生きている価値があるんだろうか
あの頃と何も変わってはいない
また同じ過ちを繰り返してしまった
助けを求めてもどうせ誰もが見て見ぬ振りをする
そんなのわかってる わかってるけどやめられなかった 誰もが聞いていて誰も聞いてはいないこの声
見た目も行動も口調も性格もあの時とは随分変えたはずだ 180度違う人間に生まれ変わったはずだったのに 俺が俺である限り何も変化なんてしないのだろうか 高校生らしく髪をちゃんと染めた より真面目になった なるべく言葉を選んだ ちょっとちゃらいけど優しいどこにでもいる男子高校生になれたはずだったのに なんで人をいじめないと生きていけないんだ もういじめとは縁のない生活を送りたいと誓った日は消え薄れていくのだろうか その日はいつだっただろうか
いつかの朝
僕は目を覚ました 時計を見るとam4 つまり僕のただ1人の友達をお散歩に連れて行く時間だ こいつだけはいつも僕の見方をしてくれている 大好き とっても大好き いつものようにいじめられて帰ってきた雪の降る寒い帰り道で出会ったんだ タロウって言うんだ 捨てられていたんだ かわいそう 僕の方もかわいそうなので同情して飼うことにした 正直猫の方が好きだったけどタロウは別 小学生のあんたにペットは早いという親の反対を押し切りすぐに小屋を作り毎日遊んだ 僕が親に顔の傷や腕の打撲を隠してもタロウにはいつもバレていた 痛いところをすぐ舐めてくれる 打撲はともかく傷なんて舐められたくないからやめて!っていうとやめてくれる いい子だ 僕をいじめてくるやつに同じことを言えたらなんてね何万回思ったかなんてわからないよ
僕がどんなにいじめられても構わないたった1匹のいや 1人 の友達だけは僕が守る いじめっ子というのは身につけているキーホルダーやカバンを隠したり捨てたりするのが好きらしい そんな野蛮な奴らに散歩している時に会ってしまったら何の関係もないペットまでいじめられるんじゃないかと思ってマスクをしてサングラスをして帽子を被って散歩をした 変装は探偵よりうまいのさ
この子を毎日散歩に連れて行くそう誓った
太郎は俺の友達
猛暑で暑くてたまらないのに近くでとても大きな声で話しかけてくる それは初めて会った時もだった
太郎は先月あたりから放課後になるといつも校門の外で俺を待っている
俺といるところを見られるとろくなことがないんだからおとなしく家で待っててくれと頼んでも校門にいる
隣の女の子が
いつもあの子と一緒にあんたの家に帰ってるわよね なんで?
俺も外を見て答えた
俺は誰かの手料理が食いたいんだよ 太郎は料理が上手なんだ
果てのない悲しみ りき @abcriki
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