第18話 浴室の鏡に石鹸やシャンプーを使えば曇りにくくなるんだね
ふぅ、いいお湯です。
異世界に来て、こんなに落ち着く時間もなかなかありませんでした。
この時間はたっぷりと休息をとる時間に当てさせてもらいます。
僕が湯船に、あさ姉は千秋お姉ちゃんの髪の毛を洗っています。
髪を洗う前に、髪の絡まりを取るためブラッシングをします。
この時のあさ姉の手つきが優しく、無理やり引っ張るようなことはしません。
「そういえばさっき二人が千冬を止めたけど、一体何だったんだろうね?」
「多分、年頃からくる思春期の子の思考回路だと思うよ~」
「あ、千秋お姉ちゃん、また大きくなったね」
「あー確かに、新しいやつ買った方がいいかな?」
「多分そうした方がいいと思うよ、きつくなったらいけないしね」
「そうね、明日服を取りに行く時についでに買っちゃおう」
「でもこの世界にあるのかなぁ?」
「町の方に出ると大きな洋服屋さんがあって、そこで売ってるよ~」
「そっか、じゃあそこで買おう、発育発育」
「あ、そういえばあさ姉、1つ聞きたいんだけど」
「何~?」
「あさ姉って、ジパングの出身なの?」
「そうだよ~、向こうでは前の2人みたいに日本って呼ぶ人が大半だけど」
「そのジパングってさ、どれだけ栄えてるの?」
「ん~、言葉にするのはちょっと2人が理解できないと思うからアバウトに言うけど、近未来+魔法って感じ」
「あたしが想像したのとあまり変わらないなぁ」
「学園アニメとかで結構近未来的な街があったりするでしょ」
「全部そうってわけじゃないけどあるっちゃあるね」
「大体あんな感じ」
「そうなんだ」
「ん?」
「どうしたの~?」
「いや、そういえばさ、あさ姉って何歳なの?」
「そういえば知らないなぁ、あさ姉の年齢」
「僕達を4歳ぐらいの時から育てているって事は、もう30歳は軽く超えているんだもんね」
「え~と、確か向こうの平安時代の時から生きているから、あともうちょっとで900歳になるね」
「え、そんな生きてたの?」
「身体の転生は十何回とやってきたから、肉体年齢はそこまで年取ってないけどね」
「ていうか、年齢がヒト科どころか地球上の生命体ではありえない数字出てんのにあんまり驚かない辺りどうなのよ」
「完全に感覚が麻痺してきちゃっているんだと思う、アストさんだってそうでしょ」
「いやあの人(?)は不老不死だからね?」
「でも身体がいきなり若くなったって事は無かったよね?」
「そうね~、肉体年齢は30歳ぐらいだから、人妻っぽい色気は出てると思うよ」
「僕はどちらかと言うと、千秋お姉ちゃんより少し年上の、大学生ぐらいがいいと思う」
「それじゃあそうする?」
「へ?」
「千秋ちゃんはさ、触れたものを操る能力を持っているんだよね」
「え、そうだけど」
「その能力であたしを2人の好みにしてみてよ」
「え、いくらなんでもそんな」
「いいからいいから、身体ってのは所詮魂の入れ物に過ぎないんだからさ~、スマホケースをデコる感覚で」
「スマホをデコったこともないし、身体は大切にしよ?」
「え~それじゃあ2人は私の大学生姿を見たくないの?」
「「……ちょっと見てみたい」」
「まぁ、大学生って言っても、最初に出会った時の姿に戻るだけだからさ」
「まぁ、時間を戻すだけなら」
「それじゃあ、お願いね」
千秋お姉ちゃんはあさ姉の体に触り、目を閉じると、あさ姉の姿がどんどん若々しくなっていきました。
体つきはあまり変わりませんが、人妻から大学生なので少し幼さが出ています。
顔も美しいというよりあどけないという言い方の方があってると思います。
「出会った時のあさ姉ってこんな感じなんだね」
「身体が戻るっていうのは生まれて初めてだから、ちょっと新鮮だなぁ」
そりゃそんなこと千秋お姉ちゃんの能力が無い限りは無理だよ。
「ところでさ、身体の転生をしたって言ってたけど、身体は何回入れ替えたの?」
「う~ん、もう憶えてないや、身体の転生っていうのはね、転生が完了したときは出産した時でもあるんだ、出産して成長するのを待っていると、こういう女性の身体の時もあれば、ハンサムな顔つきの身体もあったり、時には障害を煩わっちゃったときもあったね」
「障害を抱えちゃったときはどうしたの?」
「すぐに飛び降り自殺をしてこっちの世界で転生したね、でも自殺をするのは早めにしといたほうが良いよ、最初は大抵マンション暮らしだけど、空気読まない親2人がお金貯めて一戸建て購入しちゃったら死ににくくなっちゃうし」
「へー、でもさ、そうやって何回も死んで絶望してこないの?アニメではあさ姉ほどじゃ無いけど500歳は生きているキャラみたいな、感情が虚無になっちゃったりとかさ」
「でもそのキャラとあたしの違いは死ねるか死ねないかだけでしょ?私はこっちの世界の方がいいなぁって思った時もあるから、気分によって死んでたね、だから感情が死ぬことは無いよ」
「そうだったんだ、でもそういう言い方をしたらまるで寿命で死んだことが無いみたいな言い方だけど?」
「いやいや、気分によって死んでたから長生きしてみようって思ったことももちろんあるよ、色々な時代の新しいのには新鮮さがあって良かったなぁ、昭和の時にアミューズメントマシンショーに行ってね、ゲームを始めて触れてみて感動したよ、その後ゲームにドはまりしちゃって結構時間とお金割いちゃったけど」
「あぁ、だからゲームやっても1度もあさ姉に勝てない訳だ」
「ゲーム歴20年の人でも『なんだ、只の新参者か』って思ってたから、そこで神だのなんだの呼ばれている時は周りのレベルの低さにびっくりしたよ」
「え?!嘘でしょ?たった20年で神?とか?」
「そうそうそんな感じそんな感じ」
「今の会話の内容だったら言い出しかねないね」
「その時はきっちりと現実見せてあげたよ、ゲーム歴20年でも40年でも、成長はできるんだから、成長に終わりは無いんだよ、と、そろそろいいかな?それじゃあシャワーで流すね」
あさ姉は柔らかい手つきで何回も何回も、髪をほぐすように。
あさ姉曰く、それが柔らかい髪の毛になるんだとか。
「は~い、それじゃあ今度は千冬君の番だよ」
「はーい」
千秋お姉ちゃんと入れ違いに湯船から出て、あさ姉の前に座ります、あさ姉の髪を洗う時の手つきが癒されます。
「もしあさ姉が学生だったらさ、歴史とかめっぽう強そうだよね」
「そりゃ資料で読み取るどころか実際に体験しているわけだからね、でも文章で答える系のは具体的に書きすぎて丸がもらえなかったなぁ~」
「え?どうして?」
「歴史的資料からは読み取れないレベルで細かい情報も書いてたりもしたから、先生から信用されなくてね」
「実際に具体的に書いたことあるの?」
「あるよ~、その時は具体的すぎてバツ喰らったけど」
「そりゃそうだ」
「だから加減っていうのが分からなくてね?周りがどこまで知っているかとか把握しないとダメだったんだ、だから文章で答える系のが出たら絶望してたね~」
「分からないから答えられないんじゃなくて分かりすぎていて答えられないんだ、不思議だね」
「何事も程々が一番って事だね~」
「あとさ、漢文とか古文とかできたんじゃない?」
「あ~、あれはルールに則ればいいだけだから、結構楽だったね~」
「じゃあ数学とかもできたんだ?」
「うん、数学の公式って、覚えるより実際に解いてみたほうが良いよ、習うより慣れよって言うしね」
「?、習うより慣れろじゃないの?」
「慣れよでも合ってるよ」
「そっちが本来の形だよ」
「へぇ、そうだったんだ」
「テストでは全ての答えを書くのに10分も掛からなかったなぁ、見直しとかする必要も無かったし、残りは全部寝てたね」
「あさ姉の学校生活って一体……」
「授業中も良く寝てたし、ノートとかも一切取らなかったから、全部テストで巻き返してたよ」
「ちなみに評定は?」
「毎年オール5だけど?」
「それって1番質が悪いタイプだよね?」
「てことはどのテストでも毎回100点ってことじゃん」
「難易度的には小学校のテストみたいな難易度だったね」
「周りからの風評は?」
「もちろん最悪」
「学校生活での友達関係も?」
「もちろん最悪」
「最後に親からの評価は?」
「もちろん最悪、ただテストで良い点とれるだけとしか見てなかったし、他は一切できないと判断されてもおかしくなかったね~」
「本当は皆より沢山の事を知っているし、沢山の事が出来るのにね」
「そんなこと言っても誰も信用しないし、もし信用したとしても学校生活が面倒になるだけだからね~」
「それもそっか、言ったところでデメリットの山だもんね」
「そういえばさ、学校で思い出したんだけど」
「何~?」
「僕が女の子みたいな顔でいつもいじめられてたじゃん?」
「いじめられてたね~」
「んで、それをあさ姉に報告したら、次の日からいじめられなくなったどころか下手に出たんだよね、あさ姉絶対なにかやったよね?」
「やったね~」
「なにやったの?」
「簡単に言えば、弱み握っていじめっ子を支配したね」
「弱みって?」
「人って調子乗っている時はうっかり言っちゃいけないことを言いがちなんだよね、それはいじめっ子もそう、だからいじめをしたっていじめっ子たちが言うまでついて行って、言ったとこで録音、この録音データを学校や親に知られたくなかったらいじめはやめるようにって言ったの」
「それでも言うこと聞かない子がいそうだけど……」
「その時は校長やPTAの会長に直接報告して、退学にさせるか別の学校に転校させてたね」
「鬼だ…鬼がいる」
「う~ん、なんだか嬉しくないなぁ、でも、これ全部因果応報って言いきれるよ?」
「まぁ、あさ姉のやったことはもう死んだから裁けないだろうし、いじめっ子はチャンスを与えられてそれを無下にした訳だし、因果応報って言えばそうなのかな?」
「そうだよ、それと、そろそろいいかな?」
あさ姉が頭から手を離すと、シャワーを持ってお湯を流しました。
泡立ったシャンプーが排水溝を詰まらせ、シャワーから出たお湯が床一面を覆いました。
「それじゃあ湯船に浸かろうか」
「うん」
僕達3人が入ったことで、湯船からお湯が沢山出てきました。
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