第38話 神帝暦645年 8月24日 その27
ビンゴだぜ! そうか。ユーリの直感は大当たりか!
「館の怪異の原因は応接間Aに有りだな! これでなんとかなりそうだぜ! タマさん、情報提供ありがとうな!」
俺はタマさんの両手を自分の両手で握りしめて、ブンブンと上下に振り回すのである。タマさんは、ア、アノ……と戸惑っているようだ。そんなに謙遜しなくて良いんだぜ? タマさんのおかげで、これから先の目処が立ったんだからさ!
「お父さんー? 18歳の女性の手をそんなに強く握りしめるのはやめておいたほうが良いよー? 性的嫌がらせで訴えられたら、相当、不利な状況に陥るよー?」
「なんだよ! まるで俺が歩く性的嫌がらせみたいな言い方すんじゃねえよ! なんだ? 俺は年頃の女性の半径10メートル以内に入るだけで、街中の警護に包囲されるジョウさん並だって言いたいのか!?」
「ウキキッ。ジョウさんもそこまでじゃないでしょうに。あまりジョウさんをけなすのはやめておいたほうが良いですよ? ジョウさんはキレたら何をしだすかわからないタイプなのでウキキッ!」
「ヒデヨシ。言っておくが、俺のジョウさんイジリは決して、彼をけなしているわけではない。断じて、そんなわけがない。俺はジョウさんのことを気に入ってはいる。ただし、もし、俺が女性だったら、ジョウさんには一歩も近づかない!」
「ウキキッ。もう、ツキト殿は放っておきましょう……。ジョウさんに刺されてしまっても自業自得ですからねウキキッ!」
「うふふっ。ツキトは本当にジョウさんとは仲良しですわ。私はツキトがジョウさんとお友達じゃなかったら、決して、あの防具店に近づくことはないのですわ?」
そりゃそうだよな。ジョウさんの防具店は女性のみに発動する罠とかありそうだもんな。アマノがジョウさんを嫌がっているのはなんとなく雰囲気で察してはいるんだよな。まあでも、ジョウさん自身に罪はあっても、あの防具店には罪がないんだよなあ。
「おっと。話が逸れたわ。アマノ、今すぐ話を本筋に戻すから、その右手に握っているヒノキの棒をテーブルに置いてくれ。頼むから!」
「うふふっ。あと10秒長く、タマさんの手を握っていたら、ヒデヨシさんの時の3倍の力を込めて、ツキトの頭をヒノキの棒でぶん殴っていたのですわ?」
アマノがニコニコと笑顔であるが、こめかみに青筋が立っているのがひと目でわかる。やべえ。俺としたことが、アマノ以外の女性の手を強く握ったことのほうが、話が横道に逸れることよりも重大だと言うことを失念していたわ……。
アマノがコトンッとヒノキの棒をテーブルの上に置き直したのを確認した俺はホッと安堵する。
「さ、さてと。午後からのアタックは応接間Aからだってのは決まったな。タマさん。最悪、その絵を破壊させてもらうことになるけれど、そこは領主さまに取り繕っておいてくれないか? 館に
「ハ、ハイ。わかったのデス。領主さまにはあとで説明しておくのデス」
「ちなみに領主さまが購入して飾った絵はどんなモノが描かれているんだ? もし間違って、違う絵を叩き壊しましたじゃ、シャレにならないからさ?」
そう俺がタマさんに聞く。するとタマさんは困った表情になり
「エッ、エットですね。男性が裸で、あそこを1枚の葉っぱで隠している絵なのデス」
「はあああん!? そんな絵、誰が得するんだよ。裸にするなら、婦人に決まっているだろって、いってええええええ!」
「うふふっ? ツキトはいい加減にしてほしいのですわ? もう1発、お見舞いしましょうか?」
俺の側頭部にアマノによるヒノキの棒による攻撃が1ヒットしたのである。おううう、いってえええ! 血が飛び出てないよな!?
「お父さんは馬鹿だなー。本当に馬鹿だよー。裸を視たい相手を厳選するべきだよー」
「ウキキッ。男ならしょうがないとしか言いようがないのですよ。脳みそといちもつは別モノなのですよ。愛する女性以外にもオッキしてしまう、悲しい生き物なのですよ……ウキキッ」
ヒデヨシ。俺に代わって弁明してくれるのはありがたいが、それはアマノ相手だと火に油を注ぐ行為なので、やめてほしかった。
「うふふっ。今度は頭じゃなくて、いちもつに一撃を入れさせてもらいますわ? ツキト? 私以外でいちもつをオッキさせたら、へし折りますわよ?」
ほおおおら、視たことか! 俺はいつも他の女性を視ても、心頭滅却すれば、いちもつもオッキせずと言うスキルを発動させてるんだからな!? このスキルを発動維持させるのは大変なんだからな!?
「アマノ。俺がアマノ以外の女性でいちもつをオッキさせるわけがないだろ? だから、その両手で握りしめたヒノキの棒をテーブルの上に置いてくれ。なっ!?」
アマノがゴロンッとヒノキの棒をテーブルの上に置くのである。 ふううう。生きた心地がまったくしねえわ。誰だよ、今回のクエストでヒノキの棒を使おうって言い出したのは。確実にモンスター相手よりも、俺やヒデヨシに向かって使われてねえか?
「うっほん。裸の男が股間を葉っぱ1枚で隠している絵だな? ユーリ、しっかり覚えておけよ?」
「うん、わかったー。その葉っぱで隠してある股間に向かって、ヒノキの棒を叩きこめば良いんだよねー?」
ユーリの言っていることは間違っていない。だが、男の俺から言わせてもらえば間違いだらけの発言である。その絵にモンスターが潜んでいたとすれば、そのモンスターに大ダメージを与えれるかもしれないが、視ている俺とヒデヨシのいちもつも同時に縮み上がること、間違いなしだろう。
「な、なるべくなら、股間以外を狙ってほしいところだが、そこはユーリがその絵に効果的にダメージを与えれるだろうって考えだから、強くは否定しない。強くは否定しない……」
「別にお父さんの股間にヒノキの棒を叩きこむわけじゃないから、心配しなくても良いよー?」
それはそうなんだが、男という生き物は、股間への攻撃には共感性を持ってしまうモノだ。ほら、ヒデヨシを視てみろ。ヒデヨシもひえええ! と今にも悲鳴をあげそうなくらいに顔を青くしてるぞ?
「ウキキッ。ツキト殿。ユーリ殿たちがその絵を攻撃する場合は、わたくしたちは眼を瞑っていましょうウキキッ」
「いや、それはダメだろ。もし、絵側から反撃をされそうになったら、どうするんだ? しっかり、眼を見開いてないと危険すぎるぞ」
「ウキキッ。つらいのですよ、すごくつらいのですよ。わたくしの股間を攻撃されるわけではないのですが、やめてやってほしいと進言したい気分なのですよウキキッ」
敵の弱点を突くのは戦闘においては基本中の基本である。だから、俺としてもやめてほしいのだが、強くは言えないのである。堪えろ、ヒデヨシ。決して、俺たちの股間をヒノキの棒で叩かれるわけじゃないんだからなっ!
「なんで男のヒトはそこまで股間を攻撃されるのが嫌なのデス? ボクにはよくわからないのデス」
「うふふっ。タマさんに素敵な彼氏が出来たら、少しはわかるようになりますわ? 縦の衝撃よりも横からの衝撃のほうがダメージはより高くなるのですわ?」
「へーーー。なるほどー。あたしは上段構えからの振り下ろしで、その絵に攻撃してみようと思っていたけど、それじゃダメージは稼げないんだねー。勉強になるよー」
「うふふっ。薙ぐように横からぶっ叩くと良いのですわ? その絵に潜むモンスターもあまりの痛さに絵から飛び出してくることになると思うのですわ?」
ナムナム。モンスターよ。絵の中に潜むなら、もっと考えてから行動すべきだったな? アマノとユーリは、お前のいちもつをへし折る気満々だぞ? 俺とヒデヨシが何を言おうが、もう止まらないのは確定だ! せめてもの救いに俺たちはお前の股間を狙うのはやめておいてやろう、うんうん。
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