第6話 神帝暦645年 8月23日 その6
俺たちを乗せた箱馬車はゴトンゴトンと揺れながら、目的地に向かって進んでいく。運転手を含めて6人ものニンゲンが乗っているため、さほど速度は出ていないのであるが。まあ、どれくらいの速度かと言えば、大人が荷物を持たずにゆっくりと走っているよりマシな程度にしか出ていないわけだ。
なので、クエストの対象の
ちなみに
「なあ、タマさんにこんなことを聞くのは変なのかもしれないけれどさ?
「ボクもそこは不思議なのデス。有名どころの【
ふーーーん。何か大人の事情があったってことなのかなあ? 【
そんな
だからこそ、
まあ、これは推測の域を出ない考えなので、これ以上は無駄な気もしたりする。
「
「うふふっ。上には上の考えがあるものですわ? 私たちが気にしたって、どうにもならないものですわ?」
「ウキキッ。それよりも、
それもそうだな。ヒデヨシの言う通りだぜ。
「なあ、タマさん。
「ハイ! もちろん、ある程度までなら、ボクでも説明できるのデス! でも、屋根裏部屋にはボクは上がれなかったので、1階と2階までしか説明できないのデス」
「ん? そりゃまた、何か引っかかる言いだなあ? 屋根裏部屋にはいったい、何があるんだ?」
「噂話程度でしか説明できまセンが、それでも良いのであればデスケド。なんでも、領主さまの隠し子がそこに住んでいるとかなんトカ。それで、その方の世話が出来るのは一部の使用人だけダト。実際にセ・バスチャンさんを含めて、2~3人程度しか、使用人はあの館の屋根裏部屋には踏み入れなかったのデス」
ふーーーん。さすが領主さまともなれば、色々と表には出せない裏事情があるってわけかあ。
「俺たちは依頼で、その館に踏み込むことになるわけだけど、屋根裏部屋部分に上がったらダメとかは、セ・バスチャンからは言い渡されてないけど?」
「ハイ。ボクも屋根裏部屋部分については、領主さまやセ・バスチャンさんからは何も言われてはいまセン。ですので、冒険者さまたちが屋根裏部屋部分に踏み込んでも、とやかく何か言われることは無いと思うのデス」
「ウキキッ。なら安心なのですよ。あとで言った言わなかったで揉める心配はないということですウキキッ!」
まあ、どちらにしろ、館をくまなく探索しないことには、
「うふふっ。もしかしてですけど、屋根裏部屋に上がれない理由と
「あたしの直観だと、屋根裏部屋に住んでいた隠し子が
いや、それはさすがに安直すぎると思うんだよな? ユーリよ。でも、それを頭から否定できるほど、俺たちに情報があるわけでもないし。うーーーん。
「まあ、とりあえずは初日は予定通り、館周りの探索からだなあ。それで、次の日からは1階部分を探索開始って感じだなあ」
「うふふっ。いったい、館にはどんな秘密が隠されているんでしょうね? もしかして、私たちは依頼を完遂したあと、領主さまに刺客を送られるかもしれませんわ?」
「さすがにそんなたいそれた秘密なんてないだろうさ。もし、俺たちに刺客を送られるような秘密があるのなら、冒険者風情にこんな依頼を出すわけが最初からあるわけないしな?」
「ウキキッ。ただ単に偶発的に
「なーんだ。あたしとしては、知られてはいけない領主さまの秘密が隠されていることに期待していたのになー? それこそ、このヒノモトノ国を根底から覆しかねない秘密とかー?」
「そんなのあるわけないだろうが。そんな秘密があったら、帝立鎮守軍が直々に動いてるわ」
と俺はユーリにツッコミを入れるわけである。
「うふふっ。領主さまの隠し子が実は魔王の子孫であり、彼を守るために
「ウキキッ。それこそ、物語の題材としては面白そうな話なのですよ。そうとは知らずに館に入ってきた冒険者たちが、その魔王の子孫が力を蓄えるための餌であったとかですねウキキッ!」
「さすがに出来過ぎな話だわ。本当にそんなことになったら、俺がそれを題材に本にして、出版してやるわ」
と、こんな感じの笑い話を箱馬車の中でしていたわけである。箱馬車は2匹の馬に引かれて相変わらずゴトンゴトンと揺れながら進んでいく。
あと、20分ほどもすれば、目的地に到着だ。俺は鎧下の鎖帷子の左ポケットから
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