第27話 神帝暦645年 8月22日 その11

「えええーーー! ヒデヨシさん、ちょっと待ってよーーー! ここでこの伝説のスクール水着に着替えたら、ジョウさんがきっとブヒヒッ! ブヒヒッ! ブヒーーー! って、盛りの豚みたいにブヒブヒ叫びだしちゃうよーーー!?」


 ユーリ。まったくもって、俺もお前と同意見だ。俺の可愛い娘にそんなことはさせられん!


「ユーリ。家で着替えてみような? ジョウさんの防具店の試着室だと、覗き穴が作られているかもしれんからな? ジョウさん。いつも言ってるだろ? 試着室に覗き穴を作るのは立派な犯罪だって!」


「失敬な話デュフね! ぼくちんがそんな覗き穴を作るわけがないのデュフ! ちなみに、行政が防具店や鎧下の服専門店。さらには下着専門店の試着室には毎月必ず査察が入るのデュフ! それで何件の店が潰れたと思っているのデュフか! ぼくちんはわりと真っ当な防具店なのデュフ!」


「へーーー。行政って意外と仕事してんだな? 税金を民から搾り取るだけのお仕事だと思ってたわ。それなら、安心だな? ユーリ。念のために、ジョウさんの店の試着室は利用するんじゃねえぞ?」


「うん、わかったー! ジョウさんって信頼できないもんねー? 鎧の試着ならまだしも、肌をあらわにしないと着れないような伝説のスクール水着の試着はやめておくよー!」


 本当にジョウさんは危険な存在だもんな。一時期、ジョウさんは女性の衣服だけ、透けて見えるほどの眼力を街中の女性に飛ばして、三日ほど、番所で臭いメシを喰っていた経歴持ちなんだ。そんな奴が店長をやっている店で、水着の試着のために、裸になろうものなら、俺の可愛い娘がジョウさんのオカズにされることは間違いないしな!


「ぶひひっ。ひどい話なのデュフ。ぼくちん、素っ裸の女性よりも衣服を一部、着たままのほうが興奮を覚えるのデュフ。そうデュフよね? ツキト殿?」


「おい、待て! ジョウさん。俺を巻き込むんじゃねえええ!」


「うふふっ? 確かにツキトは私にぶかぶかのワイシャツを着せたままとかの時は、より一層、興奮しているように視えるのですわ? なるほど。ツキトはそういう趣味だったのですわ?」


「ごほんごほん! アマノさん? ユーリが居る前で、そういった発言は控えてほしいのですが?」


「あらあら。これは私としては失敗しましたのですわ? ユーリ? 今、私が言ったことは忘れてほしいのですわ?」


「ぶかぶかのワイシャツを着せたままってどういうことなのー? ヒデヨシさんー?」


「ウキキッ。それは男なら誰しもが喜ぶシチュエーションと言えば良いのかもしれないのでウキキッ。あと、ティーシャツ1枚とか、靴下だけを履かせたままとか、色々とあるのですよウキキッ!」


 ユーリが頭にハテナマークを浮かべているな。まあ、そりゃ、そうだろ。それらは男の特殊性癖だもんな。夜の営みの最中にアマノですら、何がそんなに良いんでしょうか? って、聞き返してくるくらいだしな。まあ、男のロマンだとしか、言いようがないから、それ以上の説明のしようがないのである。


「ぶひひっ。ユーリ殿のスクール水着姿が拝めないのは残念なのデュフ。まあ、ぼくちんもおまわりさんのお世話にはなりたくないデュフから、ここは諦めるのデュフ」


「ん? ジョウさんにしてはやけにあっさりと引き下がるんだな? もう少し粘って、連絡先を聞きだして、僕とお付き合い、いいえ、結婚してください! って言い出すもんだと思ってたのによ?」


「ぼくちん、ユーリ殿は守備範囲外なのデュフ」


「ああ、下は12歳からで上は14歳までだもんな? そりゃ、ジョウさんにとってはユーリは守備範囲外だわ!」


「ちがうデュフよ! 性格の部分デュフ! ぼくちん、頭の悪そうな発言をする女性は論外なのデュフ! いい加減、ツキト殿を訴えるデュフよ!」


「うふふっ? どちらかと言うと、訴えられるのはジョウさんのほうだと思うのですわ? 頭の悪そうな発言って、ジョウさんに言われる筋合いは無いと思うのですわ?」


「ぶひひっ。害獣を可愛い! とか、モフモフしたい! とか言う女性のどこが知的なのデュフか? やはり、知的な女性と言えば、紅き竜レッド・ドラゴンのような格好良い生物を可愛がってほしいと思うのデュフよ!」


 どう考えても、紅き竜レッド・ドラゴンを可愛いと言い出す女性なんか、この世には存在しないだろうな? まあ、でも、トカゲとか蛇とか爬虫類を好きだっていう女性はたまに居ることは居るけどな?


「ジョウさん? 言っておくけど、ドラゴン族はヒト型種族を餌程度にしか考えていないっぽいからな? いくら、神経だけは図太いジョウさんでも、紅き竜レッド・ドラゴンに睨まれたら、おしっこちびると思うぜ?」


「ま、マジデュフか? ぼくちん、このお店で大儲けを果たしたら、紅き竜レッド・ドラゴンのベニーを飼いたいと思っているデュフけど、そんなに危険なんデュフか?」


「ああ。アレは危険だぞ? 俺も以前、団長に付き合って、紅き竜レッド・ドラゴンの鱗を採取しに行ったけど、その時、紅き竜レッド・ドラゴンと眼が合っちまってさ? おしっこを大量にちびっちまったもんな」


「うふふっ。ドラゴン族だけの話ではないのですわ。強力なモンスターはどれも、邪視と言われる特殊能力を持っているのですわ? バンパイア・ロードなら相手を魅了状態にする邪眼を。ドラゴンでしたら、精神に恐怖感を抱かせる邪視を持っているのですわ?」


「あれは正直、殺されるかと思ったぜ。蛇に睨まれた蛙の気持ちが少しわかった気がするわ」


「普通は紅き竜レッド・ドラゴンを相手にするのはB級冒険者からなのですが、ツキトは運悪く、団長に荷物持ち役に指名されてしまったのでしたわね? ツキトが恥ずかしそうに、濡れたパンツとズボンの洗浄のために私に水の洗浄オータ・オッシュを頼んでくれた時は、いたずら心に支配されかけたのですわ?」


「ま、まあ? 小便で濡れたままじゃ、気持ち悪いからなあ?」


「もしかして、あたしもお父さんとドラゴン関係のクエストに行くことになったら、あたしがお父さんのパンツとズボンを水の洗浄オータ・オッシュすることになるわけー?」


「まあ、そうなりますわね? でも、安心して良いのですわ? 多分、私もツキトに同行するので、そんな心配はしなくても良いかもしれないのですわ?」


 まあ、アマノが身籠らない限りは、アマノは俺が受けるクエストには同行するつもりだしな。でも、表向き、冒険者を引退しているのに、それはそれでどうなんだろうな? と俺は思ってしまうわけである。


「ウキキッ。ユーリ殿のスクール水着姿が視れないのは残念極まりないですねウキキッ! ユーリ殿? お小遣いは欲しくないですか? ウキキッ!」


「それって、法的にどうなのー?」


「ウキキッ! ユーリ殿は16歳に達しているので、お互いの同意があれば、金銭の授受はなんら法に触れることはないのですよ? ウキキッ!」


「お互いの同意ねえ? まあ、それは2人で話あってくれ。あと、ユーリ。ヒデヨシの嫁さんに会ったら、ユーリにスクール水着を着用してくれって、土下座で頼み込まれたって言っておけよ? そしたら、ヒデヨシが一か月ほど痛い眼にあうからな?」


「うん、わかったー! 確か、ヒデヨシさんの奥さんの名前はネネさんだったよねー? 今度、八百屋かどこかで出会ったら、密告しておくよー!」


「ウキキッ! それはやめてほしいのですよウキキッ!」


「じゃあ、口止め料ももらっておかないとな? しっかし、金銭の授受は置いておいて、ジョウさんの店の試着室は危険だから、着替えようがないぜ? いったい、どうしたもんかなあ?」


 ジョウさんのことだから、覗き穴ではなく、何かしらの細工を試着室に施している気がしてならないんだよな? 俺がただ単に疑い深いだけなのか?


「なあ? ジョウさんよ。試着室に設置する細工ってどんなものがあるんだ?」


「まあ、一般的なのは開閉式の覗き穴デュフね。それと、天井に鏡を仕込んだりもよくある手デュフ。あとは、まあ、これはほとんど無いと思うのデュフけど、試着室の正面に掲げてある鏡自体がダミーだったりデュフね?」


「ん? なんだその、ダミーの鏡ってのは? そんなの初めて聞くぜ?」


「ぼくちんも聞いただけで実物を視たことはないのデュフけど、鏡の裏から向こう側が透けて視ることができる鏡が存在するようなのデュフ。ぼくちん、防具に関しては知識豊富なのデュフけど、魔法の道具マジック・アイテムに属するモノなので、その向こう側が透けて視える鏡については、詳しくは知らないのデュフ」

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