第26話 神帝暦645年 8月22日 その10

 しっかし、この伝説のスクール水着は何故にユーリを所有者として認めたんだ? ジョウさんの言いを信じれば、黒髪ロングで眼鏡をかけていて、さらに胸のサイズはDカップ。歳は12歳から24歳までと、年齢以外は条件が厳しすぎるんだぞ?


 ユーリは今年で16歳だから、伝説のスクール水着の装備条件を満たしているのは年齢だけだ。いったい、何が、このスクール水着に起きたんだ?


 だが、伝説のスクール水着の変化はネーム・タグに【悠里】と浮かび上がっただけではなかった。続けて、ビキキッ! ビキッ! ビキイイイイ! という耳をつんざくような甲高い音を立てやがるのだ!


「ぐわっ! 耳がいてえええ! なんだ、この音はあああ!」


「うううー。眩暈めまいがするよおおおー。気を失いそうだよーーー!」


「ユーリ! ジョウさんの店の中で気絶なんかするんじゃねえぞ! 次に眼を覚ました時は、ジョウさんの寝室のベッドの上で産まれたままの姿にされて、さらにジョウさんが、気持ちよかったデュフよ? って、耳元で囁きかけられるぞ!」


「そんなの嫌すぎるよおおお! あたし、頑張って、正気を保つからーーー!」


 よしよし。しっかり、気をもてよ? ジョウさんはドワーフ族なだけあって、性欲もすごいからな? って、別にドワーフ族うんぬんは関係なかったわ。ジョウさんはただ単に性別が女ならなんでも良かったわ。


 ようやく、伝説のスクール水着からの怪しい音が鳴り止むことになり、俺たちはほっと胸をなでおろすことになる。


「ツキト殿? さっき、すっごく、ぼくちんに対して失礼なことを言っていたデュフね? あとでシバキ倒してやるデュフよ?」


「そんなことより、スクール水着のほうを視るんだ、ジョウさん! なんか、俺の眼の錯覚かと思っていたけど、これ、サイズが大きくなってんぞ!?」


「ぶ、ぶひいいい!? ツキト殿の言う通りデュフ! 確かに、スクール水着のサイズが大きくなっているデュフ! 本当の本当にこの水着は、ユーリ殿を使用者として認めたんだデュフ!」


 さっき、ジョウさんが言ってた通り、伝説の防具ってのは、使用者に合わせて、自らサイズを調整するって話は本当だったんだな! くそっ。なんだって、ユーリを選んだんだ! どうせなら、アマノを選びやがれってんだ!


「うふふっ? ツキト? 私は今年で30歳になったのですわ? 三十路の女性にスクール水着はさすがにきついものを感じないのかしら?」


「い、いや。俺としては、水着姿のアマノと夜の営みを行うのも悪くないかなと思っただけで。べ、別にスクール水着をアマノに着てほしいとかそんなんじゃなくてな!?」


「わかりましたのですわ? 私としてはとっても恥ずかしいのですが、ツキトがそう望むのであれば、今度、服屋の職人さんに私の身体に合うサイズのスクール水着を作ってくれるよう頼みこんでみるのですわ?」


 うーーーん。その筋の職人に頼むのかあ。こりゃ結構、値が張りそうだなあ? しかしだ。水着着用でずっこんばっこんは男の夢のひとつであり、アマノがそれをしてくれると言うのであれば、俺は期待感で、おっと! やべえ、ちょっと半起ちになっちまったわ!


「ウキキッ。ツキト殿? 鼻の下が伸びているんですウキキッ。夫婦仲がお熱いのは良いことですが、今は、こちらの伝説のスクール水着のほうに注目するべきですよ? ウキキッ!」


 おっと、すまねえ、ひでよし。そうだよな。こっちの伝説のスクール水着に起こったことのほうが、今は重要だよな! 静まれ、俺のいちもつ! ジョウさんの顔でも視て、落ち着かせよう!


 髭をちゃんと剃ってないジョウさんの汚い顔を3分ほど眺めたあと、やっと、俺のいちもつは通常サイズに戻ることになる。


「さて。ジョウさんの見解を聞かせてくれよ? ユーリは年齢以外、この伝説のスクール水着の使用条件に合わないぜ?」


「ぶひひっ。本当に不思議な現象なのデュフ。しかし、これは仮定の話なのデュフが。それでも良ければ、話をするデュフよ?」


 仮定の話ってか。まあ、ジョウさんは防具のことに関しては知識は一流。防具作成は一流一歩手前だ。そのジョウさんなら、仮定の話といえども、聞くだけの価値はある。俺は、こくりと首を縦に振り、ジョウさんに話の続きを促すのである。


「ぶひひっ。では、仮定の話ゆえに、あまり驚かないようにしてほしいのデュフ。これは、条件に関する言い伝え自体が間違っているということデュフ」


「言い伝え自体が間違っているって、どういうことー? これが伝説のスクール水着だってことがガセだったってことー?」


「ユーリ殿。条件については、でデュフ。これは間違いなく伝説のスクール水着なのデュフ。これが認めた相手であるユーリ殿の身体に合わせてサイズを自ら調整しているのデュフ。それが伝説たるあかしになるのデュフ」


「じゃあ、条件は12歳から24歳までだけだったってことー? それなら、なんで、黒髪ロングで眼鏡とか他のことも言い伝えられてるわけー?」


 少し動揺しているユーリが問い詰めるようにジョウさんに質問をする。だが、ジョウさんは慌てなくても良いデュフよ? という意思を伝えるために、ジョウさんは右手をかざし、ユーリに静止するように促したあとに


「ここからの話が肝心なのデュフ。多分、この伝説のスクール水着を身に着けることより、ユーリ殿が黒髪ロングで眼鏡を装着し、さらにはおっぱいのサイズがDカップへと変わるのデュフ。この部分が条件として言い伝えられたという、ぼくちんの考えなのデュフ!」


「おいおいおい。ジョウさん、それはさすがに仮定といえども、話が飛躍しすぎじゃねえか!? なら、12歳から24歳の女性なら、誰でも、この伝説のスクール水着に認められて、さらにはそれを装着することで変身できるってことになるぜ?」


「ツキト殿? 年齢だけが条件ではないのデュフ。ちなみに、ぼくちん、その辺に歩いている14歳のエルフ族の美少女に、その伝説のスクール水着を手渡したことがあるのデュフ。そしたら、そのエルフの美少女はそのスクール水着には使用者として選ばれることはなかったのデュフ」


「おーーーい! おまわりさーーーん! ここにいたいけなエルフの少女にスクール水着を着てくれって土下座で頼み込んだ性犯罪者がいまーーーす!」


「通報しようとするのはやめるのデュフ! 試しに、そのエルフの美少女の手に持ってもらっただけなのデュフ! 決して、やましい気持ちがあったとかそんなことはないのデュフ!」


 なんだよ。純粋に伝説の防具に対する知識欲かよ。俺、ジョウさんのことだから、金貨2枚ほど渡して、盛り宿に連れ込んで、さらには、伝説のスクール水着を装着させるのかと勘違いしたじゃねえか……。


「ジョウさん。性欲の塊なのか、防具への知識欲なのか、はっきりわかるように話してくれよ? ジョウさんは、たまによくたびたび、俺が誤解するような話し方をするのはダメだと思うんだよ?」


「そ、そこは善処するんデュフ……。で、そのエルフの美少女は伝説のスクール水着には選ばれなかったのデュフ。黒髪ロングで、さらに年齢は14歳と、ユーリ殿より1つ多く条件を満たしているのに、ダメだったのデュフ」


「なるほどなあ。ジョウさんが言いたいことは、伝説のスクール水着の使用条件が言い伝えと違うからこそ、言い伝えってのは、条件のことを指しているわけではなくて、このスクール水着を着たときに起きる身体の変化のことだって言いたいわけだな?」


「そうデュフ。ツキト殿の言う通りなのデュフ。装着条件はまた別にあると思うのデュフ。でも、言い伝えとして残っている以上、その言い伝え自体には意味を持っているはずなのデュフ。あと、もうひとつの仮定があり、その言い伝えで考えられることは、それを装着しても、黒髪ロングで眼鏡をつけ、さらにDカップではなければ、【加護】があまり強く発揮されない可能性があるのデュフ」


「なるほどなあ。このスクール水着の真の力を発揮するための条件ってことだな? じゃあ、ユーリはせっかくこの伝説の防具に認められたってのに、黒髪ロングで眼鏡をつけて、さらにDカップじゃないと、せっかくの【加護】が弱まっちまうってことかあ」


「ウキキッ。どうせなら、そのスクール水着をユーリ殿が身に着けてみたら良いんじゃないですか? ウキキッ。そうすれば、ふたつある仮定のひとつは証明されることになるのですよウキキッ!」

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