第15話 神帝暦645年 8月15日 その8
アマノとヒデヨシの手による風の防御魔法が俺たち5人を5重、いや6重に包み込む。さらにアマノは俺たちを取り巻く風の層をありったけの魔力で分厚くする。よっし、これなら、風・火・水の合成魔法による爆発の余波で地面がえぐれて、土や砂、石が飛び散っても、防ぎ切れるはずだ!
「水よ、逆巻けー! そして、水龍の如く、炎の嵐に乗っていけーーー!」
ユーリが
その水は
そして、俺の具現化した火とユーリの具現化した水がぶつかりあい、バチバチッ! バチバチバチッ! と火花を散らす。そして、火と水は相食むようにその身を捻じらせ、段々と衝撃音が高まって行く。
それでもなお、ユーリは怖気ずに水の魔法に自分の魔力を乗せていく。
「ふぐぐぐーーー! 衝撃で押し戻されそうだよーーー! でも、あたし、絶対にこの合成魔法を成功させるんだーーー!」
がんばれ、ユーリ! がんばれ、ユーリ! 勝利は目前だ! 腰に力を入れろ! 歯を食いしばれ!
「ふぎぎぎーーー! ふごごごーーー! ふがががーーー!」
うーーーん? 女性が声に出して良いような音じゃないぞ? もっと、そこはおしとやかにだな?
「うるさいなーーー! お師匠さま、少し黙っててーーー! ふおおおーーー!」
あ、すまん。つい、ユーリの将来を心配してだな……。
「よおおおし。お師匠さまーーー!
「よっしゃあああ! 出でよ、炎の人形!
俺は手持ちの残り呪符をポケットから3枚取り出し、地面に叩きつけ、
それを行った瞬間。まるで神鳴りでもその場に束になって堕ちたかのような衝撃と音が俺たち5人の耳と身体に襲いかかるのである。
「うおおおおおおおお!」
――ツキト、アマノ、ユーリの3人による風・火・水の合成魔法は、お互いを食み合い、大きな音とまばゆい光、そして、この場に居る全てを吹き飛ばさんばかりの爆発を起こす。バンパイア・ロードが居る場所を中心として地面はえぐれ、周りの木をなぎ倒していくのであった――
ううん。俺はどうしたんだ? 大爆発が起きて、ふっ飛ばされて、意識が飛んじまったのか? 一体、どうなったんだ? うう……。身体のあちこちが痛い。幸い、骨は折れてないみたいだが、これは確実に身体のどこかの骨にヒビが入ってそうな痛みが襲ってくるぜ。
「はあはあはあ。これだけの爆発なんだ。バンパイア・ロードと言えども、無事ではいられないはずだ。くっそ、身体がいてえ。こりゃ、肋骨あたりにヒビが入ったかもしれんなあ。あいたたたたっ!」
俺は右胸の下辺りがずきずき痛むのを必死にこらえる。俺の身体の痛みより、バンパイア・ロードの生死を確認するのが先だ。俺たちは満身創痍だ。あの合成魔法で、もし、やつを倒せてないのであれば、一刻も早く、この場から逃げるしか方法がないからなっ。
俺は、きょろきょろと辺りを見渡す。バンパイア・ロードが居たと思われるところには深さ1.5メートル、半径5メートルのクレーターが出現していた。ふう、どうやら、あいつは粉々に吹き飛んだみたいだな……。
よっし、それなら、こちら側がどうなったかの確認に入るぜ。
自分から視て左後方3メートルのところにアマノがぐったりとなって、地面に倒れている。そして、ヒデヨシはかなり後方までふっとばされて、木の幹にぶつかったのか、その倒れた木の根元で倒れ込んでいる。あれ? ミツヒデはどこだ? あっ。あいつ、あの爆発で倒れなかった木の枝にひっかかった状態でぶら下がってんな。あれ、生きてんのか?
あと、ユーリはどこだ? まさか、あの爆発に巻き込まれて、粉々ってオチはないよな!?
「お師匠さまー。身体のあちこちが痛いよー」
「おっ!? ユーリ、生きてたのか! 良かったぜ。粉々になっちまったかと思ったぜ!」
「皆の命を救ったヒロインを粉々にするのはやめてほしいとこだよー。ああー。
どうやら、ユーリは吹き飛ばされる瞬間、
「あたしにもよくわからないんだけど、
「まあ、団長のことだから、また1週間で新しいモノを準備してくれるさ。しっかし、すげえ大爆発だったな。ほら、あそこ視てみろよ。でっけえクレーターが出来上がってるぞ?」
俺がユーリにそう言うと、ユーリは
「本当だねー。あんなクレーターが出来上がっていたら、さすがにバンパイア・ロードと言えども、粉々のバランバランだよねー」
「ああ、そうだな。あれで死ななかったら、正直、無理すぎるって話だろ。下手すりゃ、
「えっ?
「嘘じゃないぜ? 良いとこ、
俺は、ユーリにそう言うと、へへっと口から笑い声をこぼしてしまう。さて、アマノたちを起こしてやらないとな。多少、骨にヒビはいっているかもしれないが、死んでるってことはないだろう。
「ふむっ。良きかな、良きかなである」
えっ!?
「おい、ユーリ。今、何か言ったか!?」
「あ、あたしじゃないよ!? お師匠さまの声じゃないの!?」
俺が何で、わざわざ、バンパイア・ロードの声真似をしなきゃならねえんだ。どういうことだよ。なんで、奴の声が聞こえるんだよ!
俺たちがそう愕然となっている所に、ボコッ! と何か土をえぐるような音が辺りに響き渡る。そして、ボコッボコッ! と立て続けにその音は続き、最後はドコオオオン! と言う音とともに、クレーターの中心部、いや、中心部の地中から這い出てくるモノがあった。いや、居たのだ。
「ハハハッ! これほどまでに追い詰められたのは100年振りなのである!」
「て、てめえ。なんで、あの大爆発の中心部に居ながら生きてんだよっ! 生物としておかしすぎるだろ!」
バンパイア・ロードは確かにあの大爆発で大ダメージを喰らっていることがわかる。あいつの身体がぼろぞうきんのようになっており、ところどころから血をドロドロと流している。そして、あいつの顔は真っ白い顔から、火に焼かれて真っ黒になっているのだ。
「ふむっ。
バンパイア・ロードがぼろぞうきんのようになりかわった右腕を俺とユーリに突きだしてくる。その右手の上に乗っていたモノは何かの頭のようなモノであった。
「
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