魔鋼騎<マギカナイト>戦記フェアリア
さば・ノーブ
エピソード2 魔鋼騎戦記フェアリア
第1話 辺境の小隊へ
あなたは誰かと約束を交わした事がありませんか?
大切な人と。
大切な・・・そう、とても大切な。
たった一つの大切な願いを共に交わした事が・・・
一人の少女が辺境の独立戦車小隊に転属する為、列車の席に深々と腰掛けていた。
その少女の瞳は黒く、そして悲しみの色に澱んで見える。
列車は蒸気の煙を黒々と吐き出し、その影で少女の顔を一層暗く見せていた。
ここはもう最前線に近い。
ここはもう戦場になるかもしれないそんな僻地。
そう、ここはエンカウンター。
最前線の基地がある村・・・
((シュッ シュッ シュッ))
客車を曳く蒸気機関車がひた走る。
何かに急かされるが如く。
窓辺から観える客車の中に、戦闘帽を目深に被った少女が一人で乗車していた。
少女はカーキ色のフェアリア皇国陸軍戦車兵服を着て、
襟には一等兵を顕す三本の細い黒線の階級章が襟元に付いている。
この国の人間にしては珍しく黒く長い髪をし、その長い髪を戦闘帽から垂らして、後で赤いリボンで束ねている少女は、とても軍人とは思えない幼い容姿ををしていた。
まだ、十代半ばに見えるその
森を抜けて、曲りくねった線路の上を列車は走る。
客車の中には、数人の乗客が乗っているが、その殆どが軍隊に関係がある人達だった。
一人は酷く怯えて同僚に励まされているところから、前線に向う新兵らしかった。
またある人は、軍属で大きな荷物を大事そうに抱えて辺りに目を配っている。
その他の人も皆何か一様に心此処に在らずに見えた。
一人のお婆さん以外は。
列車は、山々を抜けて田舎の駅に滑り込んだ。
ここは、軍人が多く、その殆どが後方へ向う傷病兵達だった。
少女はちらりと窓の外に目を向けたが、直ぐに帽子を一層深く被り直した。
ここで、乗客の殆どが降りて行った。
「次は、終点。エンカウンターです。
これより先には軍の許可がいります。乗車券を拝見致します」
少女の居る客車に、車掌が検閲に入ってくる。
この客車内には少女の他に年老いた婦人が大きな荷物を抱えて乗車しているだけだった。
車掌が近づいて来ると、少女はごそごそと制服のポケットから一通の封筒を取り出して中に入っている紙切れを拡げた。
「乗車証を拝見します」
車掌が少女の席まで来て、手を差し出して確認を取ろうとする。
少女は無言で書類を差し出した。
車掌は、書類に目を通して、
「エンカウンター北部、独立第97小隊・・・ですか?ミハル・シマダ一等兵さん。
すみませんが、帽子を脱いで頂けませんか。確認致しますので」
少女の顔を確認する為に、目深に被った帽子を取る様に催促する。
少女は被った帽子を取って、黒く澄んだ瞳で車掌を見上げた。
車掌は、書類の写真と目の前の少女の顔を見比べて、
「ありがとうございます、ミハル一等兵殿。お返し致します」
少女に書類を返却して、後ろの方に座っている年老いた婦人の方に移動していった。
少女、ミハルは書類をポケットに戻して、再び戦闘帽を被り直した。
その時、車掌の荒げた声がミハルの耳に飛び込んで来た。
「お婆さん!軍の書類が無けりゃ、この先には行かれないんですよ。
何度言ったら解るんですか!」
どうやらあのご婦人は、許可証を持っていないみたいだった。
「許可証がないと、これより先には行けないんです。どんな理由があろうともです。
それに、エンカウンターから数十キロ先は、帝国軍に占領されてしまっているのですよ。
何時砲撃されるか解らない危険な場所なのですから、
一般の方は立ち入る事は出来ません。諦めてここで降りて下さい!」
ミハルは、列車の中で車掌に怒鳴られる老婦人を見た。
その老婦人は、
「エンカウンターに、息子が居るんです。
一目でいいから逢いたいの。会わせてもらえませんか?」
車掌は、認めなかった。
「あなた一人だけではないんです。
誰だって会いたいのを我慢しているのに、そんな勝手な事を認める訳にはいきません。
直ぐに降りてください。列車の運行に支障が出ます。さあ!」
そう言って、老婦人の手を掴み連れ出そうとする。
「お願いです、私はもう長く生きられない体です。一目でいいから息子に会わせて」
涙ながらに訴える老婦人を、無理やり連れ出そうとする車掌に、
「なら、せめてこの手紙を渡して下さい。
私が息子に宛てた、この手紙を。お願いです、後生ですから」
大きな荷物の中から、封筒を取り出して車掌に差し出すのを、
「その様な事が、出来るわけ無いでしょう。軍事郵便で出したら良いでしょうが。受け取れません、諦めなさい。さあ、降りなさい、早く!」
車掌は、老婦人を乱暴に引き出そうとする。その車掌の手を、がっと掴む手が。
「!?何をするんですか?軍人といえども、列車の運行の邪魔はさせませんよ」
咎める車掌を無視して、黒髪の軍服を着た少女が老婦人に訊いた。
「息子さんの所属と階級、氏名を教えてくれますかお婆さん?」
優しく訊くミハルを見て、
「軍人さんかね、お嬢さんは」
ミハルは頷き、
「ミハル一等兵と、いいます。エンカウンター迄行きますから、私でよければその手紙、所属部隊迄持って行きますよ」
老婦人の顔が、明るさを取り戻して、
「そうですか、貴女の様な娘さんが、軍人さんだなんて。
それでは、お願い出来ますか。
息子の所属は最後の手紙では、第3軍第2師団第2機動連隊第1大隊。
バルク・ロダーニ二等兵。私はバルクの母、マミア・ロダーニと申します。
どうか、この封筒を息子に渡して・・・お願いします」
そう言って、封筒を差し出すのを、ミハルは躊躇した。
「どうしました、軍人のお嬢さん。渡して頂けないのですか?」
老婦人が、咎めるように言うのを聞いて、ミハルはもう一度尋ねる。
「息子さんは、第2師団の第2機動連隊に所属されていたのですかマミアお婆さん?」
「ええ。最後の手紙には、そう書いてありました」
「・・・。それは、何時頃来た手紙ですか?」
「3ヶ月前です。元気で頑張っているって、書いてあったのよ」
「・・・そうですか。3ヶ月前に・・・」
ミハルは老婦人から受け取った封筒に、視線を移して、
「確かに受け取りました。・・・所属部隊があったエンカウンターに届けます」
ミハルの言葉に安心したのか、老婦人は礼をいいながら車掌に促されて降りて行った。
「お若い軍人さん。宜しくお願いします。
息子に会えたら母は、元気だからと伝えて。
元気に帰って来るのを待っていると、伝えて下さい」
列車から降りる時、マミア婦人は涙ながらにミハルに言った。その言葉を聞いていた車掌は、ミハルに視線を移し、無言で責めていた。
<何故、本当の事を言わないのか。この老婆に知らせてやら無いのかと・・・>
「お婆さん、ごめんなさい。本当の事を伝えてあげられなくて」
ミハルは小声で呟く。そして、老婆の封筒を握り締めた。
駅から列車が動き出した。窓の外にマミア婦人が大きな荷物を持って、手を力なく振っていた。それに、答礼を返して婦人が見えなくなるまで見つめて考えた。
<戦争ってなんて残酷なんだろう。
マミアお婆さんは、帰って来ない息子を死ぬまで待つのかな?
私はなんて酷い事をしてしまったのだろう>
ミハルが車窓を見つめていると、やがて前方からエンカウンターの村が見えてくる。そこは荒れ果てた畑と崩れた建物があるだけだった。
<ここも激戦だったんだな。
一体何人の人が・・・何十、何百の人が亡くなってしまったんだろう>
畑の中には、焼き爛れた戦闘車両が数台放置されたままだった。
砲身をその命が絶たれた時のままの状態で原型を留めている物、
またある物は砲塔を吹き飛ばされ、原形を留めていない状態で真っ黒く焼き爛れていた。
<脱出しなさいっ、早くっ!>
記憶の中で戦友が叫ぶ。
目の前にある戦車の残骸がミハルの眼をあの闘いに戻す。
<早く行きなさいっ、後ろを振り向かずに!>
金髪の少女が自分に叫ぶ。
<約束だよ、ミハル。必ず生きて帰って。必ずっ!>
その少女が涙を流して別れを告げる。
<ああ、どうして・・・どうして、私はここに居るんだろう。
・・・どうして生き残ってしまったんだろう>
記憶の中から再び瞳を見開き、焼け野原を見つめる。
ミハルは、その姿を目に焼き付けて見入っていた。
辛い思いから逃れられずに・・・
「一等兵さん、ここがエンカウンターです。
見ての通り2ヶ月前の戦闘で第2機動連隊が全滅した村ですよ」
車掌がミハルに声を掛けた。
ミハルは、声に振り向き、
「私はマミアお婆さんに言うべきだったでしょうか?」
ミハルは車掌に問い掛けた。
だが、車掌は首を横に振り、
「私もあの場合なら、貴女と同じ事をしたでしょうね。
残念ながら戦争なんですよ、今は・・・」
車掌がミハルを慰める様に、言い聞かせる様に言う。
「戦争・・なんですよね。戦場なんですよね、これが・・・」
車窓の風景を見つめながら、ミハルは呟いた。
目の前に広がる焼け野原を見つめる内に、列車はエンカウンターの駅に着いた。
ミハルは背中に背嚢を担いで列車から降りる。
駅には数人の軍人が居るだけで、ここが前線に近い軍用駅とは思えない程の寂しい風景だった。
「ミハル一等兵さん、ご無事をお祈りしております」
不意に後から車掌さんが声を掛けてくれた。
「ありがとう、車掌さんも御達者で」
ミハルは、車掌に礼を言って歩き出した。
「さてっと、エンカウンター北方10キロ先に有る古城・・独立第97小隊本部までは歩きだよね。その前にお婆さんの手紙を届けなきゃ」
ミハルはエンカウンターの村へ入って軍人に訊く。
第2機動連隊が全滅した場所を。
・・・そして墓所を。
小高い丘の上に、戦死者の墓がずらっと並んでいた。
ミハルは、一つ一つ名札が掛かっている木切れを見て行く。
そして、見つけてしまった。
その名札には、<バルク・ロダーニ 二等兵>の名が・・・
<見つけたく無かったよ、お婆さん。
・・・バルクさん、お母さんの手紙を届けますね>
ミハルは、懐から封筒を木切れと名札になってしまったマミア婦人の息子に届ける。
厚みのある封筒が気になってそのまま置いて行くのがしのびなくなり、開封してしまった。
中の手紙を引き出すと、封書と同時に小さなお守りが出て来る。
ミハルの手に赤いお守りが握られる。
ミハルはお守りを見て居た堪れなくなり、手紙を口に出して読み出した。
<バルク、私のたった一人残った息子。
お前が軍隊に取られてもう半年。
父さんや兄さん達が死んでしまってもうお前だけが私の頼りなの。
無事に帰って来ておくれ。
お前の笑顔が、バルクの姿が毎夜思い浮かぶよ。
どうか死なないで、この母の元へ帰って来ておくれ。・・・・・・>
それ以上読む事がミハルには出来なかった。
涙で文字が滲んで・・・。
ミハルは膝を地面について泣き崩れた。
<どうして戦争は大切な人を奪ってしまうの?どうして戦争は人を悲しませるの?>
ミハルは赤いお守りと封書を名札の掛かった木切れの前に供えて立ち上がった。
「さよなら、バルクさん。お婆さんを守ってあげてね」
一言別れを告げて墓所を後に歩き出す。
<私だって同じなんだ・・・何時死ぬかなんて解らない。
これが戦争なんだ。これから向う戦場で同じ運命を辿るかもしれないのだから>
ミハルは、重い足取りで着任先である北部にある古城へ向う。
農道をとぼとぼと歩いていると、荒れ果てた畑の中を一人の騎馬が軽やかに走って行く。
傾きだした陽の光を浴びて、その姿はまるで女神の様に美しく、金色の長い髪を靡かせて乗馬する若い女の人に瞳は釘付けになった。
ーなんて綺麗な
その乗馬している女の人を見詰めていると、その人がミハルに気付いてこちらを見た。
<あっ、ほんとに綺麗な人だな。神々しいとは、こんな人の事を言うのだな>
ミハルは女の人を見てそう思った。その人がミハルに微笑みかける。
<ああ、この人の笑顔をみると、さっきまでの暗い想いが消えて行く。
本当に女神様なのかな?この人・・・>
だが、その女の人を見詰める内に気付いた。その人が軍服を着ている事に、そして階級章の金線1本が。
<あっ、上官だ。細い金線1本って事は少尉、士官だ>
気付いたミハルが慌てて敬礼すると、その女性士官は笑顔のまま答礼してくれた。
<ああ、本当に美しくて優しそうな人だな。
あんな女性になりたい。無理だろうけど・・・
あんな人の下で働きたいな、あんな人が上官ならいいのにな・・・>
ミハルが見送っている内に女性士官は野原の向こうに走り去って行った。
女性士官を見送ってまた着任地の古城に向って歩き出す。
<不思議だな、さっきまで暗く重い気分だったのに。
あの人と会っただけで気分が軽くなった。
何て人だろう?せめて名前だけでも知りたいな>
ミハルは、先程までの重い足取りと比べられない位、しっかりとした足で歩いて行った。
「皇国陸戦騎独立弟97小隊」の、立て札が立っている古城の前にミハルはたどり着いた。
山の頂に在るその古城は、周りを蔦に覆われいかにも何百年間誰も居ついていなかった事を現していた。石垣はそこ此処で崩れて、あまり大きくない城を更に小さく見せる。
ミハルは古城を一回り見渡して、城門だった所から中へ入ろうとした。
「halt《とまれ》!」
城壁の上から、突然大声で怒鳴られて声の主の方に振り仰ぐと、そこには栗色の髪をした女の子が立っていた。
「見かけない顔だな。お前は何処の部隊だ?」
栗色の髪をした少女がミハルに訊く。
慌てたミハルが転属命令書を出そうと手をポケットに入れようとすると、
((ジャキッ))
ミハルの前に小銃のボルトを引き、突き出す少女が、
「動くな、変な真似をすると撃つぞ。馬鹿野郎!」
栗色の髪の少女が、小銃を構えてミハルに怒鳴った。
「あ、あの。転属命令書が、ポケットの中にあるんです。取り出しても良いですか?」
ミハルが小銃を突きつけている少女に尋ねると、
「本当に馬鹿か?あたしが動くなと言ったのが解らないのか!?」
「す、すみません。左側のポケットに入っています」
少女は小銃を突き付けたまま、ミハルの左ポケットに手を入れて、命令書が入った封筒を取り出し中身を確認する。
「ふん。本隊への転属だと?砲術科出身の特技章付きか」
ミハルの腕の腕章を見ながら命令書を便箋に収めて、
「それではミハル・シマダ一等兵。小隊指揮官の元へ行って宜しい。
この奥にある建物の中が、小隊員部屋だ。
あたしは、見張りを続けているから案内は出来ない。一人で行ってくれ」
「は、はい。解りました」
ミハルは、見張りを続ける栗色の髪の少女に敬礼して答えた。見張りを続ける少女はそれには答えず、城壁の上に登っていってしまった。
<何て愛想の無い人なんだろう。ま、しょうがないな>
ミハルは言われた通り奥の建物、城内の奥へと入ってドアをノックして申告する。
「島田 美春一等兵、本日付を持って、陸戦騎独立第97小隊に配属となりました」
なるべく元気な声を装って申告すると、
「よし!入れっ」
野太い男の声が招き入れる。
「入ります!」
ドアを開けて中に入ると、奥のテーブルを男女が数人囲んでいた。
「
ミハルは敬礼をして、自己紹介をする。
「なんだ、またガキンチョか。がっかりですね、班長」
銀髪を後で束ねた、ミハルより少し年長の女の子が横に居る男性に言った。
だが、男性はそれには答えず、
「長旅ごくろうさん。第97小隊へようこそ、ミハル一等兵」
そう言って、日に焼けた如何にも叩き上げの軍人といった風貌の男性は、
「オレはここの班長を務めるバスクッチ曹長だ。お前は前線は初めてか、ミハル?」
男性に名前だけで呼ばれて驚きながらも、
「え?あの。は、はい。前線は・・・曹長殿!」
バスクッチ曹長は、苦笑いしながら、
「殿はいらん、曹長若しくはバスクッチ班長と呼んだらいい」
ミハルに呼び方を教えて、
「お前は砲術科出身みたいだが、特技はなんだ?自走か、大砲か?」
曹長の問いに、
「あの・・対戦車砲です。速射の・・・」
ミハルの返事に、曹長はにこやかに、
「そうか、速射か。ならば、装填も習った筈だな」
「は、はい。習いました」
ミハルは緊張して答える。
バスクッチ曹長は隣に居る銀髪の少女に、
「装填手は、決まりだな。ラミル」
「・・ですね、班長。ミハル装填手、アタシはラミル・・・ラミル・バンガール。
マギカ・ミディアム・タイプ3のドライバーだ。宜しくな!」
そう言って握手を求められて、
「ミハル・シマダ一等兵です。あの、ラミル兵長」
ラミルの襟章は、兵の最上位である兵長を指す黒線4本だった。
曹長の横には整備科の下士官が、お茶を啜りながら、
「オレは小隊付き整備班の班長マクドナード軍曹だ。
エンジンから砲まで、全て受け持っている。食事の支度以外はな」
整備科の班長マクドナード軍曹は、隣の2等兵にお茶を注がせて、
「食事は、このミリアに任せている。
若いが料理の腕はなかなか立つよ。整備はからっきしだがな」
「・・・、班長、酷いです。あ、あの。ミハル一等兵も、幼年学校出身ですよね。
私、後輩なんです。ミリア・クルーガン二等兵です、宜しくお願いします」
赤毛を軽くカールさせた少女、ミリアが自己紹介すると、
「あ、こちらこそ。宜しくミリア二等兵さん」
ミハルが慌ててお辞儀すると、
「お前って変な奴だな。
でも、良いよ。なんか兵隊ずれしてなくてさ。
困った事があったら、何でも相談に乗ってやるぞ」
ラミル兵長が、ミハルの肩を叩いてそう言った。
「あっ、はい。宜しく願います」
ミハルが答えると、ラミルはにやっと笑った。
「おっと、そうだ。ここには居ないが、無線手が居るんだが会ったか?
城壁で見張りをしている筈だが」
曹長がミハルに訊くと、
「あの、栗色の髪をした方ですか?」
「ああ。あれが無線手、キャミー・マコダニア一等兵だよ。ちょっと堅物だったろ」
ラミルがミハルに訊くと、
「ええ。あっいえ、そんな・・・」
ミハルが慌てて言い繕おうとしたが、
「本当にミハルは素直だな。あはっはっ」
曹長にまで笑われてしまって、真っ赤な顔になるミハル。
「後は、車長兼小隊長なのだが・・・」
マクドナード整備班長が、真顔で答える。
「あ、はい。何処に居られるのでしょう?」
ミハルが尋ねると、
「ああ、少尉はそこ等辺を走り回っているよ」
ラミルが代わりに答えてくれる。
「走り回るって?どう言う事ですか」
ミハルが皆に訊くが、
「まあ、そのうち帰って来るさ。帰られたら挨拶をすればいい」
「そうそう、ではミハル一等兵を兵員室まで案内してきます」
ミリアが皆に言って、ミハルを連れ出す。
「こちらです、ミハル先輩」
ミリアは、ミハルの手を握って、引っ張って行く。
「あ、のっ!ちょっと!」
強引にミリアに案内されて、兵員室に連れ込まれると、
「はい、ミハル先輩。ここがベットです。荷物は此処のロッカーを使って下さい」
てきぱきと事務方をこなすミリアに、ミハルは礼を言った。
「ありがとう、ミリアさん」
「え?いえ、そんな。ありがとうだなんて。私、お礼を言ってもらえるような事してませんよ」
ミリアが少し赤くなった顔でミハルに答えた。
「ううん。私軍隊に入ってから、そんなに親切にしてもらったのって、二人目だから。
・・・ありがとうって言わせてミリアさん」
「ううー。だから先輩。さん付けは止めてください。
ミハル先輩の方が歳も上で階級も上なんですから。
軍規が乱れるって教わらなかったんですか」
ミリアに説教されて、ミハルは苦笑いする。
「解ったわ、ミリア」
そうミリアに言うと、
「はい!ミハル先輩」
元気な声で茶目っ気一杯の敬礼で笑いかけられた。
ミリアが部屋から出て行こうとすると、荒々しくドアを開けてキャミー一等兵が入ってきた。
「何だ、ミリア。陸戦騎搭乗員室に何か用か?」
キャミーの声にビクつくミリアが返答する。
「はい、ミハル一等兵を案内しておりました」
キャミーはじろりとミリアを睨み、続けてミハルを睨みつけて、
「さっきの新入りか。確かミハルとか言う変な名の一等兵だったな」
変な名と呼ばれて、カチンと来たミハルがそれでも堪えて自己紹介する。
「シマダ・ミハル一等兵です。宜しくお願いします」
そう言って挨拶するのを、
「ふん、同じ一等兵でもあたしゃあ古参なんだよ、シーマダ。
なんて呼び辛い名だ。・・・ミハル、そうだミハルでいいよな、呼び方は」
「はい、結構です。キャミーさん」
「んっだとっ!新入りの分際で生意気な。特技章付きだからって、威張ってんじゃねえぞ!」
いきなりキャミーがミハルに喧嘩を吹っかけてきた。
「それじゃあ、どう呼べばいいんですか?」
「そんなの決まってんだろ。キャミー一等兵とか、前方機銃手とか無線手とか!」
「あの、今初めて聞いたのですが・・・。キャミー・・一等兵は陸戦騎乗りなのですね」
「ったりめぇーだろ。
ここ搭乗員室に居るって事は陸戦騎乗りに決まってんだろうが。馬鹿野郎っ!」
「すみません。知らなかったもので・・・」
ミハルは、顔をヒク付かせて我慢した。
<口が悪いなこの人。旨くやっていけるかなこの先・・・>
キャミーは入り口でやり取りを聞いていたミリアに、
「おい、ミリア。晩飯はまだか?」
キャミーの問いに、
「あの、まだです。1900に食事ですから」
ミリアはまたかといった顔で答える。
その顔がキャミーの怒りを買ってしまった。
「おい、ミリア。今あたしの質問にうんざりした顔をしただろ。違うか!」
突然怒ったキャミーにミリアは慌てて、
「うんざりなんてしてません」
と、答えたが、
「嘘を吐く気か。そんな態度を取るとどうなるか教えてやる」
キャミーはミリアの襟首を掴みかかり、平手打ちを喰らわせようと手を上げた。
ミリアは覚悟を決めたように目を瞑り歯を食いしばる。
が、そのキャミーの手を掴むミハルが目に映った。
「なんだ?新入りの癖して止める気かよ」
キャミーはミリアを離してミハルに怒りの矛先を向ける。
「やめてください。
いくら目上だからってあまりに理不尽に過ぎます。私達は兵同志なのですから」
ミハルの静止を訊こうともせず、
「なに言ってやがんだ。
ここは軍隊なんだぞ!飯の数が多い方が絶対なんだ。
下級の者に嘗められたら締めしがつかねえ事位、知ってるだろうが!」
キャミーがミハルに掴みかかる。
その手を握り返して、ミハルは掴んだキャミーの手首を捻る。
「うわっ、テメエッ放せっ。痛てててっ!」
キャミーの腕を捻って、ミハルはキャミーの動きを封じた。
「キャミーさん、もうやめてください。手荒な事はしたくないんです」
ミハルの諭しを聞こうともせず、
「痛ててっ、離せっ!手荒い事してんじゃねえか!」
怒りの表情で、ミハルを睨む。
「だから、もう落ち着いて話し合いましょうキャミーさん」
ミハルはキャミーの目を鋭い眼光を放って見詰めた。
キャミーはミハルの黒く澄んだ瞳に威圧されて、身を竦める。
「解った、解ったから。離してくれ」
キャミーに乱暴を働く気がなくなった事が解って、ミハルは手を離した。
「もう止めてください。
古参兵なら古参兵らしく、下級者の見本となる様に勤めなくては。
私はそう思ってるんです」
キャミーはそう言い放ったミハルを見返して、
「それは、お前の考えだろ。あたしゃあそんな甘い考えが大嫌いなんだよ。
そんな甘い考えをしていたから、死んじまったんだよ。
・・・糞っムカツク。あたしはお前の考え方には同意出来ないね。
そんなに下級者の見本になりたきゃ、聖人君主にでもなりゃいい。
あたしは、下級者に軍隊の厳しさを教えてやるだけさ」
キャミーは言うだけ言って、搭乗員室を出て行ってしまった。
後に残されたミハルとミリアは、互いに無言でキャミーを見送った。
「はあ・・・」
ミハルは、ため息を吐きベットに座り込んでしまう。
「あの、ミハル先輩、ありがとうございました」
ミリアが、ほっとした顔で礼を言った。
ミハルはキャミーの出て行ったドアを見ながら、
「別に・・・。礼を言われる様な事をしてないから」
ミハルが怒っていると思ったミリアが、
「あの、キャミーさんの事、怒らないであげて下さい。
同期の人が死んでから、あんな風に怒りっぽくなったんです」
ミリアの一言にミハルが訊く。
「同期の人?そうだったんだ。その同期の人って彼女と仲が良かったの?」
「えっと、あの。ミハル先輩の前任者なんです。その同期の人って・・・」
「えっ!?私の前任者って・・・。陸戦騎乗りだったの?」
「はい。装填手のパラムって人で、1ヶ月ほど前に亡くなりました」
「そう・・・戦死?」
ミハルが重い口調で、ミリアに訊いた。
「はい、陸戦騎での戦闘ではなかったのですが。
キャミー一等兵と共に物資の受け取りに出向いた先で、砲撃を受けて・・・
キャミーさんは無事だったのですが、パラム一等兵がキャミーさんを庇って。
爆風を受けて。・・それで」
「そう、キャミーさんは友人を目の前で?」
ミハルは俯くミリアの肩に手を置いて、
「ありがとう、ミリア、教えてくれて」
涙目のミリアは、優しく手を掛けてくれたミハルに顔を向けて、
「だから、キャミーさんの事、悪く思わないであげて下さい。私なら大丈夫ですから」
「優しいのね、ミリアさんは・・・」
ちょっとビックリしたような顔で、
「いえ、そんな。優しいだなんて」
照れて、顔を赤くするミリアにミハルは微笑んだ。
「さてと、それじゃあ私も指揮官に着任の挨拶に行くから。
ミリア、指揮官室まで案内してくれるかな」
ミハルが服装の乱れを直しながらミリアに頼むと、
「あ、はい!ご案内します」
ミリアは先に立って部屋を出た。
城内の奥に向う途中で、マクドナード軍曹を班長とする整備班が作業中だった。
「おー、新入り。えっと、ミハエル?ミエル?」
「・・・ミハル・・です。軍曹」
「そーだったな。車長に、小隊長に会ったか?」
マクドナード軍曹は、ミハルに茶目っ気たっぷりに訊く。
「いえ、今から着任の挨拶に行く所です」
ミハルが返答すると、ミリアが袖を引っ張り目配せをしてくる。
「?何?ミリアさん?」
ミリアは小声で注意を促す。
「ミハル先輩、軍曹の話をまともに聞いていたら朝になってしまいますよ。
適当に話を切って下さい」
「?そうなの?うん、解ったよ」
ミハルも小声で、ミリアに言う。
「ところで、ミハル。お前さんの乗る車体だが。知っているかい?」
軍曹は、悪戯っぽくミハルに訊く。
「はあ、中戦車と訊いておりますが。詳しくは教えられておりません」
「ふむ。中戦車ねぇ。まあ、確かに中戦車だが・・。見てみるかね、自分が乗る車体を」
マクドナード軍曹が班員が作業をしている後ろの方に目を向けてミハルに言った。
「え、あ、はい。見てみたいです」
ミリアが袖を引っ張るのを気遣いながらも興味には勝てず、思わずそう答えてしまう。
「そうか、ならこっちに来な」
軍曹は先に立って、暗いガレージの奥へ歩いて行く。
その後をミハルは、ミリアと共に付いて行くと、重々しいそれがあった。
「これが、お前さんが乗る中戦車。
正式名称はないが、M-M-T3。通称マギカ・ミディアム・タイプスリーだ」
軍曹は、ガレージの電灯を点けて言い放った。
((バチンッ))
電灯の灯かりに照らされた戦車が、ミハルの瞳に映る。
夏季迷彩を施されたその車体は、如何にも荒削りで、角張った車体をしている。
被弾時の貫通力を損なわせる傾斜装甲を取り入れていない垂直に近い装甲板。
それほど幅広くないキャタピラ。
ミハルの正面からの印象はそんなに力強く、強力な戦車とは思えなかった。
唯一力強く思えたのは。
「これは・・この砲は?」
砲塔から長く突き出た砲身に、目が引き寄せられる。
<この車体に、この長砲身。対戦車戦向け・・だよね>
ミハルが見上げて、誰言うとなく呟くと、
「47ミリ、砲身長65の対戦車砲・・・この戦車専用の試作品さ。
徹甲弾なら、1800メートルで65ミリは撃ち抜ける。
まあ、カタログで・・・ならばの話だが」
「そんなに?47ミリで撃ち抜けるんですか!一体初速は、何百メートル有るんですか?」
ミハルはビックリして軍曹に訊くと、
「AP弾なら1060メートル、APCR<鋼芯徹甲弾>で1170メートルってとこだな」
「すごいっ!そんな初速で撃ち出せるなら、装薬も薬莢の大きさも普通の47ミリより大きいですよね」
ミハルは目をキラキラさせて、軍曹に訊く。
「はっはっはっ、さすが砲術科率だな。やけに詳しく訊くじゃないか」
「あっ、すみません。つい・・・」
ミハルは、興奮して赤くなった顔を、さらに赤くして謝った。
「はっはっはっ、謝らんで良いよ。
そうだな、通常の47ミリ対戦車砲の砲身長は、55だからな。
砲弾も長いし、重さも倍近い。慣れなきゃ75ミリ砲弾より重く感じるぞ」
「そんなに?私、上手く扱えるのでしょうか」
「ミハルは、学校出てから直に此処へ配属されたのかい?」
「・・・。いえ、一度実戦を・・。実戦を経験しました」
「ほほう!実戦経験有りは、バスクッチ曹長以外は初めてだな。何処の部隊に居たんだ?」
「・・・。あの、答えねばなりませんか?」
ミリアはミハルが深く沈んだ瞳で、うな垂れるのが気になった。
「あ、いや。言いたくなければ強制はしない・・・。
まあ、実戦経験があるって事が解ったからな」
ミハルが目に見えて沈み込むのが解って軍曹が無理強いを控えた。
「そうそう、ミハル先輩。早く指揮官に着任の挨拶をしに行きましょう」
ミリアが気を利かせて、ミハルを引っ張る。
「そうだな、行って来い。また後でこいつの事が気になったら見に来ればいい」
マクドナード軍曹も、気を使ってくれた。
「はい。では、失礼します」
ミハルは軍曹に敬礼して、その場を離れた。
<何があったんだろう。ミハル先輩の所属していた部隊に?>
ミリアは後から付いて来るミハルの事を思って考えた。
<あんなに目に見えて沈み込んでしまうなんて。よっぽど辛い事があったんだろうな>
ミリアはミハルの事が気になって仕方なかった。
「あ、ミハル先輩。ここが指揮官室です。お戻りになっておられるとよいのですが」
「うん、そうだね。・・・じゃあ、此処から先は私一人で入るから。ありがとう、ミリア」
「いえ、それでは失礼します」
ミリアはミハルにお辞儀して戻って行った。
「指揮官か、部下が信頼できる人ならいいんだけどな」
ミハルは衣服を正して、ドアをノックする。
「失礼します。本日付けをもって本小隊へ配属を命じられました。
島田美春と申します。入って宜しいでしょうか?」
ミハルはなるべく元気良く申告するが、中から返事は返って来ない。
<まだ戻られていないのかな?>
ミハルが暫くそのまま黙って立ち尽していると、突然ドアが開いて、
「えっ!?何?」
開いたドアから手がにゅっと出て来て、ミハルの手を掴むと、
「さあ、入って!」
女の人の声と共に、中へ引っ張り込まれる。
「わっ!何ですか!?」
勢い良く室内へ引っ張り込まれて慌てるミハルに、
「いらっしゃい。新入りさん」
ミハルの前に金髪の少女が居た。
「え?あっ、あなたは!」
ミハルは驚いて声に出してしまった。
目の前に居るのは此処に来る前に見た、あの乗馬をしていた女神の様に美しい人。
ミハルに微笑んでくれた女性士官だった。
「あら、昼間に出会ったわよね。そう、貴女が新入りさんだったの」
ミハルの前に居る少尉の肩章を付けた士官があの時と同じ様に微笑んでくれた。
「あ、いえ。失礼しました。自分は島田美春一等兵であります。
本日付けをもって陸戦騎独立第97小隊付を拝命しております。よろしくお願いします」
姿勢を正して敬礼し、着任の挨拶を申告するミハルに、
「シマダ、ミハル・・。そう、あなたが・・・」
目の前に居る金髪の女性士官が確認する様に呟く。
「?」
ミハルは女性士官が呟くのを、聞き漏らさなかった。
<この人・・・私の事を知っているんだ。少なくとも前の部隊での事を。
考査表渡していないのに何故知っているんだろう。そんなに私って悪名高いのかな>
「あの、指揮官。私の事を御存知で?」
ミハルは恐る恐る女性士官に訊くと、
「あ、そうそう。指揮官って呼ばれるのはちょっとね。
私の事はリーン。リーン少尉って呼んでくれるかしら、ミハル」
「えっ!?あの、はい。リーン少尉」
ミハルは少尉にはぐらかされてしまう。
「私の名は、リーン・F・マーガネット。リーンって呼ばれているわ。ここではね」
「はい。解りました。
それではリーン少尉・・・私の事を知られていますよね。先程の口ぶりならば」
「えーっと。ミハルは砲術科出身って事と、移民の子で・・、女の子って事位かな」
リーン少尉は顎に手をやり、思い出す素振りをしてミハルの質問に答える。
「少尉、それは今観た所の印象なのでは?
私の言っているのは此処に来るまでの経緯を言っているのです。
・・・その、ご存知なのでしょう?私の過去を」
ミハルはリーン少尉を見つめて、問い詰める。
「うーん、知らないわ。貴女の過去なんて。
まあ、考査表を渡してくれたら知ってしまう事になるだろうけどね」
<上手くはぐらかされてしまったな>
ミハルは唇をかんで俯いてしまった。
「あー、ミハル。私を疑ってるでしょう。
ホントに知らないのよ。
それに私、他人の過去なんかに触れたりするのが嫌いなの。信じてよね」
リーン少尉は士官らしからぬ口調で、ミハルに話す。
「は、はあ。解りました。では、考査表をお渡しします。
それを見て頂ければ、私の前所属も載っていますのでどう判断されるか教えて下さい」
ミハルは懐から一通の用紙を取り出して、リーン少尉に手渡した。
リーン少尉は、手渡された用紙を無造作に拡げて目を通す。
<少尉はきっと思うだろうな。他の人と同じ様に、嫌な奴がきやがった・・って>
ミハルは、リーン少尉が、きっと嫌な顔をするものと思っていたが、
「ふーん、皇国陸軍第4師団第1戦車連隊で、実戦経験があるんだ。
すごいね、砲手として2両も撃破したんだ」
リーン少尉は、顔色も変えずミハルを見て言った。
そんなリーン少尉の反応に、かえってミハルは動揺して、
「あの、少尉?考査表を良く見て、読んでください。
書かれている事は事実ですから。私はあの時に・・・」
「うん。読んだよ。部隊は全滅、生き残ったのはたった一人。
貴女だけって事でしょ。良く生還できたわね、凄いよ」
ミハルは唇をかんで、リーン少尉を見詰める。
<どうしてそんな軽口が言えるの?あの時の事を知りもしないで。
あの時どんな事が有ったかも知りもしないくせに・・・>
ミハルが涙が溢れてくるのを必死に押えていると、
「良く生きて戻ってくれたね、ミハル。
どんな酷い事をされたかは、私には解らない。
だけど、死に急いでは駄目だよ。
そう・・・生きて、生き抜くことが死んで行った人達への慰めになるんだから」
<生きる?生き抜く?私が?仲間の唯一人でさえ救う事が出来なかった、この私が?>
ミハルはリーン少尉の言葉に考えさせられる。
<そう、私はまだ死ねない。死んでしまいたいのに、死ねなかった。
私には友との約束、弟との約束があるから・・・>
「リーン少尉、私はそう簡単に死にませんよ。
今までもそうであった様に、どんな辛い目に会ったって、耐えてきたのですから」
ミハルは、リーン少尉に自分の考えを告げた。
「そうか、ミハルは強い女の子だね。
気に入ったわ、喜んで第97小隊員として迎えてあげるわ、宜しくね。」
そう言って、右手を差し出すリーン少尉に、
「あ、はい。こちらこそ、宜しくお願いします」
慌てて右手を握り返し、握手を交わす。
<変わった人だな、リーン少尉って。
皆が嫌がった私の経歴・・・酷い人は死神って呼んだ位なのに>
ミハルは、リーン少尉と握手を交わしながらそう想った。
「さてと、ミハル。他の皆に挨拶してもらうわ。着任の儀式みたいなものだからね」
リーン少尉は制服を正しながら、ミハルを伴って広場へ向う。
「はい、了解です」
ミハルは、リーン少尉と共に歩いて行った。
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