第23話 過去のオレ
一方、魔の国のチェイスとはというと。
「んー!!今夜は、オリビアの警護もないし。オレも、たまには遊びに行こうかな~」
そんな独り言を呟きながら、歩いていると。
「お?チェイスじゃん」
「ん?ああ、オスカー」
繁華街を歩いていると、頭上から降りてきた聞き覚えのある声にチェイスは上を向く。そこにいたのは、フードを深く被っている青年が屋根の上に乗っかり林檎をかじりながら、彼を見下ろしていた。
彼の名前は『オスカー』チェイスと同じ、キメラの種族で彼のヤンチャ時代の友人だ。
「よっと!!最近、チェイスここらへんいねえなーって思ってたところだ」
「あん?まぁ、仕事だ・・・」
チェイスは、ハッキリ言うとオスカーが苦手で仕方ない。金の為なら、平気で人を殺せるオスカーとまさか会うとはチェイスは、夢にも思わなかった。
「仕事?あのチェイスが?ああ、確かオリビア様のなんとかっていう警備隊に選ばれたんだっけか?」
「おう。まぁ、そこそこ忙しいからな」
「へぇー。じゃあ、結構貰ってるんだ?」
「何を?」
「金に決まってんだろ?」
嫌な予感が的中した。コイツは、いつもそうだ誰かしらにいつも金をせびったり、強盗したり、やり方が汚い。そんなオスカーのことを嫌いで仕方ないチェイスである。
「んな、あのオリビアが給料弾んでくれるわけねえだろうが」
「ハハッ!確かに。それよりさ~いい儲け話があんだよ」
でたよ。と、思わず口から溢れてしまうチェイス。彼の肩にダル絡みをして顔を近づける。
「神の国の次期女王いるじゃん?」
「リルちゃん?」
「リルちゃんって誰だよ」
「ああ、わりぃ・・・。シェリル様がなんかあったの?」
「アイツの暗殺計画について知ってる?」
「・・・は?」
『暗殺計画』その言葉を聞いた時、チェイスの頭の中が真っ白になった。
「神の国と魔の国でまた戦争を始めるんだよ。その前に指揮官のシェリルを殺す。良いアイディアだろ?ここじゃ、話しづらい話だから場所変えようぜ」
二人が向かったところは、人気のない路地裏。
「で?詳しい話、聞こうか?」
オスカーは、壁に背中を預けながら話の続きを始める。
「第一次戦争で、負けたがゆえにこの扱い。治安は、悪くなる一方。しかも、俺たちキメラはもともとの嫌われ者。俺は、嫌だね・・・こんな世界。なぁ?チェイスこの国を一緒に変えようぜ?革命を起こすんだよ!!」
「待て、お前がシェリル様を殺すのか?」
「はっ、そんなの暗殺希望のヤツなんて腐る程いるぜ。あとは、我らが次期女王様に全て任せればこの革命に勝てるってワケ」
「つまりは・・・シェリルを殺して、それを全てオリビアになすりつけるって話か?」
「ああ、明暗だろ?お前も混ざれよ・・・なぁ?」
全ての話を聞いたチェイスは、オスカーを殴り飛ばす。
「戦争はとっくに終わったんだよ。いつまでも過去に縛られてんじゃねえぞ、胸クソ悪い」
「いってぇな!!なにすんだよ!お前だって、こんな世界変わればいいって思ってるんだろ?!」
「てめえと一緒にすんな。いいか?よく聞け・・・リルになんかしてみろ・・・てめえのその可愛いうさぎ耳をこの手で引き裂くぞ」
「俺になんかあったら、俺の仲間がお前を殺すことになるぜっ!!」
「勝手にしな。俺は、もう逃げも隠れもしない。リルは、俺が護ってみせる」
「後悔してもおせーからな!!!!」
「じゃあな」
その場から去るチェイスを追ってこないオスカー。再び、繁華街を歩いている。
チェイスは思う。
確かに、俺にもあんな荒れていた時代は確かに合った。悪いことをして、傷つけて傷つけられてオリビアに叱られやっと出来た居場所を・・・。
「あっ!!チェイスくん!!」
「ん・・・?リル?!と、オリビア」
「なんで、私にはそんなテンションが低いのよ」
「いや別に。いつも、顔見合わえてるし」
「確かに」
「これから、先生のお家に行くの!!チェイスくんも行こう!!」
果たして、オレはこの笑顔を・・・。
「なにぼーっとしてんのよ。さっさとくる」
この居場所を・・・護れることができるのだろうか。
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