第24話動き出した犯人 ⑨

「何かの間違いじゃないのか?」

「いえ、間違いないです。僕が直接行ってこの目でしっかりと見てきましたから」

「しかし…………、僕はそんな事をしてはいないし、預かり知ることでは無い」

「そうですか。では、少し質問させて頂いても宜しいですか?」

「ああ」

「先輩は一年生の唯倉 美咲っていう人物を知っていますか?」

「唯倉…………?」


 香月先輩は少し考えてから口を開いた。


「いや、知らないな」

「では、先ほどお話した。監禁の件ですが、科学生物部室に弓道部の弓と矢を使った仕掛けがしてありまして、扉を開いた人物を刺殺、若しくは怪我をさせることが可能になっていたのですが、この事もご存知ありませんか?」


 この話を聞いた途端に、香月先輩の顔色がどんどん赤くなっていった。


「なんだと! 部室に仕掛けだと!」


 今までの冷静な声が、嘘のように興奮して大きな声になっている。


「だ、誰がそんなことを! 勝手に部室に入ったって事か! 絶対に許さん!」


 香月先輩は何かに取り憑かれたように、興奮状態のまま教室を飛び出して行った。


「和紗くん、行かせていいのか? 証拠の隠滅を図られるぞ」


 一部始終を見ていた小早川部長が、俺に話しかける。


「はい、いいんです。それにこの事件は本質が違うんです」

「本質が違う? どういう事?」


 部長と知夏ちゃんは、怪訝そうな顔で俺を見ている。


「えーっと、ごめんなさい。もう少し時間を貰えますか? そうすれば、はっきりとした答えが出せるので」

「あ、ああ、和紗くんがそう言うんだったら今は聞かないでおくが…………」

「すみません。ありがとうございます」


 俺の中で不確かで、違和感を感じた部分の答えが見え始めている。ただ、その答えにたどり着くにはもう一つの確証が必要になる

「すみませんついでに、お願いがあるんですが」

「そんなかしこまる事は無いぞ。和紗くん、何でもこの小早川にド〜ンと任せなさい!」


 そう言って胸を右手で叩いて、ゴホゴホと咳き込んでいる。


「あはははは、お約束ですね」

「だな。あはははは…………」


 知夏ちゃんはこんな俺たちを見て、やれやれって様子で、両手を横に広げて首を横に振り呆れている。

 ひとしきり笑った後、俺は小早川部長に、四つ折りの紙切れを渡した。


「これを調べて欲しいんです」


 紙切れを開いた部長の表情が次第にこわばっていく。


「…………本気か?」

「本気です」


 部長はフーッと深いため息を吐いた。


「分かった。調べてみる」

「お願いします」

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