眠れる獅子

「ラジアナ、オマエも一緒に行くノラ」


「え!?」

シューン!!!


ラジアナには状況を理解する間もなく、

次の瞬間にはアイピスと一緒にネイピアの目の前に瞬間移動していた。



「お子様は隠れんぼにもう飽きたので

おしまいにしたくて来ました。

これはつまり、そういう意思表示ととらえていいのよね?」


「ネイピア、オマエうざいノラ!」


「フフフ、冗談よ」


「それより、一緒に戦う強敵って一体どこにいるノラ?」



「ついさっき貴方の中に仕掛けられた時限爆弾よ」



「ちょ、何言ってるのかさっぱりわからんノラ!

ついさっきって一体いつなノラ!?」



「私達があなたと接触する前よ」


「オイラがオマエらと接触する前!?

受け応えがいちいちまわりくどくどいノラ。

結局、どういうことなノラ?」


「要点だけを単刀直入に話しても、

あなたの足りないおつむでは意図を理解してもらえなさそうだから。

私としてもすごくまわりくどくてめんどうではあるのだけれど仕方なく諦めて順を追って話すことにしたのよ」


ムカー!!

「その言い方、ムカつくノラー!!」



「何をキレているの?

状況は一刻を争うの。

黙って話を聞きなさい」


「むむ……、まあここは仕方ないノラ」


「よろしい。

私とラジアナがナルータと戦っていたことは貴方も知っているわよね?」


「おう、アイラ様と一緒にオマエらの戦いは観察していたのら」


「ナルータが中性子星になったとき、

私はラジアナと協力してナルータを元に戻したけれど、

全ては解決できなかったみたいなの」


「どうしてなノラ?」


「私達が中性子の塊と化したナルータと戦っている間に、何者かがナルータの体内に漂う単体のクオークの塊からクオーク物質を取り出したの。

 そしてアイピス。あなたの細胞の中に埋め込んだのよ」


「何者かしらないけど、オイラの体になんてことしてくれるノラ!

でも、そのクオーク物質と時限爆弾と何の関係があるノラ?」


「あなたの身体を構成するたった一つの細胞に注入されたクオーク物質。

それは本当に小さなサイズで、今の段階ではまだ何も起きないわ。

だけれど……」


「こ、怖いノラ。勿体つけずに早く続きを話すノラ!」


「そのクオーク物質内部の圧力がある一定以上高くなると、中に存在せるクオークが次々と負に帯電したストレンジクオークに変化し始めるわ」


「負に帯電したストレンジクオークに変わるとどうなるノラ?」


「ストレンジクオーク同士が結合しストレンジ物質が生み出されてし……」


「どうしたノラ?

早く続きを」

「アイピス、急いで右腕を切り捨てなさい!!」


「は!?

どういうことナリ?」


「時間が無いのよ、早く!!」


「わっ、オイラの右手が……、


無い」


「間一髪ってところね。

ラジアナ、ありがとう」


「アタシは攻撃出来る必殺技とか無いからね。

護身用のつもりでダークウェブで日本刀ポチっといてよかった〜。

アイピス、あんた……命拾いしたな」


「ラジアナ オマエ、何勝手に一人でカッコつけてキメ顔してるノラー!!」


「何って、アタシはあんたの命の恩人だぜ?」


「人の腕斬り落としておいて、一体どの口が言うノラー!!」


「落ち着きない、アイピス」


「ネイピアまで。何なノラ?」


「アイピス、あなたの能力で斬られた腕は簡単に元に戻るでしょ。

 それに、ラジアナの言葉は一理あるわ。

今、ラジアナに斬られたあなたの右手、どこにあると思う?」


「どこにって、多分斬られた時にあっちの方に……、って無いノラ。

オイラの腕、一体どこにいったノラ!?」


「斬られた貴方の腕はね、今はもう目では見えないくらいの大きさになって辺りを漂っているわ」


「し、信じられないノラ……」


「わかったかしら。

残念だけど、あなたに仕掛けられた時限爆弾は発動してしまったの。

 ラジアナに感謝なさい。

あなたの身体から右腕を切り離すタイミングがあと少し遅かったら、

今頃あなたはもう、存在していないのだから」

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