第195話「駒と王」前編
第二十話「駒と王」前編
八月初旬――
「非公式とはいえ国の代表同士が会見する場に私が同席するのは当然でしょう?」
暗黒色に輝く
「う……まぁ、良いけどな」
受けて俺は渋々頷く。
――
この一連の流れの大元は数日前に遡る。
我が
その釈明だろう、国家代表が直々に
言わずもがな、宗教国家”
”
――
「そう、だったら……」
俺の許可を受け、
――とはいえ
実際、今回の事である意味、我が
――
と、思わなくも無いのだが……
「……」
俺にはもっと身近な問題が目の前にある。
そう、俺の眼前には――
「……むぅ」
「
「
この見た目は最高に可憐で美しい
「いや、
飽くまで参謀の様なモノだと、俺はなんとかそう理由付けてなだめるも、
「むぅ……さいかはときどき優柔不断」
「くっ!」
――この天然娘、たまに核心を!?
密かに精神的ダメージを受ける俺だった。
実際、次の”大戦”に向けての準備で大忙しな我が
だが、そう説明したところで、色々と
――まぁ、
「直接”剣”を振り回す非効率な作業でしか
――っって!?
誰が駄々を……じゃなくて!
なに嫌みたっぷりに対抗してんのっ!?
「け、剣だけじゃない!わ、わたしも……離したくないって……駄々をこねられる…………予定」
余裕たっぷりな暗黒姫になんとか反論する騎士姫だが――
――いや、だから俺は……そんな駄々は捏ねない
「そう、そこに置いて……良いわ」
そして当の
既に
「…………なにしてんの?お前ら」
俺は作業に忙しい二人の女……
「ええと、
二つの三つ編みで
「あははっ!”
「はい。今は姫様の命で動いておりますので……私も”
「……」
二人は豪奢な椅子の設置を終えて、振り向いてからそう応える。
――
天真爛漫な剣士である
二人は
故に、今は本名で無くて
「そういうことじゃなくてな、お前等がなにをしてるかと……」
「良い感じだわ」
「……」
俺の疑問は、既にその椅子に腰掛けてご満悦の美姫を見て全て解決した。
「
「ず!ずるいっ!!」
俺が言うより早く、段下から
「ふふ……”弱っちい”私は護衛には向かないから。残念だけど、こうして大人しく
「う……ぐぎぎぎぃ!!」
そして
まるで漫画のキャラみたいなコミカル
――
―
そんなこんなで来賓を迎え――
謁見の間に来訪した”
「……ぁ?」
「……うっ!」
主賓である
「…………お、おお!?」
そしてもう一人の従者である男は”あんぐり”と……
「……」
俺が今まで見てきた男達同様の反応だった。
玉座隣に座した”至上の美姫”・
――まぁ、色々と……無理も無い反応だ
「う、ごほん!
――
その後は俺の言葉を皮切りに
「は、はい、
玉座に座した俺の前で軽く頭を下げてから謝罪を始めたのは、
「……」
大きめの潤んだ瞳は少し垂れぎみであり、そこから上目遣いに俺を伺う様子はなんとも男の保護的欲求がそそられる……
相変わらず誰の異論も挟む余地の無い美少女であるが、どこか頼りなげな仕草と雰囲気から美女という表現よりも可愛らしい少女の印象が一際強い特異ともいえる魅力がある美少女。
「ですが、我が
その巫女姫は、”本日は”どうやら外行きの”猫っかぶり”モードの様子だった。
――以前に会った時と基本同じ巫女装束だが……
「……」
俺はその
――この季節に首まで覆う衣装はどうなんだ?
と……
「それで、え、えっと?どうかされましたか?
――おっと!?
観察するのに気を取られてしまっていた俺は
「貴国の事情は理解した。一国を率いる身となれば事情も様々、気にされることはない。それより本日は巫女姫殿の護衛に見慣れぬ顔があるが?」
俺は予定通り謝罪は快く受け取り、そして咄嗟に誤魔化して話題を変えた。
「は、はい……か、彼も
――?
なんだ?
適当に話題を振っただけなのに、なんだか妙な反応だな?
俺は違和感を覚えながら取りあえずもう一度、
――
”
片方は既に見知った顔の、前髪を横に流したミディアムヘアで
そして、もうひとりの男が初見の……
「……」
年齢的には三十前後、目付きというか、ガラの悪さを全身から醸し出す痩せ男だ。
「
――口を開いた”ガラの悪い男”は……中身も見た目通りだった
「どんな理由でだ?」
俺は礼儀とかはあまり気にならない方なので、それを軽く流して理由を問う。
――まぁな……
「……」
実際、
良家の子女としてはどうかと思う行儀であるが、豪奢な椅子の肘掛け部分に頬杖を着いているし……
「……♪」
基本この娘は相手に”殺気”さえなければ特にその辺は関係ないようで……
「あ、あの、”魔眼”という共通の宿命を背負う者同士、あの……
そして俺の問いには、その”ガラの悪い男”でなく
「……」
――成る程、それらしいが……なんとなく違和感もある
「あの……駄目でしょうか?」
――だが
断る理由は在るかと言うと、それも無い。
「許可しよう。但し護衛は十名以下で頼む。向こうもバタバタしているだろうからな」
恐る恐る確認してくる
「はい……有り難う御座います」
「……」
――よそ行きの猫かぶりモードだとしても本日の
――変だ
「では私共はこれで……」
どこか違和感を覚えつつも、俺は頭を下げてから別れの挨拶をする
「あの!
――と、その時
用件も済み、まさに去ろうと挨拶をする
「?」
――
――今回は”やけに静か”だと思っていたが……
「すみません。今回ご迷惑をおかけしたのもありますので……
――名産?……手土産の話なら事前に聞いている
荷車二台分もあったそうで、それらは既に倉庫へと納められたと。
それに、俺はそれが主君の言葉を遮ってまで捻込む話かとも思ったが……
「ああ、聞いているぞ。確か名物の”
取りあえずは頷いてみせた。
――
「はい。既に受け渡しはさせて頂きましたが……特に選りすぐりを手元に持参も致しましたので、ぜひ!」
そう言うと
「お、おう?それは……ご丁寧に」
――”選りすぐり”?
量産のお菓子にそんなものあるか?
思いつつも俺は、それを物欲しそうに見ていた
「……」
一見、
だが、なんというか今回は様子が違った。
しかし――
「では我々はこれにて失礼致します」
最後に数秒間、俺の顔をジッと見た
「……」
受け取った”
俺は確信する。
――
「どう思う?」
そしてそれだけ問うと、隣に座った美姫は
「こんな解り易い伝聞はないでしょう?」
「だね、お早くお召し上がり下さいってことだよ、さいか」
”
「……」
「……」
俺と
――食いしん坊騎士姫の手に有るのは……
包装紙の”両端が紐で固く結ばれた”銘菓。
――
俺は軽く溜息を吐いてから呟いていた。
「
第二十話「駒と王」前編 END
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