第37話「最嘉と臨海国の面々」前編(改訂版)
↓最嘉と壱と真琴、スリーショットです↓
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第三十七話「
それは中々に見事な一品だった。
細みの刀身に
零れ入る光を
精巧な飾り細工の施された白漆の鞘が艶っぽく輝く。
真に映える見目麗しき純白の佳人……
そういう表現が頭に浮かぶ至高の逸品だった。
――スチャ
俺はその芸術品とまで言えるような出来映えの片手剣を鞘に収める。
「どうだ逸品だろ?
椅子に座ったままの俺は、目の前に立つ
「これをわたしに?」
「ああ、以前お前の愛剣を駄目にしてしまったからな、出入りの刀鍛冶に注文していたんだが今朝届いた。ある意味、タイミングばっちしだったかもな」
「……」
俺の話を聞いているのかいないのか、
――ヒュヒュ!ヒュオン!
「っ!」
「……うん、良い」
満足そうに綻ぶ桜色の口元。
対して俺は、多少なりとも全身が強張っていた。
――おいおい……
あの瞬間、俺は最低でも一回は斬られただろう。
目前で軽やかに舞った白い軌跡……
一見して”一振り”
運良く見極められたとして”二振り”
”三振り目”は全く見えなかった。
見えなかったのに何故”三振り”と解るのか?
それは、後を追うような風切り音が僅かに三重になっていただろうという事象からの予測だ。
――後を追う……
――音より遙かに速い剣筋かよ……
「さいか、ありがとう。すごく良い
俺の心中にある畏怖と全く別世界の存在、極上な天使の笑顔がそこにあった。
「そ、そうか……気に入ってくれたなら何よりだ。で、それの銘だが”
平静を装いつつ、俺は応える。
「
そう言った雪白は、少し恥ずかしそうに白金の瞳を伏せて、今よりもずっと小さい声で呟く。
「えっと……”これ”と
「
「ああ、そうだなもう要らないな」
俺は
――うむ、中々に落ち着くものだなぁ
久しぶりに装備した相棒は、思っていたよりもしっくりとくる。
あの戦争中に
今まで代用として彼女に俺の剣を貸していたのだが、彼女に俺の剣はやや重すぎる上に長さも合わない。
対して、今回出来上がってきた”
これでベストパフォーマンスの”
「……なに?」
彼女の顔をじっと見つめていた俺に
「ああ、剣を与えておいてなんだが……無茶はするなよ、どうもお前は危なっかしい」
「……」
「確かにお前の腕前は最強レベルだが戦場では個の強さは絶対じゃない。そもそもお前は全然意外じゃ無くて抜けたところが多々あるし、結構気分で動く……」
「そんなことない!わたしだって色々考えてるし、いつも無茶する、さいかに言われたくないわ!」
「俺のは計算だ。ちゃんと先を考えて……」
俺の言い方が悪かったのか、
勿論、俺も引き下がってはいな……
「……って、そういえば、あの時の
猛抗議する
用意周到な
戦のどさくさに紛れて邪魔の入らない三者会談を画策した俺があの場に現れるのも、ある意味、最悪の
最悪、
だが、それにしても聡明で知られる”
そして、
だが、結果は本当にギリギリだった。
もしかしたら、俺が間に合わない最悪を通り越した
そんな状況に陥った時の為に、最後の最後の切り札として
――
だが、どうも俺には”
「だなぁ……それによく思いだしてみると、五対、十個の指輪のはずが、
――徹頭徹尾
俺は、実はあの時も気づいてはいたがあえて触れなかったその事を、今更ながら思いだして残念がっていた。
「
「?」
目の前に
「えと……
「していなかったのは左手の薬指……だよ」
「あ……」
意外にも鋭い
――少しだけ困難かもしれないけど、それを”婚約指輪”として受け取っても良いわよ
――
そう言った!確かにあの時……
”
「い、いや、まさか……
言いながらも、俺の頬には熱が廻って……
ドカッ
「いてっ!」
座ったままの俺の足を軽く蹴っ飛ばす、
「お、おい!」
「……………………なんとなく」
「……
――なんとなくで
「…………ばか」
そして何故か蹴った方の加害者が理不尽な言葉をポツリと零し、手にしたばかりの愛剣”
「行くんでしょ?”なんとか会議”……遅れるよ」
俺が反論を発する間もなく、
「そ、そうだな……」
一息遅れて俺も立ち上がった。
そう……今日は大事な日だ。
ここから――
――
―
第三十七話「
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