第28話「最嘉と食客の義務」(改訂版)
↓久鷹 雪白のイラストです↓
https://kakuyomu.jp/users/hirosukehoo/news/1177354054892613273
第二十八話「
――引っかかっていることがある……
この
ひとつ、
ふたつ、
みっつ、
そして最後に……要塞”
海戦を得意とする
――ギィコ、ギィコ
「結局、さいかはどうするつもり?」
――ギィコ、ギィコ……
波に大きく煽られながらも必死に
そこに搭乗した俺と数人の
「
俺を追いかけて来た美少女といえば、可愛らしくもいじらしい限りだが、実際は俺の監視が目的だろう。
「結局、さいかは……どうするつもり?」
俺の呆れた顔にも、少女は白く整った顔を少しも崩さずに、時間が巻き戻ったかのように繰り返す。
「……
「……」
「だからといって、
「……さいかの言葉は意味がわからない、そういう言い方は……」
「はぐらかされているみたいで嫌か?」
「……」
俺の
――気に……食わないな……
「俺が”引っかかっている事柄”から推測すれば、
「……」
主君である
一見、表面上は全くの鉄面皮だが……
なんとなく俺には”
「で、結論だ!この勝負がどうなるにしても、今はまだどちらにも滅んで貰っては困るから、俺がちょうど良い加減に調整する!」
「……」
――ほら、解る……今は驚いて呆気にとられた顔だ
「……さいかは……自分勝手だね」
そして
「今頃気づいたのか、お嬢さん?」
「ううん、もっと前からそう思ってた……自由な”さいか”……でも私は……」
冗談めいて応える俺に、少女は戸惑いがちにして……またも視線を……
――ちっ!今日何度目だよ、
相変わらずの受け身体質、感情の忘れた人形を装い……
そうする事で何から逃れようとしているんだ?
俺はまた……苛立っていた。
「
「……なぜ?」
ガラリと変わる話の内容に、
「
「……」
――いや、無理がある
――てか、どんな理屈だ!
”食客である以上、俺を護る義務がある”まではなんとか理屈が通っていても……
”その剣を見せろ”は、自分で言っていて意味不明だ。
――しかし
「
俺は
「う……うん?うん……」
だが、その直後に今度は手のひらを返したように、俺は
「?」
先の
「…………」
どうも
故に……命令を確実に
非常に面白くないが、
「…………」
「無論、
「…………わかった、
そう答えながら
「ああ、頼もしいよ」
受け取って、暫く繊細な細工の施されたエナメル調の白い剣をあちこちチェックする俺。
「…………」
その光景を
「?」
俺と目が合った瞬間、彼女の白い銀河が不自然に
「………………
「……」
聞き取れないほどのか細い声。
俺がそれを”聞き取れないであろう”と感じる位の声で……
「……」
しかし確かに俺が、それを”ギリギリ聞き取れるくらい”の声で……
「…………兎に角、行くぞ!時間が無い」
「…………う、うん」
短く返事した彼女の瞳が一瞬だけ落胆した色をみせ、そして同時に安堵に染まるのが解る。
「……」
――
――
その時俺が察した、恐らく
――
―
「
肩に片手で刀を担いだ、一人の軽率そうなニヤけ
「……」
ニヤけ男の足下には、乗り込んできた
「……うむ」
スキンヘッドの無骨な男が”ずいっ”と主君である
「姓名を所望する」
そしてニヤけ男に短くそれだけ要求する。
「今から死んじまう輩に俺の名前が必要とも思えんがね……」
――ザッ
そう受け答え、刀を片手で担いだまま無造作に前に出るニヤけ男。
「……」
それを刀身越しに正面から見据えるスキンヘッドの男。
――途端に周囲は張り詰めた緊張感に満たされ……
「……」
「フッ」
それが頂点に達しようとした瞬間、ニヤけ男は肩の上の刀をダラリと降ろして笑った。
「?」
「そうだなぁ、名乗りは必要だな……武人のエチケットだ」
「……」
ニヤけ男は緊張した空気を壊すように緩みきった口調で自身の主張をなんとも安易に一転させた。
「俺は
「……十剣」
その名を聞いて、スキンヘッドの男の眼が少しだけ見開かれる。
「そうだ、で、貴公は?」
対して何とも緊張感の無い声のまま、聞き返す
「我は
――ビュォン!
「っ!?」
名乗りを促されたスキンヘッドの男が応えきる前に……
ニヤけ男のダラリと下がった剣が下段から斬り上げられていた!
ギィィィン!
激しい金属音と一瞬飛び散る火花!
スキンヘッドの無骨な男……
「ほぉう、中々の反応じゃないか?え、ツルツル親父」
「……」
「全く……”十剣”ち言うが、卑怯な手法を使ってくるもんぜ」
鍔迫り合いで押し込まれていく自分の家臣を前にしながら、今の今まで二人のやり取りを後方から眺めていた
「卑怯?戦場では意味の無い言葉だなぁ」
そしてそれを全く意に介さないニヤけ面の
「……なかなかのもんぜよ、この男」
「
――ギィィーーン!
突如、大きく弾き返される刃!
「っ!」
押し込んでいたはずの
「なんち、言ったが?……なかなかの愚か者よ」
「我は
仕切り直したスキンヘッドの無骨者は、名乗りと同時に大きく踏み込んで距離を詰めた。
ギィィンッ!
ガキィィィンッ!
激しく打ち合わされる二振りの刀身。
ギィィンッ!
ガキィィィンッ!
――が、
次第にその優劣は明らかになっていく。
「くっ!」
ドンッ!
「ふんっ!」
ザシュッ!
「ちっ!」
追い詰められたニヤけ面の男には既に笑みを浮かべる余裕は無い。
ズズズッと壁に背中を削られながら
「うぉぉぉぉぉーーーー!」
「ぬっ!?」
思い切り剣を振りつけて、難なくそれを躱す
「噂に高い”十剣”ともあろう者が玉砕か?」
しかし、
「……」
逆に壁を背負った
……そっと鞘に戻した。
「!?」
「悪いなぁ……貴様みたいな命知らずの剣術バカに付き合ってやるほど俺の命は安くないんでな」
そう言って軽薄そうに笑うと、
「しゅ、主君を捨てて逃げるのかっ!?」
「ふん、主君など……いくらでも替わりはいるだろうがぁ禿げっ!俺様の命は一つだけなんだよ、ばぁーか!」
臣下とは、武人とは到底思えぬ暴言を吐いて走り去る男は、呆気にとられた
「信じられぬ……これが”十剣”……いや、
言葉にならずに立ち尽くす
「まあ、なんぜ……色々と居るじゃろう……
そう言いながら中性的な顔立ちの男は、既に守る者のいなくなった扉を見る。
「なんち……これでようやっと”
第二十八話「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます