第2話 「最嘉と恋文」(改訂版)
↓久鷹 雪白のイラストです↓
https://kakuyomu.jp/users/hirosukehoo/news/1177354054892613273
第二話 「
「あー今日からまた学校かよ、かったるいなぁ」
「そう言うなよ学生は学業が本分だろ」
「私はこっちの世界の方が平和でいいなぁ」
「…………」
俺は校門前を騒がしく行き交う生徒達を見ていた。
市立
少しだけ立ち止まっていた俺は、それ自体が中身より重いんじゃ無いかという薄っぺらい革製の鞄を肩に背負い、とぼとぼ歩き始める。
「あ、おはよう!鈴原くん」
「おぅ、おはよ」
「ふふ、あのね、鈴原くんは……」
校門に入る直前、クラスメイトの女子が俺を発見し
キキーー!
「あっ」
俺に話しかけようとしていた女子が、校門前に停まった黒塗り高級車を見て短い声を上げる。
バタンッ!
運転席から素早く回り込んだ男が後部座席の重厚なドアを開き、中の人物を恭しく送り出す。
「……」
「……」
続いて優雅に揺れるプリーツスカートの裾を上品に押さえながら制服姿の清楚可憐な、如何にもお嬢様な少女が姿をみせた。
清楚で可愛らしいながら大人っぽさも感じさせる黒髪のショートカット。
校則のお手本通りきっちりとただした制服姿はその小柄な少女の性格を表していた。
「あれって一年の鈴原さんだよな」
「ああ、鈴原
「わ、俺初めて見た、か、かわいいなぁ……たしか彼女って……」
立ち止まった何名かの生徒がその少女を遠巻きに眺め、彼女のゴシップを共有している。
「……」
そして当の少女は、そんな大衆には全く興味が無い様子で車から降りて……
ツカツカーー
こっちに歩いて……
ツカツカーー
歩いて……
ババッ!
「うおっ!」
俺のすぐ眼前で土下座した。
ーーざわざわっ!
登校時間帯、生徒達で賑わう校門前で男子生徒に土下座するお嬢様……
ーーいやいや……ありえんだろ?お嬢さん……
手入れが行き届いた綺麗なシルエットの制服が土で汚れることも顧みず、地面に正座して深々と頭を下げる少女。
ーーざわざわっ!
「…………」
勿論周りの生徒達はどん引きだ!
ってか張本人の少女というよりも、清楚可憐な少女にそんな事をさせている傲岸不遜の男に対してだろう。
ーーまぁなぁ……確かに、純真無垢そうな美少女に、こんな事を強いる輩は屑だ!人間のクズ!そうだっ!今すぐ消えて無くなってくれれば地球環境も少しは改善するだろう!
「…………って!?、それ俺だっ!!」
俺はあまりの唐突な出来事にすっかり傍観者と化していたが、遅ればせながら重要な事に気づく。
「えっと……鈴原くん、じゃ、じゃあまたあとでねぇ、あはは……」
俺に親しげに話しかけていたクラスメイトの女子は、なんだか引きつった笑顔で離脱していった。
ーーてか、速っ!?
自身だけは無事離脱に成功する、危機管理能力の高い女子を見送りながら、中々の修羅場に独り取り残された俺は……足下の少女を改めて眺めていた。
「……ふぅ」
そしてため息を一つ。
「
呆れ声の俺の問いかけに黒髪が美しいショートカット少女は、頭を伏せたまま答える。
「……申し訳ありません、
畏まって正座したまま、深く深く頭を垂れる美少女。
「いや、死ぬなよ……そんなことで」
「そんなこと?いいえ、
ーーざわざわっ!
「だ・か・らぁーー!!”辱め辱め”とこんな往来で連呼するなっ!状況的に変な目で見られるだろうが!」
ーー
焦る俺は、地面に突っ伏したショートカット少女に、とにかく起き上がるように促す。
「……う……うぅ」
怒鳴られた少女はそのままの姿勢で恐る恐る顔を上げ、大きめの黒い瞳を潤ませていた。
「ま……まぁ……あっちの世界でのことだし……あの戦自体、俺が
少女の瞳に
ーー目の前の少女、鈴原
向こうの世界、
そして俺にはもうひとり、
同じく俺の
今回あっちの世界での戦に俺は、この鈴原
優秀なんだが、常に冷静に対処できる
ーーいや、そんなことよりっ!!
俺が気づいたのは
「ま、
「あ、ご心配には及びません我が君、私もそこは
ーーお、おぉ……それもそうか、考えすぎだったよなぁ……はは
ーー
「しっかりと型に
「いや!ご心配に及ぶだろぉっ!!それぇぇっ!!」
ーー鈴原
兎にも角にも、少しだけ歪んだ
ーー今日は金曜日、暫くはこっちの生活だが……週明けには
ガラッ!
俺は思案しながら教室の引き戸を開ける。
「おはよう、鈴原くん」
「おぅ!
教室で雑談するクラスメイト達と軽く挨拶を交わしてから俺は自身の席に着いた。
「……?」
そして、すぐに机の引き出しに何かがあることに気づく。
「手紙?」
それはシンプルな封筒。
特に変わったことの無い四角い白い封筒だけど……
それを手に取った俺は無造作に裏返した。
ーーふわり
「……」
僅かに乱れた空気から少しだけ甘い香りが漂う。
そしてその封筒の裏面には……
ーー
白い封筒の隅に、小さくそう書かれていた。
第二話 「
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