恋の手筋200

ぺるそなを

フラれ飛車

『フラれて始まるのが将棋ならば、

フラれて終わるのが恋』


誰かがそんなことを言ったが、

現実はそんなに単純じゃない。


フラれず始まる将棋もあれば、

フラれても終わらない恋もある。

実はそれが一番厄介のように思える。


何故ならば、将棋と違って恋は

明確な終局というものがない。


『付き合う』という結果を勝利、

いわゆる相手玉を詰んだ局面と仮定しよう。


『フラれる』というのが敗北、

要するに自玉が詰まされた局面

ということに果たしてなるのだろうか。


私は決してそうは思わない。

何故ならば、ここからの逆転は

大いにありえるからである。


確かに個人的な経験から言うと、

ここから逆転したケースは1つもない。

限りなく勝ちづらい局面である事は

否定しない。


となると、『フラれた』は

『詰めろ』の状態に近いのではないか。


このまま何もしないと、この恋に勝つことはないし、負けたことになるが、

まだこちらに応手はあるはずだ。


もちろん、この『フラれた』という状態が

『必至』である場合も十分に考えられる。

例えば、「私、彼氏いるんで…」

みたいな状況だ。


これに対しても、部分必至であり、

こちらの応手次第では、必至を解除できる

可能性がわずかながら残っているかもしれないが、それはまた一局だろう。


では、次の局面

「今は誰とも付き合う気ないの…」

これについて考えてみよう。


告白する側を『先手』、

告白される側を『後手』とした場合、

先手にとって、かなり厳しい手と

言えるだろう。


何故ならば、まるで『今』ではない

先の未来のどこかであれば、

あなたと付き合ってもいいですよ…

そう解釈する事が可能だからだ。


では、実際にそうなのだろうか。

答えは超高確率で否である。


この手の厳しいところは、

あくまでこれは一次回答であり、

最終的な結論を無期限に

保留にしているところである。


先手としては、何かしらの策を講じない限り、負ける事はなくとも、勝つ事はない。


期間をあけて同じ告白を繰り返したところで、いずれ千日手になるであろう。


そして、言葉じりを咎めた返しが

悪手になりやすいところもタチが悪い。

例えば3手進めてみよう。


「今は誰とも付き合う気ないの…」

に対して、

「じゃあ、いつならいいの…?」

確かにこう返したくなるのが本音だが、

「今でしょ」

とは返ってこないのが現実。


「そんなのまだわかんないよ…」

のように、具体的な時期が聞く事は

ハッキリ言って期待できない。


では、最善手は何か?

それは私が知りたい。


…と言ってしまっては、

先手も面白くないので、

私ならどう返すかを考えてみた。


「…待っててもいい?」

ここで1つだけ断っておく。


あくまでこれは

『〜的なニュアンス』であり、

この言葉をそのまま返す訳ではない。

想像しただけで、だいぶ気持ちが悪い。


話しを戻そう。

この一手の意味は何か?


それは、少なくとも『過去』から

『今現在』にかけての想いを伝えたと

同時に、不確定な『未来』までもずっと

この想いを継続させますよ…


言うならば、『持久戦』の覚悟は

できていますよ…という意思表明である。


そして、もう1つ。

この手に対する相手の返しで、

「今は誰とも付き合う気ないの…」

の真偽をある程度、測る事ができる。


もし仮に、

「待たせるの悪いから…」

そう返ってきた場合は諦めた方が良い。


「本当は1手で詰めるけれど、

3手も5手もかけて詰むのは悪い」

の略であるからだ。


私は言われた事ないが、

「本当に待っててくれるの…?」

みたいな返しがあった場合は

『先手よし』と言える局面だろう。


ただ、好きになった方が負けである事は

肝に銘じる必要がある。


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