第4話「共存」
共存の国、イマジニア。
人口は、凡そ100万人ほどで、
一つの島から成るこの国は、島の九割を300mほどの高い壁で360度に覆われており、その壁面には5m毎にレーザー砲が配備されている。
その姿は、国と言うよりも、
残り一割は、空港と海港になっており、その傍らには街ほど大きさの入国審査エリアがある。
入国するには、海路と空路の二択しかなく、特に空路の場合、例え、国内機であったとしても、警告の後に返事が無ければ、即座に
「
面倒な手続きではあるが、国民であろうと一旦国外に出れば、例外無く、この審査を受けなければならない。
全ての荷物が検査され、身体検査も受ける。
入国者に拒否権は無く、拒否の場合は、ただ入国できないだけである。
身体検査の際、時折、知らずに重い病気を見つけてしまうことも多く、希望すれば、入国審査エリア内の病院に入院することもできる。
医療技術が最新のため、入国する気はないが、人間ドックの代わりに現れる者も多い。
医療進歩やビジネス、つまりは国益の為に、全て受けるようにしている。
その為、入国審査エリアは巨大施設と言うよりも、一つの街のように成っているのである。
しかし、そんな巨大エリアにも関わらず、セキュリティは万全で、あらゆる所に様々なセンサーや監視カメラが設置されているのである。
「武器を所持しては、イケナイのですか?」
「不安かもしれんが、安全は憲兵が守る。したがって憲兵以外は、武器の所持を認めていない。それが嫌ならば、入国を拒否するが?」
「解りました」
平和を維持するために、国の至る所に憲兵がおり、犯罪を未然に防いでいる。
だがその際は、
そのため、年間の犯罪件数は、100を満たない。
極めて少ないものの、この国でさえ争い事が無い訳ではなかった。
法を犯した場合の対処は厳しく、特に外部の者は極刑か永久入国禁止の2つしかない。
「出国する際、もう一度この出入国手続き所に来れば、武器は返還する」
鷹也が安心して住める場所は、この国しかない。
そう考えたていた二人は、検査を受ける前に、鷹也を捜す手配をした。
この国のシステムなら、自分達で捜すよりも、答えが早く出ると思ったからである。
王でなくても、住人として暮らして居るかも知れないと期待しつつ、写真を憲兵に預けた。
一人の憲兵が城の階段を駆け上がり、王の間へと近づいた。
「陛下! 人捜しをする旅人が入国したのですが……」
「慌てるな、ゆっくり話せ」
憲兵は、深呼吸して息を整え、改めて報告する。
「捜している人間が、どうも、アルベルト様ではないかと……」
「何? アルベルト?」
「写真がコチラに……」
王は微笑みながら、
「確かに似ているな。審査の後に、その旅人を此処へ連れて参れ」
「ハッ!」
兵は深々とお辞儀をした後、上って来たばかりの階段を駆け下りた。
二日後。
審査を終えたシューレットとクレアは憲兵の案内で、核シェルターのような重たい扉を5つも通って、イマジニアに入国した。
入国してすぐ、クレアは驚いた。
ヴァンパイアの共存よりも、この国は全てが壁で囲われているの筈なのに、空には太陽や雲があったからだ。
しかし、目の前のヴァンパイア達は、その太陽に怯えることなく、普通に生活が出来ている。
「初めての者は皆驚く。あの太陽は、ただの映像だ。しかし、明るさもだが、暖かさも感じさせてくれる。夜には、月になるぞ」
案内役の憲兵が自慢げに、そう語った。
「それでは、王の下に参ろうか?」
入国審査が終わってすぐに、王に謁見するとは夢にも思わなかった二人は、期待を胸に王の間の扉を開いた。
「私が此の国の王、ウォレフだ」
ウォレフと名乗った王は、狼のヴァンパイアだった。
王は、鷹也では無かった。
「私はシューレット、これは孫のクレアに御座います」
「捜しているのは……鷹也か?」
まさか、王の口から"鷹也"の名が出るとは思わなかった二人は、
「こちらに、こちらに住んでいるのですか?」
クレアは、たまらず口に出した。
ウォレフは、ゆっくり首を横に振った後、
「
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