MoonLit
論
MoonLit
プロローグ
「お前は……」
病院のベットで横たわる女性は、生きているのか、死んでいるのかさえも判らないほどに息は細く、透明かと思うほど、肌も髪も白く染まっていた。
「笑えないジョークだよ……母さん、最期の言葉ってもんは『ありがとう』とか『愛してるわ』だろ?」
母は、冗談を言う人では無かった。
それを解ってはいても、とても信じることが出来なかった。
――今日までは。
大きな
「何を考えてるんだ奴らは! 犠牲(ゾンビ化)になってない市民も居るんだぞ!」
若い兵士が、目の前に居ない相手へ声を荒げるのを見て、少し年上のチームメンバーが慣れた感じで、それに答える。
「どうせ、
そう言って、走り出したその時、若い兵士が道に倒れる子供を見つける。
「待て! 子供が!」
まだ微かに呼吸をしていた子供を抱いて、二人の兵士は、再び戦場を駆け抜けた。
「ソルティドッグからマティーニへ。R423から脱出する。そちら方面の爆撃は、中止してくれ!」
「犬が鳴いています。逃げるから、爆撃は中止してくれぇ~だそうですよ。どうします? 隊長?」
「犬なら犬らしく、敵を見つけたら吠えりゃぁいいんだ! 余計なことしてるから、逃げ遅れる。番犬にならない犬は、必要無い! 構わん続けろ!」
その軽くあしらわれた右手によって、まるで雨のようなミサイルと、雷のような爆音は、30分に渡って続いた。
「このエリアの生体反応は、無くなりました。清掃完了です」
そして、数時間後。
街は、物言わぬ
そんな中、一人の兵士が、腕の中で息をしない子供を見て
「な、なぜ……お、俺だけが……生きている……そ、そうか……」
――お前は、ヴァンパイアの子。
「笑えないジョークだよ、母さん……」
そのまま、深い眠りへと
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