第4話

 その日は雨だった。だから外に出ることも出来ない。というか、この場所だけの閉鎖空間だって話を聞いていたけれど、どうして雨が降るのだろう?

 かつてティアに聞いたら、家庭菜園のためには仕方ないことだ、なんて言っていたけれど。

 そういうわけで本との話は今日はお休み。軒下に隠しているので雨に濡れることはない。ちょっと湿気が心配だけれど。


「メイト、食事が出来たわよ」

「はあい」


 窓から視線を戻し、僕はテーブルの椅子に腰掛ける。

 テーブルには焼きそばが盛り付けられたお皿がのっていた。マキヤソースの香りが香ばしい。野菜もそれなりに混ざっているので彩りも綺麗だ。これは全部お母さん――メリューが作ったものになる。


「だけれど、僕は野菜が嫌いだ」

「あらあら。野菜も食べないと大きくなれないよ」

「そうだぞ、メイト。野菜も食べないと、お父さんみたいな屈強な身体は作れないぞ」


 お父さんは皿洗いをしながら、その皿のごとく綺麗な歯を見せて笑みを浮かべている。


「……それにしても、どうして父さんと母さんは結婚したの?」


 ふと気になったことを口にしてしまった。

 それを聞いた父さんと母さんは首を傾げ、


「うん? どういうことだい?」

「どういうことなのか、教えて欲しいな。母さんもよく分からなかった」

「……つまり、父さんと母さんのなれそめを教えて欲しい、ってこと?」

「うーん……そうなるのかな」

「だとしたら簡単だよ。偶然僕がここに迷い込んじゃってね。食事を食べたお礼に皿洗いをしたらそれが馴染んじゃったのさ。気づけばゴールイン、ってわけ。うん、あんまり面白くないかもしれないけれど、これがなれそめ」

「……そんな単純なの?」

「何が聞きたいの? メイトは。さっきから何か、疑問を浮かべているようだけれど」

「メイト、疲れているのですよね?」


 僕の言葉を割り入るように、ティアは言った。

 ティアはどうしてそこで僕に言葉を言わせたくなかったのだろう?

 まるで――さっきのなれそめが嘘みたいな、そんな風に聞き取れるのに。


「う、うん。少し疲れているのかな。ご飯、食べ終わったら少し横になろうかな」

「あら。大丈夫? 体温測った方が良いんじゃない?」

「大丈夫だよ。寝たら直ぐに良くなるから。……ご馳走様」


 僕は適当に食事を終わらせて、寝室へと戻る。

 僕は、確信する。

 ティアは何か隠し事をしている。

 そして、その隠し事は、このボルケイノにまつわる何かだ――と。


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