見上げる樹々に飾る星
秋野 木星
第1話 やりましょう
暖かな春の日のことでした。
夕食のお皿を洗い終わった
しばらくすると突然、妹の
「ねぇ葉月、一緒にお店をやらない?」
「お店?!」
葉月さんは驚いています。
お風呂からあがった葉月さんは、濡れた髪をタオルでくるんだまま椅子に座って、
足の爪にペディキュアをぬっていました。
突然の姉の提案に、手を止めたまま顔をあげて弥生さんの顔を見ました。
その時ブラシの先からこぼれ落ちそうになった薄ピンクの液を、葉月さんは慌ててビンの中に垂らします。
「おばあちゃんの家をあのまま放っておいたら可哀想じゃない? あそこは駅も近いからお店になるんじゃないかと思ったの。」
「『思ったの』って、お姉ちゃんらしいな。でも新しく起業したお店が生き残る率って低いらしいよ。」
弥生さんは葉月さんの意見にゆっくりと頷きます。
「それも考えたわ。でもね、家賃がかからないのよ。それは大きいと思うの。設備費にあまりお金をかけなかったら、わずかでも利益が出るんじゃないかしら。」
「ふーん、少しは考えてるんだね。」
葉月さんはペディキュアをぬるのを止めて、ビンに
どうやら本気で話を聞く気になったようです。
「どんなものを売るの?」
「私は手芸が出来るでしょ。
「でも
「うん。それでも絵や本を提供してもらえるでしょ。おやすみの日は手伝ってくれるかもしれないし。」
「…そうだなぁ。」
「私はおばあちゃんの介護で前の仕事を辞めちゃったから、これから職探しだなって思ってたの。葉月もこれからバイトを探すって言ってたじゃない。二人の手が空いてるこんなチャンスはもうないわよ。」
「二人分の給料が稼げるかなぁ?」
「おばあちゃんの菜園があるから、食べるものはあるわよ。この家やおばあちゃんちの管理費は父さんたちが仕送りもしてくれてるし。最初は苦しいけど何とかなるんじゃないかしら。」
「なんとかなるねぇ。お姉ちゃん、介護してる間におばあちゃんの口癖がうつったんじゃない?」
「ふふ、そうかもねー。」
弥生さんはふんわりと笑いました。
どうやら葉月さんの気持ちも少しずつ弥生さんの意見に傾いて来ているようです。
弥生さんの思いは実を結ぶのでしょうか?
夜空の星たちが二人を見守っているようでしたよ。
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