だらだら日常~だらにち~

悠(ゆうふじ)藤

第1話 ある日の入学式

 この日、新たな人生を歩む人たちがいる。

 六年間という長い学習期間を終えて新たな三年間が今始まろうとしていた。

 あるものは期待に胸を膨らませて、あるものは不安を胸にしまい中学校の門をくぐる。


 この私、白菊多恵しらぎくたえもまた市立二葉中学校しりつふたばちゅうがっこうの校門をくぐり新たな学び舎へと足を踏み出していた。


 菊の花が特徴のヘアゴムでまとめた肩甲骨までかかった髪を揺らしていると、知らない顔の人たちが自分の横を、前を歩く。


 この場にいる人たちを待っていたかのように、数えきれないぐらい沢山の桜の花が満開に花を咲かせ……。

……。

……満開に花を。


「ほとんど散ってるし!」


 私は思わず大きな声で突っ込む。


「むしろ綺麗に咲いてる花を数える方がはやいぐらいだよ」


 周りの人たちが何事か私を見るが、そんなことを気にせずに愚痴をこぼした。


「というか入学式の日に桜が満開とかドラマでしか見たことないんだけど」

 

 口をとがらせながら校舎に向かっていると後ろから知っている声が聞こえる。


「しーろ」


 名前を呼ばれ「ん?」と言って後ろを振り向くと、そこには肩に軽く髪が触れる程度な長さの髪型の少女。冬野雪とうのゆきがいた。 


「お、ゆっきーじゃん。久しぶり」


「うん、しろも元気そうで」


 私とゆっきーの二人は仲良く横に並んで歩き始める。


「そういえば。さっき何を騒いでたの?」


「え! 聞いてたの!?」


「聞いてたも何もあんな声出してたらね」


「そ、そんなに大きかったですか」


 恐る恐る周りを見たが誰一人見てくる人はいなかったので、先ほど愚痴を冬野に言う。


「いやーさ、ドラマとかだと入学式の日って桜が満開だったりするじゃん」


「まあ」


「でもさ、現実に桜が満開だったっ事ってなくない?」


「あー、なるほど確かに」


「でしょー」


 私は再び口をとがらせながら歩く。


「でもさ」


 ゆっきーはそんな顔をしている私を見ながら答える。


「そんなこと言ったら卒業式でも桜が満開にならないよ。あいつら春休みの間に咲いてるから」


「だよねー」


 そんなこんな話していると昇降口に着いた。

 下駄箱でローファーを脱ぎ、上履きに履き替える。まだ下駄箱の場所は決まってないためローファーは外靴袋の中に入れて、下駄箱を超えた所にある廊下一面に掲示してあるクラス名簿を見た。


 一クラス約三〇人。全部で四クラス。一学年一二三人。 

 多くもなければ、少なくもない平均的な人数。私は自分の名前を見つけるため、さ行を探す。


「えーっと……さ、し、し、し、しら、志羅山ってだれよ……あ、あった」


 自分の名前を見つけて、ゆっきーの方を見た。 


「ゆっきー、何組だった?」


「まって……あった。三組だね」


「え?」


「三組……どうしたんの?」


「だって違うクラスだから」


「となりじゃん。教室でて二秒で会えるでしょ」


「いや、ここの学校。一、二組と三、四組で階が違うから」


「あ……」


 二葉中学校は校舎の都合上、二階と三階でクラスが分かれてしまう。

 私のクラスの二組は三階。ゆっきーの三組は二階といった具合で。


「やっぱり王子とシンデレラは、一度は分かれる運命なのかもしれない」


「誰がシンデレラよ。ここには庶民と庶民しかここにはいないから」


「夢無いな~」


 くだらないことを話しながら階段から二階に上がる。


「じゃあ私はこっちだから」


「じゃあね」


 二人は別れ、それぞれのクラスに行った。

 これから始まる学園生活に期待をしながら。






~この日の自己紹介~ 

 名前・白菊多恵しらぎくたえ 

 クラス・1年2組

 出席番号8番

 誕生日・10月13日

 身長・156㎝

 好きな食べ物・つくし

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