remember

たけぎつね

プロローグ

ある日の、おつかいの帰り。


拾ったどんくりを眺めながら、中二の少年が歩いていた。

――と、その少年の前を歩いていた別の少年から、お腹の鳴る音が聞こえた。


彼は、「食い物ォォ」と唸っていた。さすがに無視したら可哀想かと思い、おつかい帰りの少年は前を歩いる少年の肩を叩き、


「腹へってんのか?いる?」


とモナカアイスとミネラルウォーターを差し出す。


「!?いいんですか...?」


「お、おう」


彼の瞳は大きく見開かれ、笑顔を見せた。



とりあえず、たまたま近くにあった公園の階段に腰掛けた。


「美味しい!ありがとうございます。何も持っていなくて...」


「そりゃ良かったな。――そうだ、君は今何歳?名前は?」


「僕は小山叶多。年齢は同じ位だと思います」


「思います、っていうのが少し気になるが...別にいいか。あ、同い年位なんだし、敬語じゃあなくていいからな」


「分かった!じゃあ、君の名前教えて?」


「俺の名前は○○だ」


「よろしくね!」


「おう!」


それから毎日放課後会うようになった。彼との雑談は面白かった。楽しかった。


そういえば、当時はあまり気にしなかったが、叶多は学校の話は全然しなかった。何かあったのだろうか...あえて触れなかった。


初めて会った日から一ヶ月。


「ねえ、僕らって友達ってやつなの?そうだけど嬉しいんだけど」


叶多が地面を見つめながら言った。


「当たり前だ!友達の中の友達、そうだな...ビッグフレンド、略してビーフだ!」


二人は顔を見合わせて、笑った。中学生とは思えない適当な英語と、出会えた奇跡と、話している楽しさに、笑った。


次の日から、叶多は来なくなった。家の事も全然知らなかったため、連絡は勿論、お互いに会えなくなってしまった。

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