明暗
人間共の命が次々と消えていく中、その家は異様なほど平穏だった。
化生共が入り込んでは来るものの、人間の姿がないということで、早々に出ていってしまう。
その家のリビングにあったのは、異様な<物体>だった。いわゆる<ハリガネムシ>の群体とでも言えばいいのか、うねうねと蠢く細長い物体が無数に集まり、直径二メートルほどの球体を作り出していた。
それ以外には確かに人間の姿もない。
だが、そうではなかった。実際にはそこに人間がいたのだ。正確には、その球体の中に、だがな。
そこにいたのは、
化生共が地球上に溢れた時、その気配を察知した<にゅむ>と、来埋亜純及びその母親を苗床として増殖したミニュルアトゥレが触手を伸ばして二人を包み込んだのである。
もちろん、麻酔をかけた状態にして。
この状態だと、よほど知能の高い化生でないとまさか中に人間がいるとは気付かない。気付いたとしても別にわざわざ手を出す理由もない。
こうして、来埋亜純とその母親は命を長らえることとなった。
一方、来埋亜純の父親と、兄である
父親は経営しているフィットネスジムの自室で愛人とよろしくやっているところに、会員の体に憑依する形で顕現したヴィシャネヒルに、人間の形が失われるほどに徹底的に殴られて殺された。
「なんだお前!!」
とイキがって突っかかったまでは良かったのだが、その暴力性がかえってヴィシャネヒルを歓喜させ、良い餌となったのだ。
また、来埋真治の方も、悪い仲間とドラッグパーティーをしていたところにコボリヌォフネリが現れ、まあ多少は抵抗しようとしたが、腕を食いちぎられた瞬間に心も折られ、呆気なく仲間と共に食い散らかされた。
こうして来埋家では、娘と母親、息子と父親とで明暗が分かれる結果となった。
このような事例は数こそは少なかったものの、他にもあったようだ。
もっとも、ハスハ=ンシュフレフアがこの地球ごと何もかも破壊するとなれば、そうして生き延びた者も結局は死ぬことになるがな。
奴にしてみればカハ=レルゼルブゥアが存在したこと自体が許せんだろうし、腹いせに地球も消し去ってしまう可能性が高い。
先にも言ったとおり、カハ=レルゼルブゥアがハスハ=ンシュフレフアに勝つだけでは駄目なのだ。
いずれにせよ私が勝つ以外に地球が救われる道はないということだ。
くくく…これは頑張らねばなるまい。
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