助けに来たわ!
そうやって私の影が参戦する中、孤軍奮闘していた
その赤島出姫織の耳に、人間の泣き声が聞こえてきていた。生存者を探す為に魔法で人間の声に対する感度を上げていたから聞こえたが、普通の人間には聞こえない微かな声だった。
「まだ誰か生きてる…!?」
ようやく生存者を見付けたことで、表情が少し明るくなった。ここまで誰一人生きている者を見なかったのだ。魔力を込めた剣を振るい、化生共を斬り伏せながら、声の方へと近付いていく。それはそこそこ大きな、屋敷と言ってもいい邸宅だった。泣き声はその中から聞こえてくる。しかし、そこにも何人もの人間が無残な姿で倒れていた。この家の住人だろうか。
さらに奥に進むと、頑丈そうな扉が見えた。どうやら地震などの際に逃げ込む為の簡易のシェルターのようであった。中から鍵がかかっていたが、魔法を使えばどうということもなかった。
「助けに来たわ!」
そう言って扉を開けた赤島出姫織の目に飛び込んできたのは、恐怖と不安のあまり涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔になった
「……あ…!」
助けが来たと喜びかけて、しかしそこに現れたのが赤島出姫織であると気付いた加見淵緒琥羅は、青い顔をして固まってしまっていた。なにしろ、それなりに因縁の相手だったのだから。
中学に上がったばかりの頃に、加見淵緒琥羅の友人だった男子が言い寄ってきたのを赤島出姫織が手酷く振ったのをきっかけに諍いになり、赤島出姫織の悪口を言いふらしたりしたことで
その件については新伊崎千晶に謝罪してもらったことで拍子抜けしてしまったのだが、赤島出姫織とはまだ話が済んでいなかったのもあったのだ。
そんな感じで加見淵緒琥羅が戸惑っていることに気付いた赤島出姫織は、言った。
「池崎くんのことはゴメン。私も子供だった。もうちょっと言い方を考えればよかったって反省してる」
<池崎くん>とは、赤島出姫織が言い寄られて手ひどくフった、加見淵緒琥羅の友人だった男子のことである。小学校当時、加見淵緒琥羅はその池崎なる男子のことが好きで、それを手ひどくフった赤島出姫織のことが許せなくて悪口を言いふらしたのであった。そのことで先に謝られ、ますます混乱する様子が見えたのだった。
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