食い応え

「お、おい!?」


ナハトムが叫んだのが耳に届いてきた。心配せずともこのくらいではどうともならん!


「五月蠅い! 情けない声を出すな!!」


私はそう声を上げながら瓦礫を撥ね飛ばし立ち上がる。だが、こいつら、思ったより力が強い。さてはかなり人間を食ったりしてきているな。生きた人間だけでなく、死体も相当食い漁ったのだろう。食い応えはありそうだ。


しかも、デカい奴だけでなく犬のような姿をした小さいものかなりの数がいた。ケネリクラヌェイアレとかいう奴だな。犬というよりは蟻に近い習性の奴らだ。ギビルキニュイヌと似ている。ということは、女王がまた近くにいるな。


ケネリクラヌェイアレの近くにいるところを見ると、このロボもどきの奴らはバージャムデレクェか。ケネリクラヌェイアレとバージャムデレクェは共生関係にあった筈だ。本来はケネリクラヌェイアレが餌にした生き物の死体を集めて体にしていた筈だが、それよりも頑丈で強力なものを体にしたという感じか。この辺りで放置されてる自動車ともなれば、さぞかし人間の体液を浴びてたりもするだろう。そういう意味では取り込みやすかったのだろうな。


ケネリクラヌェイアレは生き物の脳を、バージャムデレクェは体液を餌にしていたのだったか。同じ生き物を捕まえても別々のところを食うから奪い合いが起きず、むしろ協力して捕まえた方が効率が良いということで共生関係になったんだったな。なら、こちらも協力し合うとするか。


「デカい奴は私がやる。お前は小さいのをやれ!」


ナハトムの記憶を覗いてカラリパヤットの道場に通っていた時の道着という形で強化してやった。今回は筋力と防御をほぼ均等に割り振った強化だ。


「わ、分かった!」


突然自分の格好が変わったことに驚きながらも、ナハトムはウルミを手に身構えた。私は再び殴りかかってきたバージャムデレクェの拳に自分の拳を叩き付ける。バギャッと破壊音がして奴の拳も腕も吹き飛んだ。


「舐めるなよ、この虫けら共が!!」


私が吠えると弾かれるようにして一斉に飛び掛かってきた。そのうちの一匹目掛けて地面を蹴り、頭から突っ込む。バージャムデレクェの体を貫通し、一瞬遅れて衝撃波でその体が弾け飛んだ。音速を超えてたからな。


空中で髪を黒い四枚の翼に変えて姿勢を入れ替え、今度は空中から次のバージャムデレクェに突っ込んでやった。刃でもある翼でズタズタに切り裂き、着地する。


さらに翼の一枚を巨大な拳に変え、正面にいた奴をぶん殴った。グシャッッという音と共に半分の大きさにまで潰れ、地面に叩き付けられるバージャムデレクェを横目に、反対側の翼も巨大な手にして、残った奴を鷲掴みにし、そのまま握り潰したのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る