後輩
どうやら、玖島楓恋の料理を食うと精神的に満たされるらしい。
まあもっとも、翌日にはまたスナック菓子を貪っていたが。
などということもありつつも、皆、春休みを謳歌しているようだ。
当然、
ちなみに代田真登美と玖島楓恋の関係は、あくまで<仲が良すぎるくらい仲が良い友人>でしかなく、別に恋愛感情などはなかったので、誤解するなよ。
もっとも、以前も言った通り、お互いに相手が望むなら受け入れてもいいくらいの気持ちはあったようだがな。
それはさて置き、春休みだというのに、代田真登美と金鉢令司は、図書館で二人して高校での学習に備えて、中学時代の復習をしていたようだ。オカルトに傾倒していたことであまりそういう印象は持たれていなかったが、代田真登美は元々、勉強そのものを楽しめるタイプだった。金鉢令司も同じだ。
だから、こうして図書館で二人で勉強をするというのも、彼女らにしてみれば立派に<デート>なのだろう。
そこに、
「代田先輩…?」
控えめな、囁くようなそれだったが、不意に声が掛けられた。
二人が視線を向けた先には一人の少女が立っていた。小柄であどけない顔つきのショートカットの、一見しただけだと小学生にしか見えない、加えてどこか子犬のような印象のある少女だった。
「
代田真登美が呟くように口にする。
少女の名前は
「先輩は高校に合格したんですよね。なのにまだ勉強してるんですか?」
少々不躾な質問ではあったものの、日下言葉としては正直な印象だったのだろう。思ったことが口に出るタイプらしい。
そんな彼女に、代田真登美は機嫌を損ねるでもなく、
「高校に上がると勉強も難しくなるからね。その前に、ちゃんと中学の時の復習をしておいて、しっかりと理解しておかないと、ついて行けなくなるから」
囁くように、そしてとても丁寧に、言い含めるように応えてみせた。金鉢令司も、穏やかな表情で黙って頷く。本当によく似た雰囲気を持ったカップルだった。
「へえ、さすが代田先輩ですね」
そう感心した日下言葉が手にしていたのは、犬の図鑑だった。
「そう言えば日下さんは、犬が好きだったのね」
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