四人目

「それと紹介しまス」


そう言って体を避けたアリーネの背後に、人影が見えた。


「ドイツの高校生のエレーンデス」


「…は?」


呆気にとられる錬治達の前に現れたプラチナブロンドで少しそばかすのある白人の女の子は、おずおずと遠慮がちに頭を下げた。その様子がまるで<日本の大人しい女の子>って感じで、見た目とのギャップに錬治達もさらに戸惑う。


「彼女は日本に留学を目指して日本の文化を勉強してたそうデス。ジャパニメーション大好きオタク少女デス」


そんな風に紹介されて、女の子のそばかすが散ってる白い頬がぱあっと赤くなるのが分かった。


「は、初めまして……エレーンです…」


再度頭を下げながらそう言った彼女の挨拶は、正直、アリーネのやや雑な印象もある片言のそれよりはよっぽど綺麗なものだった。


だけどよく見ると、目の周りに泣き腫らしたような痕も見えた気がした。錬治がそれに気付いたのを察したのか、アリーネが説明する。


「エレーンを助けた時、彼女のメイトは残念ながら間に合いませんでした。彼女はそれにショックを受けたのデス。しかし私の説得により、こうして仲間に加わることができました。さすが私デスね」


と、堂々たる自画自賛をするアリーネを尻目に、綾乃がすっと傍に行ってエレーンの肩をそっと抱いた。


「それは辛かったね…」


「……!」


優しく声を掛ける綾乃の肩に縋るように、エレーンは小さく体を震わせてた。思い出してまた泣いてしまったらしい。


「泣いても仕方ないデスよ、エレーン。一緒にメイツの仇を取りまショウ」


とかアリーネが言う。その様子に、


『どうにもこの人にはデリカシーってものがなさそうだ……』


錬治はそんなことを思ってしまった。


しばらくしてようやく落ち着いたのか、エレーンが、


「ごめんなさい…」


と小さく声を上げた。


「いいよ。辛くて当然だもんね」


綾乃がエレーンの肩を抱きながら顔を寄せて言う。


すると今度はその様子に、


『にしても、なんか妙に距離が近いな……』


などと錬治が何気なく思っていたら、二人の様子を見てたアリーネが何かを察したように言った。


「アヤノ。あなたさては、ビアンですね?」


『…ビアン……って、まさか?』


その瞬間、今度は綾乃の顔が真っ赤になる。


「な、な、な…!」


彼女の反応で図星だと錬治にも分かってしまった。


「…ビアンってなに?」


と、何故かそういうことには耳聡いみほちゃんが彼に尋ねる。


「う~ん、女の子ととっても仲のいい女の子ってことかな…」


錬治が苦しいながらもなんとか説明すると、


「ふ~ん」


と納得してくれたみたいだった。


『でも、そうか。吉佐倉さんはそうだったんだ。そりゃ、こんなおっさんのハーレムにだなんて、迷惑千万だよね……』


真っ赤になって目を泳がせる綾乃を見ながら、錬治はそんなことを考えていたのだった。


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