哨戒ついでに
<朝食>は、やっぱりバーコード対応じゃない個人の八百屋の店先から、お金をレジのところに置いて代わりにもらってきたバナナ、リンゴ、トマト、イチゴを食べることにした。
みほちゃんはもりもり食べてくれて気持ちいいくらいだった。反対に錬治は、正直、ロクに食べられない。バナナを半分食べるのがやっとだった。
すると綾乃が個人のキャンプ用品店から、テントの下に敷くクッションも兼ねたマットを手に入れて公園のベンチに敷き、そこに錬治を寝かせてくれた。さらにレジャーシートをベンチの上に広げるとそれは空中で止まって、うまい具合に日除けになってくれた。
二百万分の一の速度になってるといっても、さすがに<光>の速度はそれなりだ。一秒で百五十メートルくらい進むことになるのだろうか。しっかり日影ができる。
これで少しは楽になった。
「ごめん……あとで返すね」
綾乃にマットとレジャーシートの代金を立て替えてもらったから、後で返さなきゃと思った。
そんな彼に彼女は、
「いいんですよ。これくらい。
と、ぶっきらぼうでありつつ気遣いを感じる言葉を掛けてくれた。
それにホッとしつつ、
「とにかく少し休んで楽になったら、また行きましょう」
錬治が声を掛けると、
「ラジャー。それまで私は待機デスね。この周辺の哨戒をしてきまス」
と言いながらアリーネは公園を出て行った。彼女を一人にするのは逆に不安もあったものの、
『まあ、軍人だから無茶なことはしない……と思いたい』
と彼は考えた。
一方、クッション性の高いマットを敷いたベンチは割と快適で、ビーズクッションの枕とも合わせて結構楽に横になれた気がした。
そのせいか、錬治はいつしか寝息を立てていた。さすがに疲れてたのだろう。
次にハッと目が覚めた時には、綾乃とみほちゃんがまた食事をしてる所だった。
「…何時間くらい寝てた…?」
彼の問い掛けに、綾乃は、
「四時間くらいですね。これはお昼です」
と応えてくれた。だけど、周りを見回してもアリーネの姿がなかった。
『え……!?』
恐る恐る錬治が、
「アリーネさん、帰ってきましたか…?」
そう尋ねると、綾乃は黙って首を横に振った。
『まさか…』
そのまさかだった。更に一時間くらいして帰ってきた彼女は、
「哨戒ついでに会敵した対象については対処してきまシた」
と、悪びれることなく言ってくる。どうやら、錬治が<移動>した時の様子からそのやり方を察したようだ。頭に浮かんだ光景の中から好きなものを選んで『そこに行く』とはっきり意識するだけで移動できるということに。
『さすがに油断も隙も無いな……』
けれど錬治は文句を言う気にもなれなかったのだった。
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